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古明地昭雄「柿落葉舟形になり宙を漕ぐ」(立川市シルバー大学「俳句講座」第4回)・・

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  本日、12月4日(水)は、立川市シルバー大学「俳句講座」第4回(於:曙福祉会館)だった。兼題は「雪」「落葉」各一句持ち寄り。  以下に1人一句を挙げておこう。    雪原を走る単線一車両            林 良子    角巻の母吾子抱きしめて雪の中       白鳥美智子    雪うさぎ赤き実の目は啄まれ         山下光子    東雲 (しののめ) の森閑破る垂雪      村上たまみ    旅の空落葉アートやボンネット        島田栄子    馨 (かぐわ) しき桜落葉や風の道      堀江ひで子    送り出す成人の娘 (こ) 雪轍 (わだち)   原 訓子    「雪が降る」口遊む日の遠くなる       中尾淑子   雪盲をきにかけかけるサングラス       河本和子    富士見坂今朝の眩しき雪の富士        大西信子    雪散歩お茶目ペンギン楽しげに        手島博美    雪明かり温泉の湯気暖かし          柳橋一枝   雪つもり嬉々と遊ぶ子思春期に       赤羽富久子    雪吊や赤松姿勢正しうす          古明地昭雄   静けさにふと目が覚める雪の朝        熊﨑喜代    襟を立て落葉舞い散る家路かな        中村宜由    背比べ背のびし吾子と雪だるま       小川由美子   亡き父の書屋の雪や山月記          大井恒行  次回は、来年1月8日(水)、兼題は「争」と「目・眼」各一句。 ★閑話休題・・津髙里永子「メモ書きの遺言滲み冬銀河」(~ちょっと立ちどまって~2024・11~)・・  「ちょっと立ちどまって」は、津髙里永子と森澤程の二人の葉書通信。月に一度のぺースで送られて来る。今月のもう一句は、    夜を癒える傷のありけり霜柱      森澤 程      撮影・中西ひろ美「蔭あれば隠れてもみよ冬紅葉」↑

春風亭昇吉「錦秋のショーウィンドーに映る黙」(春風亭昇吉独演会)・・

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   昨日、12月2日(月)は、春風亭昇吉落語会(於:渋谷区文化総合センター大和田伝承ホール)・昇吉独演会の昼の部に出掛けた。春風亭昇吉とは、彼がTVプレバトに出演する以前、毎月、午後3時頃から行われていた、飲みながらの句会「遊句会」の仲間であった。  TVプレバトでも優勝したことがあるが、何と言っても、本職の落語は、人情噺にさらに磨きがかかり、貫禄も出て来た印象だった。案内状には、平岩弓枝作『笠と赤い風車』をメインにとあり、プログラムは「「権助提灯」「死神」、中入り後に「笠と赤い風車」だった。  本人作のDVDのスクリーンには、彼の俳句もふんだんに挙げられていた。がここでは、それに拘らず、プレバト中心にいくつかの句を挙げておきたい。    万緑に提げて遺品の紙袋           昇吉    露の世のいつぽん長きうどんかな   春雷すストレッチャーを急かす駅   スイカバー隣に君のいない海   白秋の雲穿 (う) ぐ右投げ左打ち   風信子数にあまれる失意あり   『希望の病』あり盤上に六連星 (むつらぼし)    乳房切除す母よ芒の先に絮   三月の空に託せるものがない   母からの手紙無月のダンボール   一月の笑いの外にひとりいた    お前しかおらん改札若葉風   名月は東に父島測候所   夕焼けやつくばいのある美術館   職を辞したる尾崎放哉鳥曇   雛あられ姪にひと粒ごとの音  春風亭昇吉(しゅんぷうてい・しょうきち) 1979年、岡山県生まれ。   著書に『マンガでわかる落語』(誠文堂新光社)など。           鈴木純一「寒晴れを切りぬいておく古都の旅」↑

瀧村小奈生「あふれない水でいましょう いよう」(「鬣TATEGAMI」第93号より)・・

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 「鬣TATEGAMI」第93号(鬣の会)、特集は「『俳句ユネスコ無形文化遺産』推進の現在と「『群馬百人一句α』林桂編」。「ユネスコ無形文化遺産登録」についての論考は、林桂「提議再び」、大井恒行「現代俳句協会は、俳句ユネスコ文化遺産登録推進協議会から離脱せよ」、堀田季何「提議しなおしてほしい」である。興味を持たれた方は、直接、本誌本号に当たられたい(鬣ホームページでは、過去の号についての論考ななど、すべて公開されている。本件に関する最初の提議は、第64号。2017年・8月刊)。最近、愚生が聞き及んでいるところでは、現代俳句協会は、「現代俳句」2025年1月号で、この運動についての経過説明を掲載するという。他に、注目の連載に深代響「上田玄の遺稿『白泉各句一・二』」/「掲載について(経緯)」。  ともあれ、以下に本誌本号より、いくつかの句を挙げておきたい。    敵はないつて知つてる兎連れてくる      吉野わとすん   水族に戻らん聴こえぬものを聴き       西平信義    走れレグホンソーラーパネルの片陰を      瀧澤航一    いたって押す気の円は欠けている        永井一時      木下夕爾「火の記憶」に寄せて    いのちみな影を引きつつ原爆忌         久里順子    ま ぼろしの蝶がみず呑む秋日 和         丸山 巧       万歳 (ばんざい)      万世 (ばんせい)   バンザイ岬 (みさき) に    万 (まん) の手 (て) の波 (なみ)      中里夏彦    ひるがほのまきつく脳をあかるくす       堀込 学    秋風や歩き歩きて遠き山            樽見 博    黙祷 (もくとう) に始 (はじ) まる集 (つど) ひ弥生尽 (やよひじん)                         林 桂    発芽せぬ数を加えて大根蒔く          堀越胡流    空っぽのP (ページ) 原色蝶図鑑        後藤貴子       鷹揺 (たかゆ) れの    梢 (こずゑ)    しづもる    雪 (ゆき) ばんば               深代 響    かの秋の酒にかすかな波立ちぬ        水野真由美    きみは水地球は水に守られて          外...

塩野谷仁「仮の世の晩景柚子の暮れ残る」(「遊牧」No.154)・・

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 「遊牧」No.154(遊牧社)、「俳句鑑賞ノート(Ⅱ」」に、愚生の句集『水月伝』(ふらんす堂)を川森基次が「『大井恒行『水月伝』を読む」と題して評してくれている。深謝!!、その結びに、     例えばあとがきの最後に記された一句にある〈尽忠〉という言葉。      尽忠のついに半ばや水の月   攝津幸彦の使った〈御恩〉などもそうだが、〈尽忠〉という言葉にアイロニカルな響きを感じさせつつも、同時代を生きたとはいえ六歳下の私などには微妙にわかりがたさも残る。しかしこの句集そのものが〈戦後史〉あるいは〈自己史〉そのものへの未決着の〈悼〉であることだけは分かるつもりだ。私も〈水月〉を泳がんとする蛇のようなものだから。  とあった。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておきたい。    鏡屋に鏡の夜がきてちちろ            清水 伶    ヘルメットの似合う漢と芋名月          田中収三    受けとめてくれる手のあり草の花         髙野礼子    キューピーの足裏の汚れ夏休          関戸美智子    白昼も星は睡らず冬もみじ            長井 寛   にじり寄る秋創世の孤舟たり           並木邑人    白木槿咲いて既読のつかぬまま          直江裕子    土壜割わが指もまた細い枝           堀之内長一    細道のつづきのありて返り花           石橋 翠    星月夜地球の廻る音しずか            吉岡一三    どうしても折れぬ芒を海と思ふ          片山 蓉    烏鷺の影杭を争ふ水の秋             川森基次    鮭打つや子持ちの鮭を除 (よ) けながら      栗林 浩    一滴の水になりても風の盆            小林 実    元禄の墓石ともす烏瓜              坂間恒子   大谷橋から男体山 (なんたい) 失せし夕立かな  須藤火珠男    貌のない影ふみあえり風の盆           田中葉月    満月のこぼせし不壊 (ふえ) のしずくかな     下村洋子       撮影・中西ひろ美「草の種冬の日集まりやすきかな」↑