佐怒賀正美「きつね火のつひの洒落声(しやらごゑ)あふれけり」(「秋」12月号・通巻630号)・・
「秋」12月号・通巻630号(「秋」発行所)。愚生の『水月伝』(ふらんす堂〉を見開き2ページ「現代俳句句集評(十)」で、馬場裕美に丁寧に評していただいている。深謝!!その中に、
東京空襲アフガン廃墟ニューヨーク
なぐりなぐる自爆者イエス眠れる大地
第一句目は、ほぼ百年前に始まった日本の軍国拡張主義の結果の日本全土の空爆、さらにアメリカ同時多発テロを機に始まったアフガン紛争を簡潔に語っている。そうして二句目は、現在も続く、異なる宗教を持つ民族同士の中東での凄惨な殺し合い。この二句で、二〇世紀の初頭から寸時も止まることの無く、しかも人類に何物も生み出すことの無い戦争という愚行の現実を突きつけられてしまう。(中略)
かたちないものもくずれるないの春
冬青空ウイズコロナウイズ核
何事もなく平和裏に生を全うした人間を侵すものは人間同士の争いのみではない。自然もウイルスも、増上慢の人間に自らの小ささを教えてくれているようだ。(中略)
このように自らや時代に厳しい目を向けつつ、その一方で希望といえる想いの句もまた多く存在する。
赤い椿 大地の母音として咲けり
言の葉のひかりとならん春よ来い
人にのみ祈る力よ 日よ 月よ
根は風のうそぶく水を生きており
とあった。その他、「句集評(十一)/(十二)」には、安達昌代「高橋睦郎句集『花や鳥』(ふらんす堂)」、齊藤眞理子「栗原かつ代句集『母は水色』(現代俳句協会)」等があった。ともあれ以下に、本誌よりいくつかの句を挙げておこう。
闇鍋に声出すものを入れし鬼 佐怒賀正美
青鷹真日に対(むか)ふをはばからず 小笠原 至
秋遍路後へ先へと己が影 鈴木栄子
防国てふ彼我の亡国芋嵐 馬場裕美
銀漢や無限に続くπ・素数 杉 美春
冷房裡原爆図より「児に水を」 佐藤栄子
八月を覆ひきれないシャツの白 安達昌代
ミサイルとホームランの報秋暑し 齊藤眞理子
ストリートピアノに月が下りてきた 渡部疲労子
よひやみにをどるデジタルサイネージ 藤色葉菜
いつまでも既読のつかぬ星月夜 畠中朝江
のつへらほおんと生きてゆく日の新松子 福原 郁
重陽の節句初物の栗茶巾 田中恵子
芝居茶屋七味ひとふり走り蕎麦 宮川 夏
鈴木純一「凍て つがひ まごころ あはす たなごころ」↑
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