太田風子「渋滞のベイブリッジを鳥渡る」(『マンハッタンの夕陽』)・・
太田風子第二句集『マンハッタンの夕陽』(黎明書房)、その「あとがき」には、 二〇二一年に句集『as is あ~づ い~づ』を上梓して以来の第二句集です。 この五年間は、五十七年間連れ添った夫との別れの日々でありました。一歩一歩衰えてゆく夫に最後まで寄り添いました。今でも寄り添っている自分なのだと気付かされます。結局、自分ってなんでしょう。 (中略) 失敗は経験を積んだと思えばよいのでしょうか。そんな生き方を綴った私の俳句集です。 さて、次の五年はどんな俳句が生まれるのでしょうか。 五月に八十歳の誕生日を迎えました。今までとは違う俳句に出会う自分でありたいと願っています。 とあった。集名に因む句は、 秋落暉ストンヘンジめくマンハッタン 風子 であろう。表紙カバーの表2側の返しに、 ニューヨークでは、東西に走るストリートから一直線に夕陽が沈む。逆光でビル群の影がストーンヘンジに似て黒々立っている。その現象をいつからかマンハッタンヘンジと呼ぶようになったそうだ。六番街の三〇丁目あたりを歩いていた時だ。その角から西を見ると真っ赤な夕陽がビルに沿って沈んでいく。 とある。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。 木の椀に木の箸添えて七日粥 アスパラガス明日は賭博のラスベガス 何もなきものに躓く冬はじめ バラモン凧に生まれ変わった新聞紙 春はやて投手一瞬夜叉となる 桜蕊ふる切株に幻肢痛 命日を重ねいつしか水温む 民主主義右往左往の更衣 いつのまにぶどう一粒だけの皿 ずれている釣瓶落としの着地点 流行風邪負目涙目写楽の目 太田風子(おおた・ふうこ) 1946年生まれ。 ★閑話休題・・松谷栄喜「朝顔や鉢を手にせし父の影」(第200回「吾亦紅句会」)・・ 8月28日(金)は、記念すべき第200回「吾亦紅句会」(於:立川市女性総合センター アイム)だった。兼題は「朝顔」。以下に一人一句を挙げておこう。 四肢張りて八方睥睨 (やもへいげい) の鬼やんま 松谷栄喜 見せばやな男踊りの阿波踊り 吉村自然坊 耕衣忌や儘ならぬ世の硬骨漢 齋木和俊 せめぎ合う行き会いの空勝敗は 武田道代 ...