依光陽子「引鳥と空へ飛ばうとする魚と」(『ふ、は鳥に』)・・
依光陽子第一句集『ふ、は鳥に』(左右社)、帯文は松岡正剛。 依光陽子の句や/俳句論が刻印的でいい。 とある。著者「あとがき」には、 (前略 )読んでいただきたかった方がたくさんいる。私をこの世界に送り出して下さった大峯あきら先生。角川賞選考委員会で〇一つだけだった私の作品が議論から飛ばされそうになった時、推した責任があるからと議論の俎上に載せてくださった。その後、局面局面で推して下さった三橋敏雄先生、稲畑汀子先生、川崎展宏先生、山田みづえ先生。三橋先生には翌年の賀詞交換会で「僕達が選んだだから自信をもちなさい」と励ましのお言葉まで頂戴しどれほど嬉しかったか。 そして誰よりも師であった斎藤夏風先生 。(中略) そして深見けんニ先生。水仙の花を長い間凝視されていた御姿は忘れられない。 (中略) 俳句が何か、何もわからないまま始めてから三十年以上になる。思えばいろいろな方々にお世話になった。この一冊は感謝の一冊である。 (中略) また、佐藤文香さんにも御礼を申し上げたい。私の俳句は俳句のために書き続けてきたのだと思いだ させてくれた人だ。「依光陽子という俳人が書いた作品がこの時代にあること。それはぜったいに、俳句をゆたかにすることです。図鑑でも標本でも、一種類でも多いほうが嬉しい。しかも陽子さんの作品は、昆虫でいえばめずらしい色の虫ですから、そのすがたを、“残すべき“だと、私は思っています。」はたしてこの句集が俳句の喜ぶめずらしい色の虫のような本になっただろうか。 とあった。集名に因む句は、 ふ、は鳥になり昆布干す人が仰ぐ 陽子 であろう。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておこう。 作り雨音のはじめの色なりし 胡桃割る斯くてことばの砕けゆく 白き夏の白き胡蝶は白き花へ 見てゐたる星が動きて天の河 木の蔭に入りて影解く春の鳥 海に降る黄砂は海の魚が呑み 独楽を打つむかしの人もやつて来て 音を送るね草の実入れて封をして 秋の暮金魚潰せば吾も赤うなるか 柿の秋どの鳥籠も開けてあり 雨冷や魚のまとへる水の膜 花粉とばし尽くせし土筆つひに鳴る こどもではなきわれわれのこどもの日 父の死と冬すきとほる蟬の屍と 喋々を捕へし網をかるくねぢる 依光陽子(よりみつ...