鈴木精一郎「秋の風子に見られたる泪かな」(『靑』)・・
鈴木精一郎句集『靑』(書肆山田・2000年刊非売品)、その「後文」に、 雪洞の灯かげに踊る雛の影 これが十八歳の時の最初の句です。それから幾年月、もう八十歳になります。 「木友俳句会」(勤め先の炭坑山の同好会で、山は昭和四十年に閉山になりました)、「懸巣」(関西の俳誌です)、「かもしか句会」(尾花沢の俳句好きの集まりです)と、仲間に入れてもらいました。そして、俳句とは庶民の詩ではないか、と教えられたように思います。五七五のリズムは体にしみこんでいます。生活の折々にほっと出るため息が私の俳句になったような気がします。この句集も、家族や世相などがごった煮になっていますが、俳句で綴った自分史のようなものかと思っています。御笑覧いただければ幸いです。 とあった。鈴木精一郎は、愚生の心友・鈴木一民(書肆山田)の父君である。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。 一杯のワインはなやぐ初句会 精一郎 山刀伐 (なたぎり) の山田ひそかに蝌蚪育つ 雪国を発つ坂東の麦の青 鶏頭に囲まれて小さき水子墓 日捲をまとめて剥ぎぬ二月尽 バス停に薫風まとひ子の待てり 卒塔婆にふれ金雀枝の花こぼす 自問いつも黄泉がはべれり寒烏 基地粉砕かん板のした落葉掃く 秋深き飢餓の故山に英霊帰る けだものの向きあひ春の小雪ふる みどり児の墓堀穴堀り終へんかんこなく 菊日和ポケット底の煙草屑 団交の静寂 (しじま) だん炉のよく燃えて 鈴木精一郎(すずき・せいいちろう) 1930年、尾花沢市生まれ。享年91。 ★閑話休題・・大久保すみ「綿虫に峡の日ざしのよみがへる」(『鎮魂の花』)・・ 大久保すみ第一句集『鎮魂の花』(牧羊社・1987年刊)、序文は井沢正江「大久保すみさんについて」には、 大久保すみさんは植原抱芽氏の「懸巣」で育った人で、「懸巣」の中心的な女流として活躍すると共に「雪解」でも最近めきめきと台頭して来た有望な女流である。 (中略) すみさんの句熱心は有名であるが、単に熱心というより凄ましい情熱を句作にかたむけるのを見ると、それがおのずから句の上達につながっている。 (中略) すみさんは又師を尊信し先輩に対しても礼節を欠かさない人で、殊に初...