出口善子「現世(うつしよ)の囚獄(ひとや)に戻る昼寝覚」(『出口善子全句集』より)・・
『出口善子全句集』(角川書店)、その「あとが き」に、 人の命には限りがありますが、文字の生命力は永遠です。 私たちが、千年前の書物を読めるように、この全集も、ひょっとすると、百年、千年後の誰かが読んでくれるかもかもしれないなどと夢想すると、心が豊かになります。 俳句という表現形式に親しんだ優に半世紀を超える歳月は、常に満たされていました。 (中略) 残された時間があと僅かになった今、自分の後始末は自分でつけねばと、全集に纏める決心を致しました。 とある。本書は、既刊句集『瞬』『亂聲』『貝の華』『刺茨牡丹』『わしりまい』『羽化』『沙羅』そして、2019年以降の「拾遺」で成り立っているが、集成のうち第一句集『瞬』と第二句集『亂聲』のみは、愚生未見であった。しかも『瞬』(1981年・七星俳句会)の著者の俳号は由利白萩。序文は、「七星」主宰・武田白楊「『瞬』上梓を喜ぶ」と鷲谷七菜子 「期待の人」。第二句集『亂聲』(1985年・牧羊社)からが、文字通り出口善子の旅立ち集で、序は鈴木六林男「身体と精神」。飛んで第四句集『刺茨牡丹』(1999年・角川書店)の栞文は倉橋健一「十七年前のこと」、宇多喜代子「イギの思想」、坪内稔典「青空に捧ぐ」である。ともあれ、本集より、いくつか句を挙げておくが、「拾遺」の句を多く挙げておきたい。 神父痩身アカシアの白踏みて来し 由利白萩『瞬』 花びらが眩しき宙をもてあそぶ 〃 夕ぐれの受話器をおいて発情す 出口善子『亂聲』 春の昼嬰児と乳房湯に泛べ 〃 冬の国女のマグマ持ち歩き 〃 『貝の華』 人の日の半旗と反旗雨のなか 〃 右と左に手がある祈らねばならぬ 〃『刺茨牡丹』 青空に繋ぎとめたり父の凧 〃 終わる日のありて美しカレンダー 〃『わしりまい』 十二月十二日 鈴木六林男師没 六林男亡し忍び返しに冬夕焼け 〃 空港に女の羽化のはじまれり 〃 『羽化』 棘ごとに梅雨ためてこのさびしい木 〃 大道寺将司を悼む 文学の冥さを分かち獺祭忌 〃 『沙羅』...