武藤幹「春愁のプールの水の重きかな」(第57回「ことごと句会」)・・
本日、3月29日(金)は、いつもとは違う曜日のことごと句会(於:ルノアール新宿区役所横店)だった。兼題は「結」。以下に一人一句を紹介しておこう。 終活するには惜しい春の風 江良純雄 やすみなく春を痛がる子供いて 照井三余 古雛の眉に愁いか夜の雨 渡邉樹音 春燈や平穏といふ落とし穴 武藤 幹 投光器凍てて工事の男伊達 渡辺信子 三月の丸い咳ひとつブリザード 金田一剛 切られゆく白映えの皮新玉葱 杦森松一 結晶を氷雨と書けば匂う朝 大井恒行 次回は4月20日(土)、兼題は「鬼」。 ★閑話休題・・黒木三千代「侵攻はレイプに似つつ八月の涸谷(ワジ)越えてきし砂にまみるる」(朝日新聞3月24日、小島なお「短歌時評/戦争の歌を読む時は」より)・・ 朝日新聞3月24日(日)、小島なお「短歌時評/戦争の歌を読む時は」には、 黒木三千代が三十年ぶりの歌集『草の譜』を刊行した。 ストーカーのやうなロシアの遣り口のいやだつて言ふのに、放してほしいのに 社会的な事柄をフェミニズムの思想に支えられた比喩や寓意によって捉える手法は、一九九四年刊行の歌集『クウェート』から引き継がれているものだ。 侵攻はレイプに似つつ八月の涸谷 (ワジ) の越えてきし砂にまみるる 『クウェート』収載の代表歌。発表当時は「女性がレイプという言葉を使うなんて」という批判も出たらしいが、この歌が訴えることの重要性が今こそ共有されるべきだろう。 (中略) 歌集巻末には高野公彦が解説を寄せているのだが、「侵攻は~」について別の新しい読みを加えて提示している。 〈地図を見ると、ペルシャ湾のいちばん奥に小さなクウェートの国がある。あたかも脚を広げた女体の、その陰部のやうにも見えるクウェート。「レイプ」と言つたのは、さうした地図的な連想からではないだらうか〉 戦争の歌を読む時、私たちは戦地の惨状に心を痛め、感情先行の読みをしてしまいがちだ。けれど、そうした歌こそ同情に流されるばかりでなく、慎重かつ冷静な多角的解釈が必要だろう。 とあった。 芽夢野うのき「花韮やほどよく白く咲きし距離」↑