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花尻万博「ブーゲンビレア純愛いつも死を以て」(『俱拙』)・・

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  花尻万博句集『俱拙』(RANGAI文庫)、著者の「あとがき」などは全く無し。帯文も表4側に、「第5回RANGAI文庫賞選評より」として、   映像として強くイメージの広がる句。読んだ瞬間、背筋の伸びる思い。  次々と凍星沈む泥の中  燃え続く観光列車に夜短か  人生きて数多をこぼす海老の網  (早坂類)  作品の道具立てが特殊でわかりやすくはないが、イメージの抽出に成功しており、従来の俳句で描けなかったものが描かれており一句目から楽しめる読者は幸せです。 (今田久士)      とあり、表1側帯には、  第5回RANGAI文庫賞受賞作品「南紀」含む句集  北風や終はりの全て死摺曲    燃え続く観光列車に夜短か      花待てよ次は終点天王寺  とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、幾つかの句を以下に挙げておこう。    しものふるあしたちとせもいちをへて      万博    ほつとけやんほんまやにこい鯨やさか    木の国や骨を転がす北の風     乳岩。奥州藤原氏の当主秀衡が、妻の懐妊祝いと安産祈願を兼ね熊野詣に出立した     際、妻がにわかに産気づいた所だという。    古道 (ふるみち) やおかめひよつとこほたえずに               ほたえる=地言葉「騒ぐ」     (助産婦は)女性とは限らず、むしろ地域によっては、年配の男性の帆がうが頼りにされることも多くて、それをとりあげ爺(・・・・・)と呼んだ。    佛手柑や何はなくとも湯をようけ      和深・リアス   ほつとけやんほんまやに こい鯨やさか             やにこい=地言葉(もにおすごい)     富田・大ウナギ    涸川を上るてきやら棒 (けん) を手に            てきやら(tekyara)=地言葉「あいつら」    星荒く全ての生に抗へる            荒ぶりて     空に詩充つる     斧よ鉈よ   虎斑木菟神楽歌には隠れなし            井の中も蛙見えなくなりにけり  『鹿々集』   虎落笛 かく泛子 (うき) の羽と化けしかな      放蕩やビルに前世の落花生  『與野情話』   皿の絵に黄泉沈みけり花椰菜      枯木灘   祀りなき神樹を信じ枯蔓も   花尻万博(はなじり・かずひろ) 1970年、和歌山...

林ひとみ「うらごゑで歩けばうすばかげらふに」(第81回「ことごと句会」)・・

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  7月19日(土)は、第81回「ことごと句会」(於:ルノアール新宿区役所横店)だった。兼題は「大」。以下に一人一句を挙げておこう。    向日葵や横顔だけになった父      春風亭昇吉    蚊帳を吊るほどよき父の釘一本      照井三余    かなかなお喋りとかげは無口かな     村上直樹    心太ダークマターの貌をする       江良純雄    いつの世も踏み絵と知らず更衣      杦森松一    あまた蟻王位継承権は無い        渡邉樹音    青梅や国旗損壊罪 おろか        武藤 幹    いつそ傘とぢてかへらう大夕立      林ひとみ    河骨の孤独と孤高脊椎植物        金田一剛   伏し目がちに黴は補足を続ける      宮澤順子    急いで通り過ぎていって夏 大っ嫌ひ   石原友夫    薄暗闇のねむりくまなく水母      杉本青三郎    雷一撃 怪光一閃 梅雨至る       渡辺信子    大いなる祖父を撃てとや仏法僧      大井恒行 ★閑話休題・・八田木枯「我を置き去りに我去る墓参かな」(江東区芭蕉記念館開館45周年記念トークショー「江東区ゆかりの俳人・八田木枯」より)・・  7月18日(土)は、江東区芭蕉記念館開館45周年記念トークショー「江東区ゆかりの俳人・八田木枯」(於:江東区芭蕉記念館)だった。登壇者は、鳥居真里子l・藺草慶子・西村麒麟。トークのなかで、藺草慶子が、今日の参加者のなかで、毎年市ヶ谷の土手で行われていた花見会「花筵雨情(かえんうじょう)」に参加しことがある人はいますか?と言われたので、愚生は手を挙げたが、愚生一人だけだった(愚生は自分勝手に「ハナムシロ・ウジョウ」と言っていた)。ニ三度参加した記憶がある。たぶん、25年くらい前のことだ。一度は、終わってから、木枯氏、亀田虎童子さんら3,4人で銀座のスナックに連れて行っていただいた(あまり、酒は飲めないのに・・)。ともあれ、登壇者の方々は、「八田木枯さんに関する自作」を5句ずつ発表されていたので、その中から以下に・・・。   昼顔と昼月しづかなるからだ    鳥居真里子   人形にゆびきりの指は無し雨月     〃   木枯に研がれし鏡かと思ふ      藺草慶子   亡き人に待たれてゐたる花の山     〃   浅草に風の吹く...

藤田湘子「愛されずして沖遠く泳ぐなり」(『藤田湘子の世界/超克の軌跡』より)・・

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  大石香代子著『藤田湘子の世界/超克の軌跡』(ウエップ)、著者「あとがき」には、   私が「鷹」に入会し、藤田湘子先生にはじめて見(まみ)えたのは、二十六歳のときであった。その頃先生あh、俳句専業になられてたばかりの壮年の活力に満ちていた。体力維持のために週に何度か自宅に近い横浜の美しが丘のスポーツクラブに通い、一日に二千メートル位は軽く流して泳ぐという二の腕の筋肉を誇らしげに示されたことも懐かしい。 (中略)  終戦直後の日本の混乱は、先生をも筆舌に尽くし難い労苦に巻き込み、当時のことはあまり語られなかったが、先生の人生に少なからず影を落としている。だが、苦学生の頃からの国鉄勤務は、日本各地を巡り、旅をするのに都合よく、戦後、俳人湘子を大いに育くみ、援けたと思う。新幹線開通と同時代に「鷹」が創刊されたことは象徴的である。  平成の時代に入って放送の分野で始まったNHKBS吟行は、各地の文化と文芸が結びついた質の高い教養娯楽番組として大衆文化向上に資するもので会ったろう。第一回から出演している。まさに、時代に求められた時代の申し子なのであった。(中略)  挑戦の軌跡は十一冊の句集に見てきた通りであるが、一冊一冊の句集にくっきりとした相貌と変化を見せ、戦後俳句のムーブメントを吸収しながら自分自身の俳句を希求した軌跡が瞭かである。 とあった。ともあれ、以下に本書より、いくつかの湘子の句を挙げておこう。    雁ゆきてまた夕空をしたたらす        湘子    音楽を降らしめよ夥しき蝶に   口笛ひゆうとゴッホ死にたるは夏か   枯山に鳥突きあたる夢の後   日のみちを月まあゆむ朴の花   湯豆腐や死後に褒められようと思ふ   あめんぼと雨とあめんぼと雨と   寒泉や定型といふ無尽蔵   蛍火忌と呼ば無晴子逝きたる日   ちゆと吸へば土用蜆もちゆと応ふ   死ぬ朝は野にあかがねの鐘ならむ  大石香代子(おおいし・かよこ) 1955年、東京都生まれ。       撮影・中西ひろ美「蔓の先梅雨明けを指示するように」↑

柴田多鶴子「紙風船つけば空よりつきかへす」(現代俳句文庫『柴田多鶴子句集』より)・・

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 現代俳句文庫Ⅱー7『柴田多鶴子句集』(ふらんす堂)、解説は山西雅子「苗札から桐箱へ――俳句を支えるもの」。 それには、  柴田多鶴子は昭和六十二年、四十歳で俳句を始めた。NHKテレビ講座の「俳句入門」で鷹羽狩行の講義に魅了され「狩」に入会、平成二年に檜紀代主宰の「遠矢」にも創刊に伴って入会。平成七年、四十八歳で第一句集『苗札』を上梓した。初学からほぼ七年間の句を収めるこの句集で私がまず惹かれたのは、育ちゆくお子さん三人の句である。数は多くないが印象深い。   兄弟の両耳のぞく冬帽子   ひらがなを積木で数へ春炬燵   夜話や兄のまねしてあぐらかき     (中略)    石庭の石のあはひの淑気かな   津の国の川ゆつたりと初景色  多鶴子はあるインタビューで「小さく叩けば、小さく返ってきて、全身で叩けば全身の力で返してきてくれるのが俳句だと思います」と語っているが、これらの句からは、初学から様々に修練を重ね続けた俳句が返してくれる美しい響きが、渾然一体となって聞こえてくる。   とあり、また、著者「あとがき」には、  令和八年六月に俳誌「鳰の子」は創刊からまる十五年になります。この記念となる年に『現代俳句文庫Ⅱ』へのお誘いを頂きましたこと、とても嬉しく有り難く思います。  本書には既刊句集『苗札』『恵方』『花種』『桐箱』から百句ずつ四百句を選んでおさめました。  とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、以下に、いくつかの句を挙げておきたい。    落ちてゆくところは知らず恋螢        多鶴子    まづ逃ぐることをおおぼえて地虫出づ   涅槃図の嘆きに風の加はりて   みんみんの鳴きやみ森のしぼみけり   山の気のゆるみしときに霧生れ   勝独楽の紐の汚れに汚れたる   遠き灯と同じ暗さの梅雨の月   病む者も看取る者にも秋立てり   鳰の子のつねに遅るる一羽かな   もう閉ぢる気のなくなりしチューリップ   菱採女実のあるかぎり休まれず   みどり子は水の重さや梅雨来たる   支へ木をされくつろげぬ牡丹かな   花野とは風抱くところ揺れやまず   違ふ虫鳴き出す別の闇のあり   小六月陽に鞣されて海の面   鼻をつけおでこをつけて花氷   風なくて散り風来れば花吹雪  柴田多鶴子(しばた・たづこ) 1949年、三重県生まれ。        撮影・...

新宅秀則「鈴(りん)の音や柩の上の夏帽子」(第55回「きすげ句会」)・・

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  7月16日(木)は、第55回「きすげ句会」(於:府中市生涯学習センター)だった。兼題は「雲」。以下に一人一句を挙げておこう。    道幅に伸びきつてをり青大将        久保田和代    紅の蕊 (しべ) 透ける奥能登合歓の花     濱 筆治    またの名の琉球恋し真夏の日         杉森松一    赫赫 (かくかく) の日輪喰むや雲の峰     新宅秀則    夏帽子深くかぶりてちさき声         高野芳一    人世の坂登りきり雲光る           清水正之    心太君は好きだと谷中にて          井上芳子    抱きしめてゴール許さじ盛夏なり       寺地千穂      吟行のふっくら甘き野枇杷かな        山川桂子    いま少し雲よ、風の詩を聴かせてよ      大井恒行  次回は、8月27日(木)、兼題は「新」。         撮影・鈴木純一 「ご破産で願いましては丸裸」↑            7 月 16 日   トニー 谷   没( 1917 - 1987 )

岩田奎「蟻地獄蟻がはこびしものも落ち」(『敵』)・・

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   岩田奎第二句集『敵』(書肆侃侃房)、帯の惹句には、 デビュー句集『膚』で田中裕明賞と俳人協会新人賞をW受賞した俊英、待望の第二句集。   叫ぶおやすみとか氷るおやすみ  とあり、帯文の服部真里子は、    挽肉のあらければ咲く辛夷かな  辛夷が咲くのは、この挽肉が粗いからだったのだ。ひとつの死である挽肉が、粒の粗さのために口の中で弾ける逆説的な生命感。辛夷が咲くことはまさにそのような現象ではないか。私たちの世界の、思いもよらないきらきらした残酷さを、『敵』はこうして取り出してみせるのである。  とあった。そして、著者「あとがき」には、    題は敵にした。自分はつくづくやさしさがたりないと思う。この句集を編むことを通じてすこしばかりやさしくなれたような気もするが、もっとやさしくなっていきたい。くわえて、これからも敵にめぐまれ、敵にしたしんでありたい。日日共同制作者と呼ぶべき句敵 (くがたき) の皆さまに感謝しつつ筆を擱く。  とあった。ともあれ、以下に、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい(ちなみにページ下段に句の読みがローマ字で表記されているが、それは省略した)。    えいゑんの中をゑんそくしてゐたり       奎    歌が止みシャワーの音の止みにけり   星祭われら虚業のビル灯す   発明をなさぬ掌水澄めり   公にならぬ氷の上のこと   山東京伝本名醒都鳥   水鳥の心それぞれ敵をもち   ぜんまいはさうせぬこともできるなり   陸にてはくもりてありぬ箱眼鏡   新社員配属血沼海ぞひに   花石榴拳固くらはずくらはせず   運動会すみたることは塗りつぶされ   青写真この世の鳥は遊ぶなり   戦闘機もミツビシがよく寒卵   仏罰としてものの芽のひらくなり   雪ぶかくなるまでこの時速でゆく   金亀子言葉ひらめききらずあり   欅枯れながらながるる水の熱  岩田奎(いわた・けい) 1999年、京都生まれ。       撮影・中西ひろ美「やんちゃだったあの子の夏の昔歌」↑

小野初江「かわらのぎくよ疾く万巻の花火せよ」(「LOTUS」第56号)・・

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   「LOTUS」第56号(発行人:無時空映)、特集に「小野初江追悼号」とある。特集の扉に、 小野初江さんは弊誌第五四号小野初江誌上句集『花降る日』のひとこと(あとがき)に九五歳と記されてあるので享年は推定九六 逆算するとお生れは昭和四年と思しい「戦中戦後の長い克己の時代があり やっと解放されたのはすでに晩年になってから」(ひとこと)とご自身記すように 六〇歳を過ぎてから地元川崎の句会に参加 やがて「山河」から豊口陽子の導きにより「未定」同人に「LOTUS」の創刊同人 一時退会後第四八号より復会 前の第五四号収載の「草いきれ」 二十句が遺稿となった「かわらのぎくよ疾く万巻の花火せよ」 小野さんは私たちLOTUSの連衆にとって特別な存在であり 俳句への尽きせぬ情熱を誰よりも強く持ち続けてをられました 我々の憧れでもあり目標でもありました  とあった。 そして、挟み込まれた便りには、  (前略) この度、発行人交代に伴い同人一同で協議のうえ、LOTUSは新しい発行体制に移行することとなりました。  これまで弊誌は紙媒体を中心に発行し、関係各位へ郵送にてお届けしてまいりましたが、57号以降はPDF版を中心とした発行形態へ移行いたします。(中略) PDF版への移行により、遠方にお住まいの方、海外在住の日本語ネイティブの方にも、より速やかに弊誌をお届けできる体制を整えて参ります。 PDF版のLOTUS誌をご希望の方は、下記Email までご連絡ください。 従来どおり、無料にてお届けいたします。  とあった。ともあれ、本誌本号より、いくかの句を以下に挙げておきたい。    体内の星さわぎだす麦畑       表健太郎    内実のまだ濡れているかき氷     曾根 毅       線刻の菫   わらう   弔いの雨               三上 泉    屋根裏で生きるに慣れて偽日記    熊谷陽一       こそあどの   ことばかくあれ   ちからぐさ             酒巻英一郎    百合を埋め夜の霧なる棺かな      無時空映                  撮影・後藤章氏↑ ★閑話休題‥埼玉県芸術文化祭2026協賛事業「第48回埼玉俳句大会」の講演・大井恒行「俳句とは何か〈有季と無季〉・・     7月12日(日)、さいたま文学館・文学ホー...