木村オサム「虫売往く無人の夜の大通り」(『笑う円錐』)・・
木村オサム句集『笑う円錐』(リトルズ)、章立ての中にには、「笑う円錐(完全版)」、「どんぐり(完全版)」など、全句に「円錐」「どんぐり」の語が入った連作句もある。ただ、全体的には「序」もなく「あとがき」もないシンプルな作りの句集。ただ、一篇のエッセイ「火事について」が収録されており、その中に、 先日在る句会で、昨今話題になっている熊の被害を茶化したような句を採ったところ、『この句は不謹慎だ』と指摘された。確かに熊の被害に神経を擦り減らされている東北を中心とした皆様の心中を察するに、不謹慎な句であることは間違いない。私は反省した。 「火事」もまたある意味で不謹慎な季語である。 (中略) だが、結果的に不謹慎のそしりを免れないとは思いつつ、私も一俳人として、この印象的な冬の季語で句を詠まずにはいられなかった。 (中略) ある意味、これは表現者としての性(さが)なのかもしれない。どうかご理解、ご容赦頂ければ幸いである。 とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を、以下に挙げておこう。 百歳はこどもの気分雲の峰 オサム 迷子だが花火に見とれてしまう 号泣が笑顔に見えてくる海市 余生です臍から花菜出尽くして 花菜畑銃は虚空へ向けるもの 転ぶため走る少年更衣 更衣おにがそろそろ鬼になる まだ遅くない人類の更衣 円錐の抜けたるからだ夏の風邪 樹の自我がどんぐりとして落ちてくる 戦場の死にまねどんぐりに習う どんぐりを楽譜に撒いただけの曲 どんぐりにびっしり詰まる独り言 出家したばかりの寺が火事になる 教会が火事で隣の野で祈る 戦争と火事の見分けがつきません 文明の最終章にいつも火事 木村オサム(きむら・おさむ) 1961年、神戸市生まれ。 撮影・芽夢野うのき「ライバルは男それも詩人にして秋は」↑