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濱筆治「駱駝射る日差しミサイル涅槃西風」(第51回「きすげ句会」)・・

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   3月19日(木)は、第51回「きすげ句会」(於:ルミエール府中)だった。兼題は「松」。以下に一人一句を挙げておこう。    大地焦げ阿蘇の野焼きの空の青       濱 筆治    半熟の卵くずさず春の息          高野芳一    一面のホトケノザ千の小仏座らせて     山川桂子    合コンの無言のツアーいちご狩り      杉森松一    大國魂まつ (・・) は要らぬと笹飾り    清水正之    今年また背筋正すや古雛 (ふるひいな)  新宅秀則     松竹梅の松たのしみて春御膳       久保田和代    桃の花手話で髪留めほめのけり       寺地千穂    門松に子らの成長セピア色        大場久美子    三・一一あの日たしかに母はいた      井上芳子   瞑想の春の象 (かたち) は消えゆく愛    大井恒行 次回は、4月16日(木)、兼題は「風」。 ★閑話休題・・米田鉄也「捨舟に二日の雪のつもりけり」(月刊「ひかり」3月号・「西山俳壇」より)・・  月刊「ひかり」3月号・「西山俳壇/城貴代美選」(西山浄土宗総本山光明寺護持会)。その他の特選、入選した句のいくつかを挙げておこう。    冬夕焼じやんけんぽんの兄妹      大分市  角谷紀子    落胆のため息にして息白し       東海市 大村すみ代    鳥総松一枝折り挿し清し朝       糸島市  湯川蕉子    玉椿星散りばめてネイルの娘      京都市  黒田十和    元朝の駅で洗いし旅の貌        摂津市  山上鬼猿       餅花の揺れて昭和のアーケード     芦屋市  門脇重子    グローブでぬぐう涙やすみれ草          城貴代美(選者吟)        撮影・中西ひろ美「水色の背中めがけて春の鳥」↑

今宿節也「お化け煙突二本の場所まで春の土手」(『宝瓶宮(ほうへいきゅう)』)・・

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  今宿節也句集『宝瓶宮(ほうへいきゅう)』(コールサック社)、解説は鈴木光影「星と芸術を愛する音楽家俳人が奏でる豊穣の天体図—-今宿節也句集『宝瓶宮』に寄せて」。それには、   本書を繙くと、今宿節也氏を取り囲む豊かな星々がひしめく夜空を眺める思いがする。それは文字通りの天体の星だけでなく、多分の野芸術やそれを生み出す芸術家たち、言葉、文化、自然が奏で織りなす豊穣の天体図である。 (中略)    宝瓶 (ほうへい) の水美酒 (みずみき) ならむ魚ぞ酔ふ  最後に、節也氏と私は祖父と孫ほどの歳の差があるにもかかわらず、このたび解説を務める機会をいただいたことに深く感謝申し上げたい。俳縁に加えて、生まれ月が同じ水瓶座という星縁のなせる業かもしれない。水瓶座の天文学上の名称・「宝瓶宮(ほうへいきゅう)」に込められた水の流れは、多彩な音色を奏でて、星と芸術を愛し平和を希求する多くの読者の元へと届いてゆくことだろう。 とあり、著者「あとがき」には、   子供の頃から絵ばかり描いていたが、小学生時代中村立行先生に師事、氏は後に写真家として名を成した方である。なんでもいいから自由に描けと言われ、自由の難しさを知った。兄から小学四年の頃メロディを記譜する方法を伝授された。興味は音楽へと変わってゆく。一九三年にプラネタリウムで覚えた星がスバルで、野尻抱影先生の名解説を聴き、以来文通を始めた。ニ吋 (インチ) 半の望遠鏡を自作し、星団や星雲などを渉猟しその美しさに驚嘆。戦時中は宮沢賢治の思想に感銘し、敗戦で作曲への道に進むことを誓った。その翌年に抱影先生は山口誓子との共著『星戀』が話題となる。誓子の星の句は新鮮で、抱影の随筆も亦さすが天文学 (てんぶんがく) と自称するだけあって絶品だった。  その後私は池内友次郎(高浜虚子の次男)門下の貴島清彦先生に作曲を師事する。氏も亦賢治を敬愛し、私の周辺に賢治、音楽、俳句に相関する人が増えていった。 (中略)    私の俳句は二〇二一年の春から始めたばかりだが、俳句の本は戦時から親しんでいたし、兄は中学時代に俳句をはじめて、後年岸田稚魚の流派に所属していた。私も川端茅舎や種田山頭火の句に作曲し、俳句には何かと縁があった。現在は俳人・俳論家の武良竜彦氏に学ぶことが多い。  とあった。集名に因む句は、    宝瓶宮 (ほうへいきう) 幽 (かそ...

堤きこ「その時のいつか来るらし花卯木」(『魔法のことば』)・・

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  堤きこ第一句集『魔法のことば』(俳句アトラス)、序文は林誠司、その中に、  (前略) きこさんの本名は紀子 (のりこ) 。俳句を始め、いくつかの句会に参加した時、「のりこ」という同名の人がかなりの確率でいたので「きこ」とした、と聞いた。奇しくも秋篠宮妃と同名であるが、そこに深い意味はないと思う(笑)。 (中略)  次に「等身大」について。個人的経験だが、私は俳句を始め「河」に入会し、角川春樹先生の指導を受けたのだが、春樹先生から「お前の俳句はどれも等身大なのがいい」と誉めていただいたことがある。等身大とは「ありのまま」ということ。自分の暮らしや想いを背伸びせずに率直に詠っている、ということだろう。以来、私は「等身大の表現」を強く意識して作句してきた。なので、等身大は私にとっても重要で、きこさんの俳句に憧憬さえ感じる (中略)   句会で点数を取りたい、人から高い評価を得たい、という思いから、われわれは過度な装飾や背伸びを俳句でしてしまうことが多い。自分の心を過度に装飾することは「等身大」から離れてゆく行為。きこさんの句を高く評価するのは、そういった他人の評価から超然とし、自分の心や俳句に嘘をつかず、過度な装飾表現を加えないことである。言うのはたやすいことだがなかなか出来ることではない。  とあり、著者「あとがき」には、  俳句にはかねがね興味を持っていたが、結婚後は主婦業に専念し、なかなか機会を得られなかった。  ようやく心にも生活にも余裕が出来、子供たちも自立して、十五年前の七十歳の古稀の時、杉並区の角川庭園にて「はじめての俳句」講座を受講した。 (中略)  俳句は十七文字と季語で成立し、心のおもむくままに表現せず、季語との取り合わせで表現することに魅力を感じている。その後、日常の生活から詩を見出していく楽しさも知った。 とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておこう。   雲の峰心配ごとはつくられる       きこ    風花や母は楽しく徘徊す   交番に宅配ピザや冬隣   老一人子雀一羽梅一輪   エレベータースーツ二人の秋思かな   きりぎりす「まあそう言わず生きてろよ」   秋深しチラシの裏の五七五   母の手を離さぬやうに冬に入る   献杯のことば途切れし蟬時雨   父も母も友も生きてる昼寝覚   初恋はアルバム...

星野佐紀「涅槃図の中天白き月か日か」(『不東』)・・

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 星野佐紀第一句集『不東』(朔出版)、序は中西夕紀。その中に、   佐紀さんの佐紀は奈良の佐保路、佐保路の佐紀から採られた俳号である。私が「都市」を立ち上げてまもなく、都市の仲間と吟行を計画したとき、佐紀さんから「奈良に昔住んでいた家があるから泊まりませんか」と誘って頂いたのが、コロナが起こるまで十年以上続いた年に一度の奈良吟行の始まりだった。 (中略)    奥つ城の冴ゆる柳生家八十基   朔風や高き窓より廬舎那仏  佐紀さんはまっすぐ対象と向き合って、朗々と詠い上げる。だから成功すると、姿の良い風格のあるものが出来上がる。ここで掲げた句も切字が効果的に使われ堂々としている。 とあり、著者「あとがき」に、   夫の海外駐在に伴い、タイのバンコクで長女を、旧西ドイツのハンブルグで長男を出産し、十数年に及ぶ海外生活を終えて昭和五十七年、奈良県生駒市に居を構えた。帰国子女だった子供達も何とか日本の生活に慣れ、家族全体が落ち着きを取り戻した頃、「紙と鉛筆があれば、あなたも作れます」というキャッチフレーズに惹かれ、近所のカルチャー教室で俳句を始めた。文芸とは凡そ縁のなかった私が、なぜか俳句を詠んでみようと思い立ったのだった。  その後、夫は義父が開発した天然酵母パン種の事業を手伝うため退職し、家族で東京・町田市に居を移した。平成二十三年に夫は他界したが、生涯現役を貫きたいと、私は今も夫が義父から受け継いだ仕事に細々と関わっている。 とあった。集名に因む句は、    玄奘の不東思へば指冴ゆる       佐紀  であろう。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておこう。    耳成山 (みみなし) も畝傍山 (うねび) も浮きて初霞   春寒し壁に影置く伎芸天   灯涼し南燭 (しゃしゃんぼ) の咲く佐紀神社   自問自答して料峭の波音に   新涼や机上に重ねたる白紙   碧き海青き空のみ昼寝覚   麗かや舗道の線は国境   角伐りや白き枕の地に置かれ   春寒や今朝の生駒山 (いこま) の深縹 (こきはなだ)    水草生ふ水面をきざむ白き月   履きしまま長靴洗ふ春の川   業平忌浮葉は銀の玉を乗せ   大役を果たしひとりの柚湯かな   紅茸や八十路にもある恋心     星野佐紀(ほしの・さき) 昭和16年 東京都生まれ。      撮影・中西ひろ...

赤野四羽「燕の巣があります真摯へ帰る」(「noi 」vol.11より)・・

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 「noi」vol.11(俳句雑誌noi)、特集は「口語俳句の沃野 その多様性と可能性」。その特集の扉には、  noiには「野風抄」という、一年を通じて同じテーマで作品を寄せる「年間テーマ作品」欄があります。2025年、記念すべき初年のテーマは「口語」でした。口語と何か、俳句とは何か……。誌面を通して互いに試行錯誤しながら重ねてきた道程を振り返る。総まとめの企画です。  とあり、論考に赤野四羽「口語俳句とNew Sincerity」、柳元佑太「分け持たれ得ないわたしによる分け持たれたわたしの分け持ち」、山口優夢「構成主体と作中主体 肉声を絞り出すための口語俳句論」、加えて「野風抄 2025 誌友一句鑑賞 記憶に残る一句」である。全部、紹介したいが、無理なので、興味のある方は、直接、本誌にあたられたい。ここでは、赤野四羽の一部を以下に引用しておきたい。  (前略) さて、一口に『口語俳句』といっても、実態としては大きく二つのタイプに分かれています。それは『会話体俳句』と、『非文語俳句』。『会話体俳句』とは典型的には、   「春雨じゃ濡れて行こ」とはよう云わん     武子     「小惑星来るんだってよ」「わあ桜」     陰山 惠   でも先に熊が住んでいたんでしょ     増原まみ のように、口語会話のセリフの引用の形をとる、あるいはそのままセリフになり得る形で一句を成立させる方法です。 (中略)  冒頭で述べたように、口語俳句というのはこれまで俳壇の大勢が避けていた、新たな『感性の配置』と考えることができます。虚子以降の多くの俳人がスローガンとしていた『客観写生』『花鳥諷詠』からは、口語俳句の流れは生まれてきませんでした。つまりそこには虚子を超えるなにかがある、ということになります。  結論からいうと、口語俳句の実践は、俳句という文学の『新誠実性』『不透明性』『音韻性』を高めると考えています。 (中略)   では、口語俳句はどのように『新誠実』に接続するのでしようか。   ねえはるかぜ分断の起点はどこ      福田春乃   選挙に汗わすれられとるんかな能登    本城 清   みんなにはみんなの鬱と乳酸菌      嶋村らび    (中略)  では次の『不透明性』はどうでしょうか。   ごはんつくりたくない夜のさくらもち   東田早宵   ぶ...

三宅深夜子「大西瓜叩けば返事ありにけり」(「天晴」21号)・・

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 「天晴」21号(発行人・津久井紀代/編集人・杉美春)、主要記事は「第二回天晴賞発表」。選者は筑紫磐井・角谷昌子・津久井紀代。正賞は三宅深夜子「関西真夏」、準賞は中嶋秀二「ハザードマップ」、佳作に田中進一「忌日」、松浦泰子「熊野三山」、森巴天「カエサル忌」、堀場美知子「函館~道南」、川崎果連「秋思」、村上麦處「メメント・モリ」、杉美春「春雨の匂ひ」、木村内子「老いの春」、井口如心「あしおと」。以下に、それぞれ句を挙げておこう。    アッパッパ通天閣を降りて来し      三宅深夜子   春寒し三食ジャンクフードの日       中嶋秀二    河童忌やインクのにじむ一筆箋       田中進一    交番の巣をそのままに燕去ぬ        松浦泰子    端居すやいつもの嘘を聞きながら      森 巴天    夏惜しむ山ふところへ長き貨車      堀場美知子    老木をなぶる木枯あきつしま        川崎果連    目指すのは補陀落とかや冬の波       村上麦處    甘噛みの小さき牙や冬の月         杉 美春    「いせ辰」にぽち袋あり年用意        木村内子    二度読みの二度目の涙冬日向        井口如心      撮影・芽夢野うのき「駆け抜ける葉牡丹の花咲くみぎり」↑

大澤千里「廃屋に音なく今朝のみぞれ降る」(「立川こぶし俳句会」)・・

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  3月13日(金)は、立川こぶし句会(於:立川市女性総合センター アイム)だった。以下に、一人一句を挙げておこう。    豪雪のかくも重たき白さかな        井澤勝代    初音へと鳴き返しつつ歩みけり       三橋米子    鴨の足春の湖水にせわしなき        大澤千里    やわらかな光となりて雪柳         山蔭典子    五合庵良寛らしき白梅花          和田信行   スケッチの山茱萸の花天をつく       高橋桂子    夢おぼろ喋々結びに四苦八苦        川村恵子    風まかせあてなき旅や柳絮とぶ       伊藤康次    ひと日生きてひと夜迎える老いの春     大井恒行     ★閑話休題・・野谷真治「店の秋ほのかほどけるほどの茶碗」(「自由律俳句協会ニュースレター」No35より)・・  「自由律俳句協会ニュースレター」35号(自由律俳句協会)の投句欄「自由律の泉」㉙の「泉㉘より一句鑑賞」のコーナーがある。その最初に、    店の秋ほのかほどけるほどの茶碗      野谷真治  ▼立ち寄ったお店、茶碗といったささやかなものから詩を起こす。音やリズムjを重視する。この句も「ほ」の音のくり返しで、しみじみとした声調になっている。日常を詩化する人。あなたの早すぎる死が悲しい。(金澤ひろあき)  とあった。野谷真治(のたに・しんじ)は、昨年11月14日に急逝。享年64だった。惜しまれる。       撮影・中西ひろ美「風化して鳩となる日の黄色かな」↑