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柴田多鶴子「紙風船つけば空よりつきかへす」(現代俳句文庫『柴田多鶴子句集』より)・・

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 現代俳句文庫Ⅱー7『柴田多鶴子句集』(ふらんす堂)、解説は山西雅子「苗札から桐箱へ――俳句を支えるもの」。 それには、  柴田多鶴子は昭和六十二年、四十歳で俳句を始めた。NHKテレビ講座の「俳句入門」で鷹羽狩行の講義に魅了され「狩」に入会、平成二年に檜紀代主宰の「遠矢」にも創刊に伴って入会。平成七年、四十八歳で第一句集『苗札』を上梓した。初学からほぼ七年間の句を収めるこの句集で私がまず惹かれたのは、育ちゆくお子さん三人の句である。数は多くないが印象深い。   兄弟の両耳のぞく冬帽子   ひらがなを積木で数へ春炬燵   夜話や兄のまねしてあぐらかき     (中略)    石庭の石のあはひの淑気かな   津の国の川ゆつたりと初景色  多鶴子はあるインタビューで「小さく叩けば、小さく返ってきて、全身で叩けば全身の力で返してきてくれるのが俳句だと思います」と語っているが、これらの句からは、初学から様々に修練を重ね続けた俳句が返してくれる美しい響きが、渾然一体となって聞こえてくる。   とあり、また、著者「あとがき」には、  令和八年六月に俳誌「鳰の子」は創刊からまる十五年になります。この記念となる年に『現代俳句文庫Ⅱ』へのお誘いを頂きましたこと、とても嬉しく有り難く思います。  本書には既刊句集『苗札』『恵方』『花種』『桐箱』から百句ずつ四百句を選んでおさめました。  とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、以下に、いくつかの句を挙げておきたい。    落ちてゆくところは知らず恋螢        多鶴子    まづ逃ぐることをおおぼえて地虫出づ   涅槃図の嘆きに風の加はりて   みんみんの鳴きやみ森のしぼみけり   山の気のゆるみしときに霧生れ   勝独楽の紐の汚れに汚れたる   遠き灯と同じ暗さの梅雨の月   病む者も看取る者にも秋立てり   鳰の子のつねに遅るる一羽かな   もう閉ぢる気のなくなりしチューリップ   菱採女実のあるかぎり休まれず   みどり子は水の重さや梅雨来たる   支へ木をされくつろげぬ牡丹かな   花野とは風抱くところ揺れやまず   違ふ虫鳴き出す別の闇のあり   小六月陽に鞣されて海の面   鼻をつけおでこをつけて花氷   風なくて散り風来れば花吹雪  柴田多鶴子(しばた・たづこ) 1949年、三重県生まれ。        撮影・...

新宅秀則「鈴(りん)の音や柩の上の夏帽子」(第55回「きすげ句会」)・・

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  7月16日(木)は、第55回「きすげ句会」(於:府中市生涯学習センター)だった。兼題は「雲」。以下に一人一句を挙げておこう。    道幅に伸びきつてをり青大将        久保田和代    紅の蕊 (しべ) 透ける奥能登合歓の花     濱 筆治    またの名の琉球恋し真夏の日         杉森松一    赫赫 (かくかく) の日輪喰むや雲の峰     新宅秀則    夏帽子深くかぶりてちさき声         高野芳一    人世の坂登りきり雲光る           清水正之    心太君は好きだと谷中にて          井上芳子    抱きしめてゴール許さじ盛夏なり       寺地千穂      吟行のふっくら甘き野枇杷かな        山川桂子    いま少し雲よ、風の詩を聴かせてよ      大井恒行  次回は、8月27日(木)、兼題は「新」。         撮影・鈴木純一 「ご破産で願いましては丸裸」↑            7 月 16 日   トニー 谷   没( 1917 - 1987 )

岩田奎「蟻地獄蟻がはこびしものも落ち」(『敵』)・・

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   岩田奎第二句集『敵』(書肆侃侃房)、帯の惹句には、 デビュー句集『膚』で田中裕明賞と俳人協会新人賞をW受賞した俊英、待望の第二句集。   叫ぶおやすみとか氷るおやすみ  とあり、帯文の服部真里子は、    挽肉のあらければ咲く辛夷かな  辛夷が咲くのは、この挽肉が粗いからだったのだ。ひとつの死である挽肉が、粒の粗さのために口の中で弾ける逆説的な生命感。辛夷が咲くことはまさにそのような現象ではないか。私たちの世界の、思いもよらないきらきらした残酷さを、『敵』はこうして取り出してみせるのである。  とあった。そして、著者「あとがき」には、    題は敵にした。自分はつくづくやさしさがたりないと思う。この句集を編むことを通じてすこしばかりやさしくなれたような気もするが、もっとやさしくなっていきたい。くわえて、これからも敵にめぐまれ、敵にしたしんでありたい。日日共同制作者と呼ぶべき句敵 (くがたき) の皆さまに感謝しつつ筆を擱く。  とあった。ともあれ、以下に、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい(ちなみにページ下段に句の読みがローマ字で表記されているが、それは省略した)。    えいゑんの中をゑんそくしてゐたり       奎    歌が止みシャワーの音の止みにけり   星祭われら虚業のビル灯す   発明をなさぬ掌水澄めり   公にならぬ氷の上のこと   山東京伝本名醒都鳥   水鳥の心それぞれ敵をもち   ぜんまいはさうせぬこともできるなり   陸にてはくもりてありぬ箱眼鏡   新社員配属血沼海ぞひに   花石榴拳固くらはずくらはせず   運動会すみたることは塗りつぶされ   青写真この世の鳥は遊ぶなり   戦闘機もミツビシがよく寒卵   仏罰としてものの芽のひらくなり   雪ぶかくなるまでこの時速でゆく   金亀子言葉ひらめききらずあり   欅枯れながらながるる水の熱  岩田奎(いわた・けい) 1999年、京都生まれ。       撮影・中西ひろ美「やんちゃだったあの子の夏の昔歌」↑

小野初江「かわらのぎくよ疾く万巻の花火せよ」(「LOTUS」第56号)・・

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   「LOTUS」第56号(発行人:無時空映)、特集に「小野初江追悼号」とある。特集の扉に、 小野初江さんは弊誌第五四号小野初江誌上句集『花降る日』のひとこと(あとがき)に九五歳と記されてあるので享年は推定九六 逆算するとお生れは昭和四年と思しい「戦中戦後の長い克己の時代があり やっと解放されたのはすでに晩年になってから」(ひとこと)とご自身記すように 六〇歳を過ぎてから地元川崎の句会に参加 やがて「山河」から豊口陽子の導きにより「未定」同人に「LOTUS」の創刊同人 一時退会後第四八号より復会 前の第五四号収載の「草いきれ」 二十句が遺稿となった「かわらのぎくよ疾く万巻の花火せよ」 小野さんは私たちLOTUSの連衆にとって特別な存在であり 俳句への尽きせぬ情熱を誰よりも強く持ち続けてをられました 我々の憧れでもあり目標でもありました  とあった。 そして、挟み込まれた便りには、  (前略) この度、発行人交代に伴い同人一同で協議のうえ、LOTUSは新しい発行体制に移行することとなりました。  これまで弊誌は紙媒体を中心に発行し、関係各位へ郵送にてお届けしてまいりましたが、57号以降はPDF版を中心とした発行形態へ移行いたします。(中略) PDF版への移行により、遠方にお住まいの方、海外在住の日本語ネイティブの方にも、より速やかに弊誌をお届けできる体制を整えて参ります。 PDF版のLOTUS誌をご希望の方は、下記Email までご連絡ください。 従来どおり、無料にてお届けいたします。  とあった。ともあれ、本誌本号より、いくかの句を以下に挙げておきたい。    体内の星さわぎだす麦畑       表健太郎    内実のまだ濡れているかき氷     曾根 毅       線刻の菫   わらう   弔いの雨               三上 泉    屋根裏で生きるに慣れて偽日記    熊谷陽一       こそあどの   ことばかくあれ   ちからぐさ             酒巻英一郎    百合を埋め夜の霧なる棺かな      無時空映                  撮影・後藤章氏↑ ★閑話休題‥埼玉県芸術文化祭2026協賛事業「第48回埼玉俳句大会」の講演・大井恒行「俳句とは何か〈有季と無季〉・・     7月12日(日)、さいたま文学館・文学ホー...

早川ひろ美「いつからか捩花(ねじばな)も吾(あ)も螺旋なり」(「多摩塾句会」)・・

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 7月13日(月)は多摩塾句会(於:府中市市民活動センタープラッツ)だった。兼題は「彫」。以下に一人一句を挙げておきたい。     陽を透かす一日 (ひとひ) の衣夏椿       上阪則子    浮き彫の龍の眼玉や風涼し           富山 勉    百歳の希みを記す笹飾り            小川幸子    時鳥山雨一過の御岳山             吉田久美    虚をついて通り抜けたる夏燕かな       早川ひろ美    鬼神 (おにがみ) に泣く子もいての夏神楽    森 和子    分断の世界見つめる女神像           花見育子    出番前動悸いやます絹ごろも          中西雅子    一服の涼風渡る氷菓かな            篠木裕子    水滴の衰えのよう草螢             大井恒行  次回は、8月10日(月)、兼題は「宿」。  ★閑話休題・・もりさわてい「小説の山場の中へ初蚊来る」(「ちょっと立ちどまって」2026・6)・・ 「ちょっと立ちどまって」は、森澤程と津髙里永子の二人の葉書通信である。今回の葉書のお二人の名前は平仮名できされているので、そうした。    河鹿鳴く黒き姿を隠しつつ       つたかりえこ       撮影・芽夢野うのき「会い別る夏の花々愛でながら」↑

長澤健次「春眠のところどころに火薬臭」(第48回埼玉俳句大会・埼玉県知事賞)・・

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                杉本青三郎会長挨拶↑                    愚生↑   7月12日(日)は、埼玉県芸術文化祭2026協賛事業・主催 埼玉県現代俳句協会「第48回埼玉俳句大会」(於:さいたま文学館・文学ホール)だった。講演は愚生で、演題は「俳句とは何か〈有季と無季〉・・高屋窓秋の肉声」。  以下に、事前投句の主要句を挙げておこう。    陽炎を抜けて角あるものが来る    渡邉樹音(埼玉県教育委員会教育長賞)    野仏にかすかな湿り蝶生まる     石井喜恵(埼玉県芸術文化祭実行委員会会長賞)    笑うたび太ってしまう春大根    田中美佐子(埼玉県芸術文化祭奨励賞)    パレットは岬のかたち花菜風       川本利範(  〃   )    いい人と言われ続けて汗っかき    金子和美(  〃   )    よもぎ餅家族は二等辺三角形     鈴木砂紅(桶川市長賞)    枝豆の終れば終る話かな       小林京子(埼玉県俳句連盟会長賞)    散り出してからが桜の本気かな    渡辺智恵(埼玉県現代俳句協会会長賞)    血縁のしづかに狂ひゆく遅日    山﨑加津子(入選)    てのひらで宇宙あやつる盆踊り   宮城留美子(〃 )    笑つてしまはうかと思ひつつ耕す   田口 武(〃)    死ぬまではヒトでありたし花筏    久下晴美(〃)    当日句の高点は、    沈黙はあらがふ祈り夾竹桃      福島ときみ (1位)    凌霄花ロミオ登ってくるかしら     本橋稀香     白玉や誘惑したりしないから      小林京子    坂東太郎雷銀座貫けり         渡辺智恵   戦争もライブ配信夜の秋        日高道を         撮影・中西ひろ美「瓶の中の水の中なる蕾かな」↑

研生英午「からぢゆうひとみづと」(「鹿首」第20号)・・

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 「鹿首」 第20号(鹿首発行所)、特集は「森の気」。特集の執筆陣は、絵に井草智代「牧草地・他」、論に藤ヶ谷直美「水の巡りと生態系を編む森と木々」、天草季紅「静かな森の入口で 語り継ぐフチとエカシの物語」、小林弘明「赤塚裕二の絵画——森への通路」、早坂健伸「山水的陽水論3」、室井公美子「狼のいる境界・武蔵御岳・神社と三峰神社をめぐって」。その他の論やエッセイに中村茜「言葉を話すこと、読むこと、書くこと」、翁譲「あの街、この街を歩く/一週間シャッターをあける」、山本のりこ「私の二〇二五年のパフォーマンス」、研生英午「イマージュ・浮遊する現前の行方21/河東碧梧桐の俳句」、奥原進「観舞絵巻」、鈴木淳史「私説 井上井月 第3回」など。  ともあれ、本誌本号より、いくつかの句歌を挙げておこう。    干からびてニッポンが光りだす         水本石華    真暗闇若菊白を仄めかす            内田正美    蜘蛛の糸失せしゑろすのあみだくじ       奥原蘇丹    箪笥階段うへは開かずの荒野なり         風山人    書き初めや命一文字冨士の嶺           翁 譲    二人ゐる一人は道化師 (ピエロ) たまご粥    研生英午    燭光は夜の明けまでおやみなく稚児かくれたる海をめぐりぬ     川田 茂    隣国は仮想敵国政治灘軽々越えるJ・POPのこども         内藤隆子                撮影・鈴木純一「おつかいの牛乳パック汗をかき」↑     7 月 1 日   林明子   没   ( 1945 ~ 2026 )『はじめてのおつかい』絵