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宗田安正「鳥曇誰から先に鳥になる」(「藍」4月号・618号より)・・

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 「藍」4月号・618号(藍俳句会)、「現代俳句逍遥(141)」は、黒岩徳将「アンソロジー、何をどう読みたいのか」。その中に、  (前略)(中略) 刊行済みアンソロジーを、「この本にあの句があったことがよかった」という軸で位置づけを試みたい。アンソロジー選について思い出す発言は、角川「俳句」二〇一八年五月号「平成百人一句」の座談会の宇多喜代子の「こう言う時にいちばん話題になるのは、誰が入った、誰が落ちたということでしょう。選んだほうとしてはもの凄く塩梅が悪いんです。(笑)」というものである。前掲の『天の河発電所』に掲載された作品で筆者がエポックだと思った句を挙げる。 (中略)    焚き火からせせらぎがする微かにだ    福田若之   あたたかなたぶららさなり雨の降る    小津夜景   寒夜叫 (おら) ぶよ自作CD地に並べ   髙柳克弘   ジーパンの異臭柳田国男の忌       中山奈々   ゆく秋やちりとり退けば塵の線      榮 猿丸   凩や匙の付け根のラテの泡       小野あらた   つぎつぎに蜜柑を貰ふ旅の空       矢野玲奈   背きあふうつつの百合と玻璃の百合    大塚 凱     とあった。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。    灘まっ平らなり白昼の春霞         大谷 清    蘇る心音いとし寒北斗           峯 悦子    神が塩まぶせば星の凍てにけり       工藤篁子    冴え渡る競りのサイレン湾の底       今西政枝    初夢はマッコウ鯨の寝姿で        早藤ほづみ   厨子王の行きし道とや山始         光末紀子    滲む字のにじみのほどの暖かさ       山路幸和    余生とは今のことです冬の晴        森 武子    初春へ踏み出すカレンダーは墨絵     北村眞貴子    みささぎの時間をまたぎ冬の鹿       森澤 程    綿虫や異界に案内されそうな        中澤矩子    「雪になるかも」母がポツリと山の音     藤巻 晴         撮影・芽夢野うのき「木瓜桜杏よもやま話好き」↑

石田よし宏「噴水を仰ぐ自分が止まらない」(「地祷圏」第106号より)・・

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 「地祷圏」第106号(発行 石倉夏生/編集 中井洋子)、表紙裏の早乙女知宏「一句光芒」に、    噴水を仰ぐ自分が止まらない  石田よし宏  我が師、本誌創刊者故・石田よし宏の句。私のメモに「平成十八年七月十六日つくる会」とある。私が師事して間もなき頃だ。今も連綿と続く本誌主催の「俳句をつくる会」。一人一つずつ出す席題を織り込んでの即吟。かすかに響くペンの擦過音。私の原点、即興俳句だ。 とあった。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。   轍踏まぬための黙なり追儺の夜        本間睦美   トンネルの中の彎曲冬深む          水口圭子   絵の中に遊ぶ吾あり雪の街          矢野洋一   越冬つばめも吾も鬼の裔          山野井朝香       昏い眼をして梟を飼ふ男           石倉夏生   水琴窟に声を残して雪蛍          小川たか子   ひつくりかへすとりおとすちやんちやんこ   落合惑水   御来迎無音劇場那須ヶ岳           柿沼幸宏   空爆の記事の燃え出す初暖炉         苅部眞一   海市にて父は魚を釣っており         北島洋子   冬うらら麒麟の首は空より来         白井正枝   餅配る氏神様の住まひから          白土昌夫   星々の面影もゐてクリスマス         関口ミツ   にんげんのかたまりとして蜃気楼      早乙女知宏   哲学の潜む朽葉や冬の池          早乙女説子   冬の鷺黄の片足が水の上          竹田しのぶ   立冬へマトリョーショカは並びたい      綱川羽音   冬ざれの遊び足りない三輪車        戸田富美子   日や風のこなれし雨の烏瓜          中井洋子            時差のある母との会話冬ぬくし        中村克子 ★閑話休題・・田中裕希・鎌倉佐弓・ジェームス・シェイ・四元康祐「短歌と俳句と詩のつどい」(於:コ本や)・・  4月4日(土)午後3時~5時に開催された「短歌と俳句と詩のつどい」(於:コ本や)に出掛けた。愚生には不案内なところで、江戸川橋駅2番出口4分と記してあったが、たどりつくまでに20分くらいうろついた。住所の番地はすぐ近くにまで来ていたにもかかわらず、...

千代女「ほとゝぎすほとゝぎすとてあけにけり」(『俳句文化の諸相』より)・・

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  綿抜豊昭・河合章男著『俳句文化の諸相』(俳句図書館鳴弦文庫)、謹呈用紙に「 恩師綿抜豊昭先生のご退官に際し記念論文集を刊行いたしました。私も学生に戻りまして本名で執筆いたしました。(中略)/俳句図書館鳴弦文庫館長 川合章男(秋尾敏) 」とある。綿抜豊昭「はじめに」には、  (前略) さて、河合氏に「定年退職の記念に、連歌・俳句に関する、何か著書を」と勧められた。何度かお断りしたのだが、河合氏と共編にして下さるとのことなので、ご厚情を無にするものではないと、お引き受けした。 (中略)  そこで、学生・院生らとの調査をもとにした稿(五『明治新撰俳諧姿見集』・八『筑波根俳諧百人一首』)、改めた旧稿(一「天保俳諧」・ニ須賀川の俳人の事・六紋蒼の俳書について)に新稿を交え、天保期から明治中期までの俳諧・俳句文化の断片を“三文“の駄文にしたためた。  とある。従って、共著のそのⅠに、綿抜豊昭「俳諧・俳句の文化」、そのⅡに河合章男「『明治俳諧金玉集』の考察ー分断をつなぐ句集ー」、そのⅢに「翻刻『俳諧田ごとの日』(監修 綿抜豊昭/校注 河合章男」が収載されている。また、河合章男「おわりに」には、  綿抜豊昭先生は、一九五八年に東京都にお生まれになり、中央大学院博士後期課程単位取得退学され、「近世前期猪苗代家の研究」により博士(文学)の学位を取得された。富山女子短期大学助教授、図書館情報大学教授、筑波大学教授を歴任され、現在、筑波大学名誉教授である。私は、ニ〇〇一年から図書館情報大学大学院前期博士課程、筑波大学大学院後期博士課程で先生のご薫陶を受け、終了後も俳句図書館鳴弦文庫の運営や短詩文化学会の機関誌「近代俳句研究」の刊行などでご指導を頂き続けてきた。  第三章に収めた「俳諧田ごとの日」の翻刻は、俳句図書館鳴弦文庫の事業として綿抜先生をお呼びして行った成果である。  綿抜先生は、連歌のご研究を起点に、さまざまなジャンルの書籍文化を考察され、文学と文化が交錯する空間を捉え続けて来られた。先生のご関心は文学に留まらず現代のサブカルチャーにまで及び、今生みだされているこの国のコミックやアニメ、あるいはテレビドラマや映画、さらには料理や人のふるまいまでもが、古代からの文化の歴史を背後に置くものであることをお示しくださった。                 綿抜豊昭著作の一部↑ ...

廣澤田を「寛解の体があそぶリラの花」(「琳花」2026年01号)・・

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  俳句誌「琳花」2026年01号(代表 廣澤田を/編集人 鈴木光影)、その「編集後記」に、 ▲「琳花(りんか)句会」は、二〇二五年一月の花琳花句会(俳句誌「花琳花」)終会・終刊に伴い、同会の有志によって、二〇二五年二月に創立・創刊されました。毎月一回、第四日曜日に、清瀬市の清瀬けやきホールにて、少人数ながらも和やかに句会を開催しています。鈴木六林男創刊「花曜」の東京句会の流れを汲む「花琳花」の歴史の一部を引継ぐことができるよう、これからも自由で活発な句会運営を続けて参ります。 ▲この年刊「琳花二〇二六」は、林花句会が毎月の句会終了後に発行している月刊「琳花」の一号~十一号(二〇二五年三月~二〇二五年十二月)の十一号分から抜粋して、特集等を付したものです。  とあった。ともあれ、以下に本号より、いくつかの句を挙げておこう。    粗末なる蜘蛛の囲今日の始まりぬ         廣澤田を    亡き猫の名を呼んでみる漱石忌          金井銀井   生き直す花野を跨ぎ出づるとき          鈴木光影      南座が跳 (は) ねて川床 (ゆか) へと白い足袋   宮﨑 裕    小春凪古文の先生 (せんせ) の山羊の髭      杉山一陽    短日やまるでずっと水のなか           内藤都望    花冷えにシャム猫の眼は澄んでいる        石井恭平    ハビタブルゾーンの朝に春の水          米山恵子 ★閑話休題・・ゴールデンウィークにむけて!選者・大井恒行「文春俳壇」俳句募集の締め切り迫る!(4月6日・月/一人3句までー無料)・・ 以下のアドレスから、応募できます! https://bunshun.jp/articles/-/86611         撮影・芽夢野うのき「永遠に花散る岸を手ばなしぬ」↑

永澤直子「惜別の宴(うたげ)のあとや花の雨」(立川市シルバー大学・第8回「俳句講座」)・・

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  4月1日(水)は、立川市シルバー大学「俳句講座」第8回(於:立川市曙福祉会館)だった。雑詠持ち寄り2句。本日の俳人紹介は種田山頭火。次回5月13日(水)の宿題は「自由律で俳句を2句作って来る」。  以下に一人一句を挙げておこう。    上水のおよぐ鯉にも花あかり        服部清子    子は眠る遠い砲声星消して        樺島美知子    陽春やカラーチャートの如き庭       永澤直子    花ふぶきお堀の中は花いかだ       小菅多津子    舞い姿蝶に見紛 (まご) う花吹雪      由井幸男   カァカァと挨拶かわす春の昼        加藤由美    ひなたぼっこガラスのむこう小鳥二羽   荒井美智子    揺れながら何をささやく水仙花       村井悌子          子らの声群れて遊んだ花びらも       平田國子    いつにする雨と花見のしのぎあい      澁谷眞弓    いのちある光しぐれて草の静けさ      大井恒行 ★閑話休題・・羽賀明「藤白の坂の起点や寒椿」(月刊「ひかり 第794号『西山俳壇』」)・・  月刊「ひかり」第794号・城貴代美選「西山俳壇」。特選句「藤白の坂の起点や寒椿」(海南市・羽賀明)の選評に、   藤しろは有間皇子が謀反を問われ処刑された地。〈ま幸くあらばまた還り見む〉と万葉集に残る。帰還がかなわなかった無念さを寒椿にたとえ、鎮魂の想いが伝わってくる。  とあった。以下に、本号より、いくつかの句と、選者吟を挙げておこう。    まゆ描いてゆくあても無し寒雀    京田辺市  植西万里子    踏みつけていびつになりぬ蕗の薹   福岡苅田町  青木直哉   厚くなる点字絵本や春隣       松戸市    大島省子    酔醒めの帽子をたたく霰かな     奈良市    西井松柏    寒禽の中に聞き捨てならぬ声     田辺市   腰前八重子      選者吟   金太郎印の薬缶山笑う     城貴代美        撮影・中西ひろ美「その先も世界続けり養花天」↑

宮澤順子「大きくゆがんだしゃぼん玉の持続」(第77回「ことごと句会」)・・

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  3月31日(火)は、第77回「ことごとく句会」(於:ルノアール新宿区役所横店)だった。兼題は「眠」。以下に一人一句を挙げておこう。    漁 (すなど) りの曾祖父海市にいるかしら     渡邉樹音    眠たい風船栓抜きが平たい            宮澤順子    水の三月呑み込めるだけ人をのむ        杉本青三郎    春の小川源流はトランペット           江良純雄    鐘ゆるくひょうたん池からはみだす日永      林ひとみ    福寿草ポッ、それは幕間の明かり         金田一剛    兄はどこ妹はどこだ蝌蚪の群れ          村上直樹    山眠る みんなもチャンと休もうね        武藤 幹    湯気香るシニア食堂春火鉢            杦森松一    傾眠 (うとうと) とサックス転調春の縁 (へり)  渡辺信子    忘れられてなほ水の上流し雛          春風亭昇吉    水の速さに男心の小ささよ            照井三余    息入れて座る折鶴寒の月             石原友夫    行間に神語はありし春あけぼの          大井恒行     撮影・鈴木純一「エイプリルフール過ぎたら雲にのろ」↑              4 月 2 日   石井桃子   没   (1907 ~ 2008)

上田玄「暮れまどふなみのあはひにぽちょむきん」(『上田玄全句集』より)・・

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 『上田玄全句集』編集員会編『上田玄全句集』(鬣の会/風の花冠文庫・限定400部・税込み2000円)、凡例には、   一、本集は、上田玄の既刊句集『鮟鱇口碑』『月光口碑』『暗夜口碑』及び『句控 ニ〇一九年以後』と、現時点において判明している全作品を収めた。 (中略)   三、未刊句については、一行作品を「未刊句篇Ⅰ」、多行作品を「未刊句篇Ⅱ」として、それぞれ原句のままに年次ごと・発表順に収めた。 (中略)  四、初出と句集掲載における異同については解題において示した。 (中略)   五、上田玄は初期から多くの評論を書いているが、ここでは、渡邊白泉論を中心に併録した。なお、「渡辺白泉」の表記は、上田玄の表記を尊重した。  とある。「『上田玄全句集』解題」と「後書きにかえて」は深代響。その「後書きにかえて」には、  (前略)当 初は一人で『上田玄全句集』を出そうと資料の蒐集を始めていたが、粗忽なわが身を省み仲間をさがした。ニ〇二四年六月二三日、上野で鬣同人堀込学と落合い、第一回『上田玄全句集』の打合せをした。その後、同同人九里順子、水野真由美が加わり、四人の『上田玄全句集』編集員会となった。上田玄の全貌を明らかにし、後世に残すためにはどのような全句集にしたらよいか議論を重ねた。 (中略)   昭和四〇年代半ば以降登場し固有の俳句世界を確立した俳人たちと同様、上田玄もまた俳句に関わるその初期から優れた評論を発表して、自らの俳句の世界を深化させた俳人であった。評論は「渡邊白泉論・その他」として以下の八篇を収録している。「『媚薬と星をー秘められた浪漫的資質』特集 三谷昭を読む」(「鬣TATEGAMI」第五七号)、「『秋風羽衣曲』を受けて」特集 俳句の吉岡実」(「鬣TATEGAMI」第四六ごう)、「『富澤赤黄男戦中俳句日記』中の多行表記」(「鬣TATEGAMI」第七九号)、「感傷の超克ー窓秋の『河』への評と戦火想望」(「鬣TATEGAMI」第七二号)、「晩年の渡邊白泉・その音韻論」(「鬣TATEGAMI」第七麓号)、「追悼中島敏之」(「鬣TATEGAMI」第五八号)、「白泉各句一・二」(鬣TATEGAMI」九三号~九六号)。ここに上田玄の強靭な持続する志と内的必然性による思考の経緯を見ることができるとともに、シュルレアリスムや演劇活動への傾倒、あるいは舞踏や映像制作の経...