鈴木衞「天つ日の瑕疵なき空へ揚雲雀」(「文春俳壇」2026年初夏より)・・
「文春俳壇」2026年初夏(「週刊文春」ゴールデンウイーク特大号)、ブログタイトルにした句、鈴木衞「天つ日の瑕疵なき空へ揚げ雀」は特選5句のうちの一句。以下のように鑑賞した。 思い出したのは、鎌倉時代末期に編まれた『玉葉和歌集』の中の後伏見院〈天つ日のひかりは清く照らす世に人の心のなどか曇れる〉でした。「天つ日」とは太陽こと。歌の心は、“この世界には明るい陽の光が行きわたって平和なはずなのに、どうして人々の心は悩みや煩悩で曇っているのだろうか“です。掲句は、この歌を踏まえて作られたのかもしれません。 そう思うと、「瑕疵 (かし) なき空」のフレーズからは“雲ひとつない空“以上のものが想像されます。そこへ揚雲雀 (あげひばり) ―—空高く、囀りながら舞い上がる雲雀の姿を指す春の季語が合わせて詠まれています。凛とした佇まいと同時に、生の喜びを感じさせてくれる素敵な句になりました。 今回は、注目句として、末尾に8句を加えて選びました。佳句はいずれも甲乙つけがたいもので、出来るだけ多くの句を紹介したいと思ったからです。 ともあれ、選出句から、以下に、いくつかを挙げておきます。 さしも草だから超音波で喋る 山崎なお 核家族子は一匹の鯉のぼり 野口佐稔 花幻忌や水ヲ下サイ人間です 齋木和俊 「反」であり「非」であり「不」である「戦」春日 房総とらママ 人間の愛は動力冬すみれ 岡山芳寿 ゆで卵つるりと剥けて風光る 華盛頓 あの日 畳で跳ねて 雲に乗った 池光まな 此の世とはかなしみ色の日向ぼこ 各務麗至 三・一一あの日確かに母はいた 井上芳子 初音してふはりゆるみし脳の奥 阿波の風 人には人の蝌蚪には蝌蚪の立志あり 豊崎香穂理 介護にて疲疲疲疲疲疲や桜月 野中泰風 AIに春の在処 (ありか) を訊いてみる 漢方十七錠 パソコンと確定申告梅匂う 東野月沼 一湾を劇場として蜃気楼 ...