京極杞陽「性格が八百屋お七でシクラメン」(「週刊 金曜日」11月29日・1499号より)・・
「週刊 金曜日」11月29日・1499号(株・週刊金曜日)、特集は「俳句界の巨魁 虚子生誕 生誕150年」。その、世界の現状に対するイロニーのようなリードに、
(前略)〈いかに窮乏の生活にいても、いかに病苦に悩んでいても、ひとたび心を花鳥風月に寄することによってその生活苦を忘れ、たとい一瞬時といえども極楽の境に心を置くことができる〉〈これによって慰安を得、心の糧を得、もって貧賤と闘い、病苦と闘う勇気を養うことができる〉(『俳句への道』。仮名表記に一部変換)
とあった。論考に青木亮人「『写生』を有季定型に結晶」、岸本尚毅「職業としての俳句」。エッセイ「私と虚子」に、池田澄子・稲畑廣太郎・岩田奎・奥坂まや・櫂未知子・如月真菜・斉藤志歩・野名紅里・村上鞆彦。百句鑑賞に安原葉「珠玉の花鳥諷詠詩を味わう」。じっさいは102句になったという鑑賞文は年代別に分けてあるので、その中から、句のみになるが、以下に、いくつか挙げておこう。
遠山に日の当たりたる枯野かな 虚子 26歳
金亀子擲つ闇の深さかな 34歳
春風や闘志いだきて丘に立つ 38歳
野を焼いて帰れば燈下母やさし 44歳
流れ行く大根の葉の早さかな 54歳
襟巻の狐の顔は別に在り 58歳
神にませばまこと美はし那智の滝 59歳
大いなるものが過ぎ行く野分かな 60歳
たとふれば独楽のはぢける如くなり 63歳
天地の間にほろと時雨かな 68歳
初蝶来何色と問ふ黄と答ふ 72歳
去年今年貫く棒のごときもの 76歳
明易や花鳥諷詠南無阿弥陀 80歳
風生と死の話して涼しさよ 83歳
春の山屍をうめて空しかり 85歳
高濱虚子(たかはま・きょし) 1874(明治7)年2月22日~1959(昭和34)年4月8日、享年85。
★閑話休題・・尾池和夫「冬の日の花綵列島静かなり」(「週刊 金曜日」11月29日・1499号より)・・
同誌同号の虚子特集「俳句は極楽の文学」と同時に、地震学者で俳人(「氷室」主宰)でもある尾池和夫「見る/食べる/学」の連載、第3回「日本列島の地震の特徴」が掲載されている。その記事中に、
日本列島は4枚のプレートが押し合っている変動帯にある。太平洋プレートが東から西へ移動してきて列島の下へ潜り込んでいる。(中略)
海溝が弓なりになっている場所では、そこが一度にずれることがあって巨大地震になる。南海トラフと琉球海溝が出合う日向灘(ひゅうがなだ)のような場所では、潜り込みが複雑になって局所的に大きな力が働くためにマグニチュード(M)7クラス以下の地震が多く発生することになるが巨大地震は起こらない。(中略)
深い地震は潜り込んだ海のプレートの中で起こっている。潜り込み口に近い深さ100から300キロメートルあたりでは重いプレートの先から引っ張る力が働いて地震が起こっている。(中略)
深さ100キロメートルあたりでは海のプレートから絞り出された水の作用でマグマが発生し、しれが上昇してマグマ溜(だ)まりとなる。そこから物質が出てくると噴火となる。(中略)
このように地震の分布を立体的に観ることができると、日本列島周辺のプレートの動きが見えてくるようになる。それを時間経過とともに丁寧に見ていると、次の大規模な現象を予測することができると私は思っている。
冬の日の花綵列島静かなり 和夫
とあった。
尾池和夫(おいけ・かずお) 1940年、東京生まれ。
鈴木純一「胎内を通りぬけての冬銀河」↑
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