牟田英子「日晒しの城の堀切冬の蝶」(第180回「吾亦紅句会」)・・

 本日、12月27日(金)は、第180回「吾亦紅句会」(於:立川市高松学習館)だった。兼題は「短日」。以下に一人一句を挙げておこう。


  鰤起し「きらめき」めざす能登漁師   吉村自然坊

  真っ新な暖簾に並ぶ冬日和       折原ミチ子

  あれこれと省くひとりの年用意      関根幸子

  ガザ凍るアンネの涙血の涙        須﨑武尚

  鉢叩き空也上人旅途上          齋木和俊

  天神の大樹見上ぐる七五三        松谷栄喜

  黙祷で始まる集い年の暮         佐藤幸子

  裸木の裸になりて悔いてをり       田村明通

  短日やアップルパイの皮幾重       牟田英子

  音もなく水溜まりに落つ冬の月      西村文子

  日向ぼこ保育園児の箱車         渡邉弘子

  風の中湖水に散りし冬桜         村上さら

  おでんなり湯気の向かいに妻の顔    佐々木賢二

  ゆく秋や駅舎のピアノ弾く男       笠井節子

  泉岳寺の線香のけむり師走かな      高橋 昭

  亡き猫のぬくもり恋し冬半ば       武田道代

  ゆく秋や駅舎のピアノ弾く男       笠井節子

  君と行くりんごの花が窓の外      三枝美枝子

  押し入れの冒険したり短日の       大井恒行


 次回は1月24日(金)、兼題は「煮凝り」。句会の後、新年会が予定されている。


 ★閑話休題・・小山老人「眠り草押し花として旅鞄」(村松友視『武蔵野倶楽部』より)・・


 村松友視著『武蔵野倶楽部』(文藝春秋)、初出は「オール讀物」平成18年2月号~平成19年6月号までの連載で、小説6編を収める。そのなかの「武蔵野倶楽部」の部分、


 (前略)「それはね、眠り草だよ」

  小山老人は、そう言ってあわてて清明さんの指から抜き取った押し花をノートに戻し、そのページの中に記した一句を指で示した。眠り草押し花として旅鞄……そんな句だった。三人が読み終わると、小山老人はそそくさとノートを閉じた。その印象が強く目に残り、清明さんはその句をいまも暗記しているのだった。


 吉祥寺の街のスナック「武蔵野倶楽部」での物語だ。かつて愚生は、吉祥寺駅ビルロンロン弘栄堂書店勤務の折り、小用茂夫の企画した「プロレスブックフェア―」を、彼が急に退職し岩波書店に移ることになり、途中からそのフェアをブックフェアを引き継いだ。そのときの協力者が村松友視『私プロレスの味方です』(情報センター出版局)だった(村松氏は忘れておられると思うが・・・)。そのブックフェア―はプロレスブームの先駆け、引き金になって、取次のトーハンにより全国の書店にも波及していった。もちろん愚生らが取り組んだ様々のブックフェアーでは、圧倒的売り上げだった。当時、村松友視の『私プロレスの見方です』はベストセラーであった。



           撮影・鈴木純一「そっちから

                   当てにくる

                   わたむし日和」↑

コメント

このブログの人気の投稿

田中裕明「雪舟は多く残らず秋蛍」(『田中裕明の百句』より)・・

秦夕美「また雪の闇へくり出す言葉かな」(第4次「豈」通巻67号より)・・

山本掌(原著には、堀本吟とある)「右手に虚無左手に傷痕花ミモザ」(『俳句の興趣 写実を超えた世界へ』より)・・