筑紫磐井「星唱ふ攝津幸彦(つくしばんせい)返つてくる」(「俳句」2025年1月号)・・
「俳句」2025年1月号(発行:角川文化振興財団/発売:株KADOKAWA)、特集のメインは「豪華競詠/新年詠+エッセイ『小さな変化』」。新春特別即吟句会として坂本宮尾・望月周・和田華凛・生駒大祐・佐藤知春。競詠は70名以上とあるので、ここでは紹介し切れないので、愚生好み?に絞って以下にいくつかの句を挙げておこう。
俳諧の歴史とともに去年今年 星野 椿
一歩二歩三歩四歩に春の風 宇多喜代子
何? という向きの変えかた初雀 池田澄子
獏枕南十字星(はいむるぶし)をもう一度 宮坂静生
初日浴び戦後八十年思ふ 大串 章
我も又初商ひのホ句七句 高橋睦郎
松過ぎのそろりそろりと霊柩車 大木あまり
天網の影が砂丘に冬深む 中村和弘
鱶(ふか)食べてわが一党の去年今年 坪内稔典
シデムシオサムシ冬のものぐさ食ひ尽くせ 行方克巳
綿虫のわが身いづこより出し 西山 睦
大綿や老いて遊びを怠らず 橋本榮治
雀にもタイヤにもあり去年今年 高野ムツオ
かの世よりかからぬものか初電話 西村和子
初夢のみんな遠くの方にゐる 仁平 勝
名刺交換冬のサウナのロッカーで 今井 聖
御鏡や活断層と核弾頭 山下知津子
静けさがだんだん重し日向ぼこ 奥坂まや
枝打や山路は常に行き止まり 中原道夫
めでたいかめでたいかと問ふもののこゑ 正木ゆう子
新しき年また母に賜りぬ 片山由美子
乗初の一駅ごとの人の顔 星野高士
高からぬ山を大和の年移る 対馬康子
人日はも天上の父へ誕生歌 佐怒賀正美
騎初や埴輪の馬の寄り目なる 小澤 實
ひらかれてあり初富士のまそかがみ 恩田侑布子
まなぶたの軽くなりたる笹子かな 石田郷子
初夢がうつつの我をかき乱す 小林貴子
枯芝に寝て息をしてしあはせに 岸本尚毅
若水が呑みどに音をたてて過ぐ 本井 英
白髪の三つ編みよけれ大旦 鳥居真里子
松過の一句が古び雨催 秋尾 敏
地に兵士溢れて斃れ去年今年 渡辺誠一郎
★閑話休題・・筑紫磐井「ユネスコ無形文化遺産登録問題―—大井恒行対現代俳句協会か?」(「俳句四季」2025年1月号「俳壇観測・連載264」より)・・
(前略)ただ有馬氏が急逝してから、状況が変わったようだ。有馬氏の後任の能村会長が令和六年の年頭挨拶で「俳句は定型に季語を入れるルール」と発言するのは慎重を欠いた言葉という感じがする。まるで俳人協会理事長のような発言だからだ。大井氏が危惧するのも故なしとない。国際俳句協会等のHPを見ればわかると言われたが、実際見てみたが大井氏の懸念を払拭できる記述はなかった。協会は、他の言葉ではなく、自らの言葉で会員に説明する必要があろう。(中略)
実は文部科学省は俳句についての統一的見解を従来持っていなかったようである。
俳人協会の公益法人認可に当たっては任意団体の俳人協会が基本規約でかかげていた「伝統」を削除し俳句文芸全般(無季俳句も含まれると解釈される)の発展を目的とすることにさせたから。「俳句」には無季俳句が入っているのだ。(中略)
さらに令和六年度調査は、その仕様書によれば単に文学史等をとりまとめるのではなく、「歴史的変遷において重要視されている事象はもれなく把握すること」「現代における担い手の存在や活動の現状について、主要な団体等は必須とし、可能な限り網羅的に把握すること」とされており、俳句に無季が入っていることを宣言するチャンスとなる。大井氏の危惧を払拭するためにうってつけの場といえる。(中略)
そして、この調査により文部科学省における俳句の基準が定まることとなるのなら、ユネスコ登録よりはるかに重大であろう(この調査結果が是認できるものならばユネスコ登録もあまり問題なく進むだろう)。平成一一年俳人協会は、教科書に取り上げる俳句は有季定型を厳守せよという「教科書出版会社への要請」を俳人協会長名でで送付している。当時、各出版社が抗議している中で現代俳句協会がこれに抗議していないのは何とも不思議に思えた。
とあった。
芽夢野うのき「葉牡丹は戦場ににて渦の海」↑
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