川島由紀子「負けん気と寒気ぶつかるイヤリング」(『アガパンサスの朝』)・・
川島由紀子第二句集『アガパンサスの朝』(朔出版)、帯文は坪内稔典、それには、 秋の窓開けて夕焼けクラブ員 「夕焼けクラブ」があったらボクも入会したい。「川島さん、夕焼けクラブをつくろうか」と言えば彼女はすぐに行動に移るだろう。その行動力が彼女の魅力である。そしてその行動力は、句づくりにおいても発揮されている。この句集の作品の基調をなす多彩な「取り合わせ」がそれだ。 とある。また、著者「あとがき」には、 (前略) 句集名は「新しい朝の雨音アガパンサス」に由来します。アガパンサスは、私が幼い頃住んでいた家の庭に母が植えた花でした。 思えば、私の俳句は詠むときも、また読むときも仲間とともにありました。ある「俳句講座」が閉鎖になった時は、その時のメンバーと俳句グループ「MICOASIA」(講師・坪内稔典)を結成しました。 (中略) 仲間の中で俳句を作り続けることは、自分を客観視することに繋がり、季語(季節)に向き合うことで、自然に心を開いてゆけば、ちっぽけな自分であっても心が広々してきました。 (中略) 国と国との戦争も人と人との諍いも、一向に無くなりそうもない現実にあっても、新しい朝の雨音と共に咲くアガパンサスの希望を、忘れないでいたいと思います。 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておこう。 触れてみるロダンの像と草の芽と 由紀子 蒲の絮射手座の放つ矢を受けて 黒牛の逆三角形冬が来た 啓蟄の少年ひょいと木に登る すいと来て今もすいっとすいっちょ ホントはって言いそうになる林檎剥く 指笛はすすきを分けてきた風だ 疑心ならザボンの皮と刻んだわ 春著着てたっぷり泣かはる笑うわはる 人に臍あんパンに臍獺祭忌 新しく昨日今日明日青木咲く もがり笛小鬼の少女駆けてくる 火の玉の地球に住んで雪の朝 フランスパン長くてあっと秋の虹 川島由紀子(かわしま・ゆきこ) 1952年、東京都生まれ。 撮影・中西ひろ美「冬兆すなどど語りて早起きす」↑