山本純子「くちびるがぷるんきのこが木にぷるん」(『オノマトペ』)・・


  山本純子句集『オノマトペ』(象の森書房)、背に「100句の句集」とある。帯文は坪内稔典、それには、


   秋風を飼うだぶだぶのシャツだから

   新旧の友来て冬瓜がとろん

 「だぶだぶ」が秋風とシャツを、「とろん」が友と冬瓜を結びつけている。

 いた、親和的に同一化している、というべきか。

 H賞受賞のの現代のこの詩人は、オノマトペを介して

 俳句の言葉の生成に立ちあう気鋭の俳人でもある。


とある。また、著者「あとがき」には、


 2020年は特別な年だった。20年あまり参加していた俳句グループ「船団の会」(坪内稔典氏代表、以下ねんてん先生)が、春に散在した。(中略)私は少年詩集を作ることに心を傾けた。どういう場で俳句を作っていくかという課題は、しばらくわきへ置いておくことにした。

 そこへ、ねんてん先生からブログ「窓と窓」へ投句するよう、お誘いをいただいた。2020年度、ひと月に一度、五句を投句した。投句には、選句とも言える、ねんてん先生のコメントがついた。それは、思いがけなく新鮮な体験だった。


 とあった。ともあれ、本集より、愚生好みになるが、いくつかの句を挙げておきたい。


  手帳まっしろ打ち寄せられて水母        純子

  布袋草つつく背びれをもつ午後は

  ハイヒール蜥蜴にUターンされた

  多言語のメニューめくって鍋野菜

  トマト冷え切るかガブリか海見るか

  掃除機のコードがしゅるんナスころん

  風抜けるテントぱちんとオセロです

  うんていはどっちもゴールいわし雲

  セーターが背にひっかかる羽化したか


 山本純子(やまもと・じゅんこ) 1957年、石川県生まれ。



 ★閑話休題・・中田美子「『白生地』の異なる織目冬来る」(「Υ ユプシロンNO,7)・・


 「Υ ユプシロン」(発行 中田美子)は、仲田陽子・中田美子・岡田由季・小林かんな、四名の俳句同人誌、以下に一句ずつのみになるが挙げておきたい。


  なんとなく定員のある焚火かな      仲田陽子

  白椿落下の夢を見続ける         中田美子

  二箇所からおーいと呼ばれ花筵      岡田由季

  足一本どうしても浮く茄子の馬     小林かんな


        撮影・中西ひろ美「懐に熟柿かくして敵を待つ」↑

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