田村葉「火の色を描けぬ指先雪女」(『黄昏通り』)・・
田村葉第二句集『黄昏通り』(東京四季出版)、帯文は河村正浩、それには、
立春のわだち過ぎ行く夜の耳
常に静謐な眼差しで対象や事象の奥を見つめ、何の衒いもなく作者の心を主観的或いは客観的に捉えている。
つまり、対象や事象に対する自己の意識によって触発された作者の詩的内面に触れて詠まれている。
とあり、著者「あとがき」には、
二〇二四年一月、山口市は「ニューヨーク・タイムズ」紙の「2024年に行くべき52ヵ所」中、〈3番目〉に選ばれて大いに活気を帯びている。(中略)
「山彦」に参加して十二年が経過する。
リアリズム派の河村正浩主宰の下で、自身の俳句を見直す機会にも恵まれた。
穴井太「天籟通信」元代表の「形は後から付いて来る」の助言通り、俳句形式の中で自由に呼吸し、自己表現する術(すべ)を認識できるのも、継続の恩寵かと思われる。
とあった。愚生は、高校を卒業するまでのほぼ18年を山口で過ごした。いわば「これが私の故里ださやかに風も・・・」である。ともあれ、愚生好みに偏するが、本集より、いくつかの句を挙げておこう。
饒舌な鳥から消ゆる桜雨 葉
鳥帰るあと一分の別れより
白粉花使わぬ闇を引き寄せて
一声は人の声らし初鴉
憤怒する蟬は大地に裏返り
ピエロにもなりぬ花野のど真ん中
朧夜やいちにち減らぬ鬼の数
ほうたるの後を追うから水になる
昼夜と疼く八月被爆の木
銀杏散る次の頁は猫の街
戦争を知らぬ木の芽にコロナの禍
向日葵のための空色雲の色
田村葉(たむら・よう) 1945年、山口県生まれ。
撮影・中西ひろ美「諦めて冬野にむかう列車かな」↑
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