江良純雄「改札にマフラー無人駅暮れる」(第64回「ことごと句会」)・・


  昨日、11月25日(月)は、通常の第三土曜日ではなく、変則日開催の第64回「ことごと句会」だった。兼題は「無」。以下に一人一句を挙げておこう。


  濁酒汲めば本音が透きとほる        石原友夫

  日記果つ捨てるに惜しき日々のあり     村上直樹

  ななかまど三人寄れば謀反談       杉本青三郎

  小春日の言葉に艶のある御仁        渡邉樹音

  折鶴をひらく 無情を知る夜長       武藤 幹

  それはそれ月の裏側良夜かな        金田一剛 

  色あせてペンキ二度塗り文化の日      杦森松一

  核抑止力ノ有効無効寒演習         林ひとみ

  11/12月と薄さに揺れる暦       照井三余

  転がりて集いて落ち葉の私語密か      渡辺信子

  始末書の埋火風に飢えている        江良純雄

  虚空より兵降りくるや無影灯        大井恒行


次回は、これまた変則開催の12月22日(日)、新宿・大久保地域センター。



★閑話休題・・末森英機「君も階段(きざはし)なれば宜(むべ)なるや月も穂も巷の子」(詩集『巷(ちまた)の童子(こ)』・龜鳴屋)・・


 ナマステ楽団の“唄う狂犬“こと末森英機が詩の狩人・天使犬となっての詩集『巷(ちまた)の童子(こ)』(龜鳴屋・限定499部番号入り・2000円)を上梓した。装画・挿絵は鈴木翁二。各冊手作り本、文庫本より更に一回り小さい。「妻へ」の献辞がある。短い詩篇2篇を挙げておきたい。


 ふじゆうなからだで歌いにいって

 もっとふじゆうなからだで帰ってくる

 喜んでがまんをして聞いてくれることを

 がまんする愚かものになりたい

 雲母のようにどこまでもはがれていって

 この世の果てに桃ひとつ植えて

 骨をもくぐってゆく

 おおいなるうべなるかな

 妻のむべなるかな


 言葉に烟(けぶ)って行意義の悪い鴉の子はお伽の巷童子(ちまたのこ) 


 末森英機(すえもり・ひでき) 1955年生まれ。『光の楔、音の礫』(港の人・2016年刊)以来、11冊めの詩集。



         芽夢野うのき「天泣きやいまわの鳥を覗き込む」↑

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