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6月, 2024の投稿を表示しています

山﨑十生「諡に相応しき香水を探す」(「現代俳句」7月号)・・

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 「現代俳句」7月号(現代俳句協会)、巻頭エッセイに相当する「直線曲線」は、渡辺和弘「 師系の思いー桂信子の起筆の頃ー 」。対談に星野高士・筑紫磐井「 花鳥諷詠と前衛ー三協会統合の可能性(上) 」。その「次号に続く」の直前の対談には、   筑紫:〈蠅とんでくるや箪笥の角よけて〉の杞陽もそう。要は「客観写生」「花鳥諷詠」は」はよくわからない。  星野:結局は、何十年たってもよくわからない。(笑)  筑紫:そこから次のものが出てくるんさら何だっていい。花鳥諷詠は政治的思惑で生まれたと言いましたが、虚子は意図せず、大きな金脈を掘り出したのではないか。「造型俳句」死守、「花鳥諷詠」死守だけでなく、それがどんな俳句の創造に寄与するかだと。  星野:上田五千石さんが「眼前直角」っていうのをよく言ってましたが、以後何も出てこない。虚子の場合は唯一、最後の方に「極楽の文学」っていうのがある。「俳句は極楽の文学だだ」と言っちゃったという。あれがまたちょっと謎なんです。全然極楽じゃないでしょうと。やってることが極楽ということだけど、作った上の極楽というのが果たしてあるのか。疑念をもってやっている次第です。  とあった。他に、水野星闇「 わが俳句事始めと職場句会 」。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句をあげておこう。   祈るときプルシャンブル―の蝶来る       山中葛子    夏空に艸 (くさ) 在る不安頒ち合ふ       武良竜彦   手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)     穂村 弘      おろおろと人間である原爆忌          高木一惠    香水に箝口令を命ぜらる            山﨑十生    蚕豆のなかでひらがな孵りけり         林ひとみ    金魚玉から出た後が解らない          伊藤 進    風よりも光で動く春ショール          水越晴子    B面へカチャリと替わり卒業す         遠藤寛子    美しき盗賊エリカ満つる夜を          藤 雪陽    かたつむりは飛べるよ傘はささないよ      土井探花       撮影・中西ひろ美「水無月や私が花に見えますか」↑

渡邉樹音「自由への夏野まで飛ぶ熱気球」(「瓏玲」第20号)・・

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 「瓏玲」5周年・第20号(瓏玲俳句会)、特集は、戸川晟句集『それから先は』・中内火星句集『シュルレアリスム』出版祝賀会報告。表4に、今野龍二抄出の各三句が掲載されている。    海を見ていた帰り道はもういない      中内火星    晩秋の人の写っていない写真         〃    盥の水を捨ててから盥を捨てる        〃    トマト捥ぐ君の心を捥ぐように       戸川 晟    故郷それから先は熟し柿           〃    黄落やもうすぐ私ごみになる         〃  ちなみに「5周年記念俳句大会」の最高点句は、    余生なお余白いっぱい花は葉に       武悠紀子    平服でおいで下さい春の山         青木栄子  ともあれ、本号より、いくつかの句を以下に挙げておこう。    子を呼べば三途河原の風車         今野龍二   とにかく一度死のうそれから生ビール    中内火星    春になる笑い上戸の君になる        戸川 晟    原罪を背負へるごとく蝸牛       長谷川はるか    宇宙樹や天へはばたく若楓         山﨑百花   花ふふむどんどんふふむ明日は晴れ     蟇目俊行    蝌蚪に足行きたい場所に行く覚悟      渡邉樹音    額縁で芝居は出来ぬ紅テント        宮川 夏    逝く春や涙黒子を取りました        石田 香    「満席です」と三途の川の花見舟      武悠紀子   照れも良しおやじバンドの青き汗     宮澤みち子    朝食はバタートースト百千鳥        江藤和美    木洩れ日と擦れてさざめく白絣      豊島月舟斎        撮影・鈴木純一「はまなしや無頼の歌をうそぶいて」↑

小川軽舟「勾玉を胸乳(むなち)に垂らす穀雨かな」(「鷹」7月号・60周年記念号)・・

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 「鷹」令和6年7月号・60周年記念号(鷹俳句会)、「鷹60周年記念対談」は水原紫苑・小川軽舟「師と生きる」。本号の全体の基調は「 俳人が第一句集を受け止めて成熟していくかをテーマに据えた 」(髙柳克弘)とある。従って、小川軽舟第一句集『近所』と奥坂まや第一句集『列柱』は、ほぼ全句が採録されている。編集後記に小川軽舟は、 (前略) 主宰を務めたのは、藤田湘子が平成十七年までの四十一年、私がその後の十九年である。 (中略) 私のサラリーマンと俳人の二重生活も新幹線のおかげで成り立っている。  「鷹」も新幹線のように、進化を続けながら、丈夫で長持ちする結社でありたい。時代が俳句結社に求めるものをしっかり担っていきたいと思う。  と記している。まず、対談の中でお互いが示された作品を三作品ずつ挙げておこう。   ヴェトナムの少年とおもはれし愉しさやセーヌ左岸に着物探すに    水原紫苑   ふらんすの身體に泌むカトリックふれなむとして黄なるてのひら     〃   革ジャンパー椅子に掛けつつ失ふもの無きわれとなる鐘の音ひびく    〃    人の顔みな百合めきぬ終電車           小川軽舟   水彩に下書の透く五月かな             〃   空映す広さが湖水ほととぎす            〃  また、60周年記念座談会は、高野ムツオ・今井聖・鴇田智哉・奥坂まや「私にとっての第一句集」。各人が第一句集をめぐる思い出、師とのエピソードなどを交えて、本音が語られ、興味深かった。ともあれ、本号より、以下にいくつかの句を挙げておきたい。    湘子忌や咲くも芽咲くも挙るもの      布施伊夜子    ポプラ並木の高空の鷹矢の如し       細谷ふみを    まなぶたを閉ぢても大河夏の蝶        岩永佐保   大木の古巣や真夜は星宿る          奥坂まや   蜥蜴の尾切れて浮き浮きしてゐたる      加藤静夫    町騒に潮騒恋ふる五月かな          永島靖子    独裁の国の玩具屋春の星           髙柳克弘    国分寺址たんぽぽは丈なさず        大石香代子    海市より戻りて靴を洗ひけり         辻内京子    反橋の向かう落花に透る母          竹岡一郎    根は地下の冥より知らず五月の...

田村明通「短夜の既読はいまだ付かぬまま」(第174回「吾亦紅句会」)・・

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   本日、6月28日(金)は第174回「吾亦紅句会」(於:立川市高松学習館)だった。兼題は「短夜」。以下に一人一句を挙げておこう。    滴りや「如己 (にょこ) 愛人」の永井(隆)の忌   齋木和俊   短夜や一日 (ひとひ) 命のガザの民         須崎武尚    暮れてなお浮き立つ白き半夏生          井上千鶴子    夏野駆け風にまかせてブーメラン          村上さら    数独の難易度高き明け易き            折原ミチ子   短日や自販機補充の音ひびく            佐藤幸子    聞かせてよきみの初恋さくらんぼ          関根幸子    竜宮の水母の骨に気を付けて            田村明通      参道の竹ぼうきの音明易し             西村文子    紫陽花や雨にも負けず花盛り           佐々木賢二    待ってました僕の出番と蚊遣豚           武田道代    横顔は好みではなし桜桃忌             牟田英子   紫陽花や父母も姉妹も居たあの日          笠井節子    かたつむり除けて掃除の墓参り           奥村和子    亀吉と名づけし亀の脱走す             渡邉弘子    短夜や目ざめし朝にアサガオが           高橋 昭    短夜の潮騒遠き水の星               大井恒行  次回は、7月26日(金)、兼題は、「打水(うちみず)」。 ★閑話休題・・佐藤幸子「ここまでと己に課して耕せり」(現代俳句協会主催「図書館俳句ポスト」3月結果・佳作・・  吾亦紅句会から、三月の兼題「耕(たがやし)」に二名の方が、佳作と入選に入っていた。選者は太田うさぎ・岡田由季・寺澤一雄。もう一人の入選句は。  畑を打つ茣蓙にラジオとお弁当       西村文子 だった。       撮影・中西ひろ美「煙の木知らない家にまねかれて」↑

夏木久「不均等に昼夜を分かつ喜劇かな」(『風詩夏伝・巻一/ベルヌーイの飛翔ーYou can fly anytime anywhere.』)・・

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  夏木久句集『風詩夏伝・巻一/ベルヌーイの飛翔ーYou can fly anytime anywhere.』・『風詩夏伝巻二/時の流体力学ー柿本朝臣人麻呂の秘策』(文彩堂出版)、奥付を見ると、巻二が2024年6月23日、巻一が9月8日となっていて、巻二が先行している。ただ同時に届いているので、作者自身の何らかの思い入れのある日付となっているのであろう。装幀は姉妹版なれど、巻一と寒二では全く趣向も違うし、句のスタイルも違う。この人の才気を思わせる。「あとがき」らしいものはあるが、巻二に「〈あとがき〉に代えて」で、多行表記の句が三句掲載されているのみである。そのうちの一句は、    月光は      一度        水底   翔ぶための  である。各章立てなども作者の志向に貫かれていて、愚生には、紹介しきれない。興味のある方は、是非、本書に当たられたい。定価も税込み一冊1320円、合計2640円とお買い得感あり。ともあれ、まず、巻一から、いくつかの句を挙げておこう。    飛翔する機影に微笑ベルヌーイ        久    空蝉へ“You can fry“と返信す          彷徨へば花は筏を組む始末   国境なき蒲公英を踏む軍靴   出し抜いた春一番にある苦渋   絨毯に乗って手を振る冬銀河   秋口に死後が尋ねて来てをりぬ   モナリザを額に監禁して夜遊び   人類は地球に謹慎してFIre      寒月光 枯山水の曲水へ   箪笥より明日の影を出しておく   金箔や辛苦の染みは剥落し      そして、巻二は、   巻三雑歌(巻三以降・何某天皇の代の記載なし)  古人k朝臣、羇旅の歌八首の一つとして「天離 夷之長道従 恋来者 自明門倭嶋所見(三・255)詠じ、現人Q「春灯し生けるともなし死せるともなし」と、〈水底の歌〉を三度読みつつ句業    ひさかたの    あめより    こよひ    あめふらし  *天離る長道ゆ恋ひ来れば明石の門より大和島見ゆ(三・255)        「古人K朝臣」も「現人Q」も、仮構された自身の「久」であろう。ここでは、「 *砂*漠*酒*場*組*曲*Ⅱ* 」の章の「 砂漠のバーに入り浸るー1・Bar〈ゴビ〉 」から巻頭の句と巻尾の句を挙げておこう。   其処からは闇を予感の花筏   明星に馬車...

マブソン青眼「AIに五七三無し清夜」(『縄文大河』)・・

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 マブソン青眼句集『縄文大河/Chuma nai』(本阿弥書店)、帯の惹句に、   アニミズム俳句の三部作完結  「五七三」のリズムに乗せて/“命の螺旋“を詠う     石組炉地球ひとつのかたち  千曲川流域の縄文文化へタイムスリップ とあり、著者「あとがき/五七三、アニミズムのリズム」には、   突然「五七三」という韻律に出合ったのは、二〇二三年二月十七日の正午頃である。朝から寒晴れだった。北信濃の千曲川(旧称「ちうま」)と犀川の合流点近く、長野市若穂町の宮崎縄文遺跡の向かい辺り、広く涸れている洲がある。そこのたいらな白石を選んで仰向けになって寝てみた。すると一つしかない白雲 (はくうん) より大鷺 (だいさぎ) が降りて来た。   白雲より大鷺降りて 無音 “凄まじい歓び“だった。原始の世界へタイムスリップしたかのような、無垢なる宇宙を垣間見たような……。「無垢句」という言葉は自然に口から出た。 (中略)  とくに目に止まったのはなぜか、    秋風の石が子を産む話し(七五三)という、“難解にして可愛らしい珍句“。 (中略)  放哉の筆によって仏教の格言が「アニミズムの無垢句」に生まれ変わり、同時に五七五の周期的な(輪廻転生の)リズムが五七三の螺旋的な(縄文的な?)時間意識に変わったのではないか。 (中略)  これで、五年にわたる「海のアニマ」(南太平洋の人魚)・「空のアニマ」(ヨーロッパの妖精)・「石のアニマ」(縄文のビーナス)の三部作が完結する。  とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておこう。    稲妻に土偶叫ぶか笑むか        青眼(せいがん)    抜歯され凍月仰ぐ吾 (いじん)    〈揚げ雲雀自由いびついびつ 佐怒賀正美〉    家の鍵ポケットから落ちヒバリ   飛ぶ鷹のことば無き詩を仰ぐ   岩に座し億万の日の余熱   川波や月型蛇型無形     「千曲」の語源をアイヌ語族の「Chu’kma」(鮭のいる処)とする説がある。   鮭ゆるゆる遡上いきなり火焔 (ほのお)   蛇は穴に 文字無き民の平和   土器に死児 (こ) の足形や天高し   軍用ヘリ千曲川 (ちうま) の秋千切る   河川敷「国有地」とて吹雪く   火炎土器のなかは冥土の無月   雪五尺あり火焔あり一村      「翁曰く」  「発句...

山本潔「花ゆうな少年の読む平和の詩」(『草莱』)・・

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 山本潔第二句集『草莱』(東京四季出版)、その「あとがき」に、   『草莱』は『艸』に続く私の第二句集である。二〇二〇年春から二三年冬までの三三五句を収めた。新型コロナウイルスの出現で世界が混迷を深めた時期と重なるが、俳句を休もうと思ったことは一度もなかった。非日常的な暮らしを強いられるなかにあっても、むしろ俳句は生きる力になってくれると信じていた。 (中略)  句集名は「艸」主宰雑詠欄の「草莱抄」にちなんで名付けた。「草莱」とは、草原、草叢のほか、未開の地という意味がある。混沌とした時代―—世界は常にそういうものかもしれないが―ーにあって、俳句は己のなかにある詩的感覚やことばの未開の領域を開いてくれるものだと感じている。庭の草叢も手をかければ美しい花が咲き、樹木が育てばいつしか鳥もやってくる。これからも「草莱を開く」気持ちを失わずに俳句と向き合ってゆきたい。  とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい。    マスクしてマスクを探す青鮫忌         潔    夏草やアンリ・ルソーに謎多し   地球から銀河の外へ絵双六   魂は一人にひとつ寒卵   なに着ようかしら憲法記念の日   熱々のナンをカレーに敗戦日   十二月八日ガラスのスヌーピー      母永眠   数へ日を数へず独り逝きたまふ   北斎の星は動かず冬の山   天国と地獄のほかに梅の里   廻廊の水かげろふを抜けて春   うさぎやのどらやき買ひに菊日和   今生を浮いて沈んで雪ぼたる     山本潔(やまもと・きよし) 1960年、埼玉県秩父市生まれ。    ★閑話休題・・「大井恒行句集『水月伝』/厳しい現実を透視する視座」(6月21日「長周新聞」第9131号)・・  「長周新聞」6月21日(金)、第9131号(長周新聞社)の4面書評欄に「大井恒行句集『水月伝』/厳しい現実を透徹する視座」が掲載された。しかも、これまでの他の新聞では見られなかった的確な評をしていただいた。深謝!それには、    東京空襲アフガン廃墟ニューヨーク 句集冒頭のこの一句が、、この俳人の現代に向き合う精神を象徴しているようだ。ニューヨークの同時多発テロ事件を機に、世界史は恐慌と戦争、広がる格差と抵抗の激動をはらんで進んだ。国内では東日本大震災と福島原発事故。さらにコロナ禍が被...

宮本佳世乃「うぐひすの窓をひらいてキーボード」(「かばん」6月号より)・・

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 「かばん」6月号・通巻483号(発行人 井辻朱美/編集人 高村七子)、本号の特集は睦月都歌集『Dance with the invisibles』(角川書店)と岡田美幸(屋上エデン)歌集『グロリオサの祈り』 (コールサック社)。それぞれ、読みどころ満載である。各自選歌より二首ずつ挙げておこう。  春の二階ダンスホールに集ひきて風をもてあますレズビアンたち    睦月都   やさしいと言はれて私に優しさはあなたのためにあるのではないのに   〃   手にすればこわれやすくてあいらしいクロワッサンはみかづきの舟   屋上エデン   たい焼きの型にはまった笑顔でも誰かをきっと笑顔にできる       〃  中に、「俳句で返句」というのもあったので、  ひとつでも汚い花火はないかなと見つめていたが不発も綺麗     屋上エデン     [返]   空を弾 (はじ) く音を探せば遠花火         久真八志   ともあれ、アトランダムになるが、本誌本号より、以下にいくつかの歌を挙げておきたい。   人からは掴みどころがない人と思われたいから変化している    小鳥遊さえ   待ち合わせなんかしてないこの場所で日没を見る、暗くなるまで   田中真司   コロナ前に女児誕生を祝ったが…遇えば、早くも可愛い4才     久保 明   知り合ひは一人も居らぬ名簿ゆゑ暗号表としても使へる       松澤もる   人類は気づかないこの星がすでに姿を消していること        前田 宏   身も世もなくわらっているのだ桜たち分かち書きするサインコサイン                                 井辻朱美  春風に桜が散れば浅草の街は祭へ一歩踏み出す           大黒千加  許されずなきものにして蓋をした 応えよと今名前呼ばれる     榎田純子  針を忌み庭の夜薔薇の紅を吸い息さえふかく生に震えて       河野 瑶  2本あるハサミが嫉妬しないよう互い違いに使ってる     たけしたまさこ    最愛の娘を喜ばすために林檎売りから林檎を買った         沢 茱萸  桜さくら桜はなびら踊りながらコメントのこしさよならをする   ユノこずえ   気づいたらアスファルトからはえていた生まれた場所が死に場所でした                  ...

野村東央留「日本の狂いはじめる烏瓜」(『戦後75周年記念文集・次世代に語り継ぐ戦争体験』より)・・

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  富士見市ピースフェスティバル実行委員会・富士見市教育委員会『戦後75周年記念文集/次世代に語り継ぐ戦争体験』。巻末に添えられた「鶴瀬公民館をメインとしたピースフェスティバルのあゆみ」には、第一回目が1987(昭和62)年に開催され、その前年の国際平和年(1986年)には、「平和の夕べ」「平和コンサート」「平和と芸能のつどい」を開催したと、長年にわたる活動が記録されている。  ブログタイトルにした句「 日本の狂いはじめる烏瓜 」の作者・野村東央留は、俳誌「門」にあって主宰・鈴木鷹夫、鈴木節子、鳥居真里子の「門」の三代を支えてきた重鎮のお一人である。陶芸家でもある。その彼の戦争体験は、今号の「 学童疎開と朝鮮から引き揚げてくるまで 」にで語られている(愚生注:3年前・2021年、野村東央留85歳)。その敗戦直後のこと、 (前略)そ の最終列車に乗り遅れたら、身の安全がなかったと後で聞かされた。父は会社の残務整理で数人の日本人社員と残る。数日後にはソ連軍が進駐して来たという。父達はシベリアに抑留される途中、貨物列車から数人の仲間と脱走し、昼間は草むらに隠れ夜は闇にまぎれながら三十八度線を数日かけて越えて逃れたという。  父を残し私達は十月の中旬に仁川港から貨物船(ダルマ船)に乗った。船底は引き揚げの者の家族でぎゅうぎゅう詰であった。母は十二月に生まれる予定の児を身籠る中で、私達兄弟を必死に守ってくれた。日本のどの港に上陸したかの記憶はないが、上陸後にDDTの白い粉を頭から浴びた事は、今でもはっきり覚えている。 (中略)   この終戦直前の一年間の私の体験から、戦争の恐ろしさがトラウマになって今を生きている。再びあの様な体験がおきないよう祈るのみである。  とあった。ともあれ、本誌に収められた短歌・俳句作品の中から、いくつかを紹介しておきたい。   戦死せし父の代わりに叔父ちゃんを「とうちゃんと呼べ」幼なは反抗   秋山幸子   届かないB29への高射砲父の語りし小松川陣地             岡田栄子   シベリアの抑留死者名読む活動一人四秒三日掛りの           金井和光   フェスティバルピースと伺い盛りあげた彼 (あ) の人この人鬼籍に入りぬ  佐藤マサ代   乳児にて引き揚げ者の惨強いられし吾平和を甘受し七十五才       福留紘子   父母は戦...

築網臥年「月に眠る身はうつくしき廃墟なす」(「Picnic」No.12より)・・

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   「Picnic 」No. 12(TARO冠者)、その巻頭エッセイ、鈴木茂雄「5・7・5を企む『Picnic』」に、  俳句を読むとき、そこになにが書いてあるかということより、いかに書いてあるかということに、わたしは注視する。俳句にかぎっていうと、そこに書かれたものが意味することより、書かれた俳句のしくみの方を重視する。十七文字の一語一語に創作のヒント、読解の手がかりがあると思うからである。  とあった。ともあれ、以下に一人一句を挙げておこう。   ほな、羽を叩きつけたらええんやね       榊 陽子    はにかんだ浦島太郎に花吹雪          妹尾 凛   推定無題村人はみな同じ顔           月波与生    樹の下にあしたを置いてくるママン       松井康子    ひぐれからふりおとされるひえらるひ    あみこうへい    ちりぬると水の括りのひとしずく       木下真理子    表札屋横入ル和泉式部の忌           波田野令    万緑や笑い過ぎでは痩せなくて         岡村知昭    鶏が汚れてすまう春の暮            梶 真久    良心の呵責に焦げてゆくスルメ          叶 裕    妻からは和尚と呼ばれ新茶汲む        木村オサム    あやふやなボタンを押すと芽吹きけり      鈴木茂雄    大胆な腰のリズムに桜散る           野間幸恵                                                乾佐伎↑               乾佐伎の父・夏石番矢矢↑                   母・鎌倉佐弓↑ ★閑話休題・・乾佐伎第二句集『シーラカンスの砂時計』出版祝賀会(於:アルカディア市ヶ谷)・・                発起人・久々湊盈子↑                 発起人・内藤明                発起人司会・田村雅之↑                   神野紗希↑      ...

橋本夢道「みつまめをギリシャの神は知らざりき」(『橋本夢道物語』より)・・

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 殿岡駿星『橋本夢道物語/妻よおまえはなぜこんなに可愛いんだろうね』(勝どき書房)、 著者「あとがき」に、 「 殿岡くん、浩佳は君をたよりにしているようだから、よろしくお願いしますよ」 わたしが次女浩佳と交際を始めた学生時代に、月島の自宅に電話すると、夢道はいつもやさしい声でそういってくれた。 (中略) 昭和四十五年(一九七〇年)十月に浩佳と結婚し、披露宴は、かつて夢道が創業に参画した「月ヶ瀬」の伊藤佐太郎社長が経営する銀座五丁目のレストラン「コックドール」で開いてもらった。 (中略)   夢道の俳句人生は、静子の支えがあったからこそといえる。夢道はわたしに、 「世の中に偶然というものはない。すべて必然ですよ」 といった。 「静子と僕が出会ったのも、多くの俳人や友人たちと出会ったのも、人生に偶然なんてものはない。全部必然ですよ。運命とは出会い、こうして君と僕が呑んでいるのも、必然なんですよ。偶然なんてどこにもありません、とんでもないですよ」  といった。わたしが夢道物語を書いていることも、必然だったことになるのだろう。夢道は、わたしがこの物語を書くことを予感してくれていたかもしれない。  とあった。そして、夢道の日記には、     一九二八年七月十日  俳句のこと/句をみてこれは巧いと讃められることよりか、  私は句を見てこれがこの人なのかと思われることが何よりうれしいのだ  私は俳句に巧みにはなりたくない  私は私とという人間の俳句を作り出したい  何時もそのことを思いねがってはいるが、それがなかなかむつかしいことなのだ   とある。ともあれ、本書より夢道の句のみなるが、いくつかをあげておこう。   僕を恋う人がいて雪に喇叭が遠く吹かるる      夢道   せつなくて畳におちる女のなみだを叱るまい   恋のなやみもちメーデーの赤旗を見まもる   泣くまいたばこを一本吸う   死顔に逢う私に逢いたかった弟だったのです   おさえがたい震える脚をたてていまとなった馘首をじっとからだで聴いていた   寝ても無職、起きても無職のからだに風がきて吹く   恨むまいとすれどこの心癒しがたしむねにひろがる赤い火を見る   大戦起るこの日のために獄をたまわる   うごけば寒い   蜜柑一つ食べて元日の夜が獄に来る   みんな戦争のからだを洗って春夜   からだはうちわで...

濱筆治「アリ地獄ガザに民アリ民に国なし」(第30回「きすげ句会」)・・

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  本日、6月20日(木)午後1時半~は、第30回「きすげ句会」(於:府中市中央文化センター)だった。兼題は「雨」。以下に一人一句を挙げておこう。    深緑の投網曳きたる八ヶ岳 (やつ) の峰    高野芳一    さくらんぼ一粒ずつに夏が来た        井上芳子    狐雨の秘め事もあり白絣           井上治男    ケニーGのサックス物憂き梅雨のカフェ    山川桂子    ラブシーン邪魔な雨降るスクリーン      清水正之    不揃いの雨の雫や桜桃忌           濱 筆治    卵とじ負けてたまるか大暑かな        杦森松一    吹っとんでしがみつきたり初とんぼ      寺地千穂    極辛のカレーにらっきょう夏に入る     久保田和代    亡き民とわが民乗せて飛ぶ螢         大井恒行  次回は、7月18日(木)、府中市生涯学習センターに於いて、兼題は「雲」一句+雑詠2句持ち寄り。  ★閑話休題・・森澤程「立浪草夢とは知らず摘んでおり」(「~ちょっと立ちどまって~2024.4~」)・・  「ちょっと立ちどまって」は津髙里永子と森澤程の一か月に一度の葉書便り。    ダービーが近づく階段駆け上がる     津髙里永子    蛇見たり急いでみたり明日香村       森澤 程        撮影・芽夢野うのき「丸くて白くてこころはどこ紫陽花白し」↑