山﨑十生「諡に相応しき香水を探す」(「現代俳句」7月号)・・


 「現代俳句」7月号(現代俳句協会)、巻頭エッセイに相当する「直線曲線」は、渡辺和弘「師系の思いー桂信子の起筆の頃ー」。対談に星野高士・筑紫磐井「花鳥諷詠と前衛ー三協会統合の可能性(上)」。その「次号に続く」の直前の対談には、


 筑紫:〈蠅とんでくるや箪笥の角よけて〉の杞陽もそう。要は「客観写生」「花鳥諷詠」は」はよくわからない。

 星野:結局は、何十年たってもよくわからない。(笑)

 筑紫:そこから次のものが出てくるんさら何だっていい。花鳥諷詠は政治的思惑で生まれたと言いましたが、虚子は意図せず、大きな金脈を掘り出したのではないか。「造型俳句」死守、「花鳥諷詠」死守だけでなく、それがどんな俳句の創造に寄与するかだと。

 星野:上田五千石さんが「眼前直角」っていうのをよく言ってましたが、以後何も出てこない。虚子の場合は唯一、最後の方に「極楽の文学」っていうのがある。「俳句は極楽の文学だだ」と言っちゃったという。あれがまたちょっと謎なんです。全然極楽じゃないでしょうと。やってることが極楽ということだけど、作った上の極楽というのが果たしてあるのか。疑念をもってやっている次第です。


 とあった。他に、水野星闇「わが俳句事始めと職場句会」。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句をあげておこう。


  祈るときプルシャンブル―の蝶来る      山中葛子

  夏空に艸(くさ)在る不安頒ち合ふ      武良竜彦

  手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)    穂村 弘  

  おろおろと人間である原爆忌         高木一惠

  香水に箝口令を命ぜらる           山﨑十生

  蚕豆のなかでひらがな孵りけり        林ひとみ

  金魚玉から出た後が解らない         伊藤 進

  風よりも光で動く春ショール         水越晴子

  B面へカチャリと替わり卒業す        遠藤寛子

  美しき盗賊エリカ満つる夜を         藤 雪陽

  かたつむりは飛べるよ傘はささないよ     土井探花



      撮影・中西ひろ美「水無月や私が花に見えますか」↑

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