渡邉樹音「自由への夏野まで飛ぶ熱気球」(「瓏玲」第20号)・・


 「瓏玲」5周年・第20号(瓏玲俳句会)、特集は、戸川晟句集『それから先は』・中内火星句集『シュルレアリスム』出版祝賀会報告。表4に、今野龍二抄出の各三句が掲載されている。


  海を見ていた帰り道はもういない     中内火星

  晩秋の人の写っていない写真        〃

  盥の水を捨ててから盥を捨てる       〃

  トマト捥ぐ君の心を捥ぐように      戸川 晟

  故郷それから先は熟し柿          〃

  黄落やもうすぐ私ごみになる        〃


 ちなみに「5周年記念俳句大会」の最高点句は、


  余生なお余白いっぱい花は葉に      武悠紀子

  平服でおいで下さい春の山        青木栄子


 ともあれ、本号より、いくつかの句を以下に挙げておこう。


  子を呼べば三途河原の風車        今野龍二

  とにかく一度死のうそれから生ビール   中内火星

  春になる笑い上戸の君になる       戸川 晟

  原罪を背負へるごとく蝸牛      長谷川はるか

  宇宙樹や天へはばたく若楓        山﨑百花

  花ふふむどんどんふふむ明日は晴れ    蟇目俊行

  蝌蚪に足行きたい場所に行く覚悟     渡邉樹音

  額縁で芝居は出来ぬ紅テント       宮川 夏

  逝く春や涙黒子を取りました       石田 香

  「満席です」と三途の川の花見舟     武悠紀子

  照れも良しおやじバンドの青き汗    宮澤みち子

  朝食はバタートースト百千鳥       江藤和美

  木洩れ日と擦れてさざめく白絣     豊島月舟斎  



     撮影・鈴木純一「はまなしや無頼の歌をうそぶいて」↑

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