江中真弓「常闇の宇宙月の出地球の出」(『歴日』)・・
江中真弓第五句集『歴日』(角川書店)、著者「あとがき」に、
『歴日』は、『六根』につづく私の第五句集である。二〇二〇年から二〇二五年までの六年間の作品三五三句を収めた。
前半の三年間は、コロナ禍による厳しい行動制限で、旅はもとより人に会うこともできない閉塞した日々であった。そんな中で、長年苦楽を共にした夫を失った。動揺、不安、悲しみ……感情を抑えきれず夢中で過ごした時期であり、心ならずも暗く始まる句集になった。
孤独と寂しさに耐える中で、支えとなったのはやはり俳句であった。とりわけ、楸邨先生の声に耳を傾けながら、俳句を通して作者一人一人の人格と繋がることができた「暖響」誌での選句には、前を向く力をいただいた。(中略)
日記を書くように、暮らしや身近な自然から感じたあれこれを十七音に託して長い歳月を過してきた。歩みの遅々たるを思わざるを得ないが、どの一日も自分にとってはかけがえがない。句集名を「歴日」とした。
これから先、何に出会えるのか、何がみえてくるのか。遠くがるかなものを心に、自分なりの道をもう少し歩いてゆきたいと思っている。
とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。
願かけの身をつらぬける寒清水 真弓
寒明けや足より生えて人の影
悼・加藤瑠璃子氏
みんなゐて満月の鯉見をらんや
我を呼ぶ小さき鳥ゐるそこに春
しやぼん玉空へ出でゆき帰らざる
ほうと仰ぐ楸邨のこゑ桐の花
人に生まれゴリラに生まれ露けしや
青胡桃からだの芯を風とほる
木の葉ふる誰彼とゐて独り
満天の星ふるやうに木の芽かな
下車したしこの春の野のまん中に
ひばり揚がれはるかなるもの見ゆるまで
青天へ栃は祈りの花かかぐ
青くるみ大きな風が見せてゆ
江中真弓(えなか・まゆみ) 1941年、埼玉県生まれ。
撮影・中西ひろ美「秋景やポストの口を冬へ向け」↑

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