中田尚子「蕎麦の花騒めいてゐる闇夜かな」(『そらのみつ』)・・
中田尚子第三句集『そらにみつ』(本阿弥書店)、著者「あとがき」に、
「そらにみつ」は、やまとに掛かる枕詞である。
奈良は好きな地だ。昨年は、山辺の道を歩き、修二会の闇に立った。吉野の桜を仰ぎ、初瀬の蛍を追った。奈良はいつも、訪れる者を静かに迎えてくれる。奈良へ憧れをこめて第三句集の名を『そらみつ』とした。第二句集『一声』以降二〇一八年末から二〇二六年三月までの三一三句を収めた。
四人で始めた「絵空」は、この秋で十五年となる。共通の場を大事にしながら、それぞれが自由に活動してきた。さらさらした風の通る空間は、適度な緊張と解放を生んでくれる。月一度の句会と季節ごとの一泊吟行を軸に、今後もこの歩みを続けたいと思う。
とあった。ともあれ、以下に、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。
肩の手の離れてゆきぬ蜃気楼 尚子
新涼や矢を抜いてゆく的から的
枯蓮の力尽くしてゐるところ
本流に差しかかりたる雛の舟
人形の振袖の鶴花の冷
白菜の乗つて庭石畏まる
看板のしの字おそろし山鯨
秋深し模型の鮫の歯のほんたう
富岡町夜の森
避難指示解除七日目緑立つ
青芒罰のごとくに指切つて
冷やかや針穴嫌ふ木綿糸
客去つてよりの賑はひ冬座敷
中田尚子(なかた・なおこ) 1956年、東京生まれ。
★閑話休題・・宮下正夫「盆踊り指の先から輪に入る」(月刊「ひかり」10月号・創刊八百号「西山俳壇」)・・
月刊「ひかり」10月号・創刊八百号/選者・城貴代美「西山俳壇」(西山浄土宗総本山光明寺護持会)、その「編集室」に、
本紙が八百号を迎えた。「西山だより」から始まり、「ひかり」に改称して六十六年間続いてきた。八百号の発刊を迎えられたのは、全国の護持会会員さま、多くの読者の皆さまのおかげである。
とあった。ともあれ、「西山俳壇」から、いくつかを紹介しておこう。
西日さす更地の端の蔵一つ 和歌山県有田川町 岩倉由紀子
夏休み大きな雲が飛んで行く 福岡県苅田町 荒田周二
蝉すぐれ口角上げて紅を引く 京都府精華町 北尾直美
辻の灯や児童のおらぬ地蔵盆 摂津市 山上鬼猿
たたみ香の盆提灯や明かり舞ふ 奈良市 澤田妙子
家苞の金魚二匹は戦利品 和歌山県みなべ町 武田惠子
天目の斑模様や星明り 松戸市 大島省子
ラブコール煮つまっている葛の花 城貴代美(選者詠)
撮影・芽夢野うのき「遊星と手をとる金木犀の岸辺」↑

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