福田鬼晶「墓標みつしりハ月といふ荒野」(『クマムシ』)・・
福田鬼晶第二句集『クマムシ』(ふらんす堂)、その「無常迅速——あとがきに代えて」には、
無常迅速小津安二郎墓所冬日
——小津さんの作品が好きで、殆どを観たと思う。
銀座の小料理屋やバーがよく出てきた。その銀座にあった父の行きつけの「卯波」は跡形もなく、父に紹介され二言三言交わした真砂女もとうに亡くなった。「おばはん逝ったか」と呟いた父も既に亡い。母も数年前に逝った。
故郷、防府も記憶の中では遥かに遠い。あの明るくちょっと空虚な瀬戸内の日差しは彼の世のことのようだ。まさに無常迅速。
第一句集を縁あって八年前に纏めさせてもらったが、その後の日々も飛ぶように過ぎた。その中で心の中に泡(あぶく)のように浮いてきた言葉を、何とか紡いできた。その泡が瞬時でも「詩」となって立ち現れているようにと念じて。
とあった。集名に因む句は、
クマムシを飼ふゆめ春の曙に 鬼晶
であろう。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。
淡雪のうしろの闇を訪ねむか
悼 つげ義春
陽炎の中で石売る男かな
うりずんの潮しづもる大和の忌
吊虻の虚空の昼を騒つかす
わたくしはわたくしに棲み青葉騒
わたくしにわたくしをらず夏怒濤
黒旗忌夜のいわし雲全天に
大杉栄・伊藤野枝虐殺
桃の世をマントの中也とびまはる
虫の闇絶ゆることなき難民史
利行忌の秋の時雨となりにけり
画家・長谷川利行
けふの日をけふ照り返し石蕗の花
その日より影絵の国や開戦日
鬼やらひやらはで鬼と暮らむか
福田鬼晶(ふくだ・きしょう) 1950年、山口県防府市生まれ。
★閑話休題・・夏石番矢「人々あっさり騙されあっさり死んでゆく」(「祈り展」より)・・
先日、「祈り展」(於:ーSTAGEー1)の最終日、8月15日(土)、ぎりぎりに駆け込んだ。展示参加者は、
穐山昭二・石井ルイ・梅川紀美子・エディ上枝・尾川和・木島隆夫・黒澤淳一・澤田重人・鹿田五十鈴・相馬亮・田島靖浩・田中晴久・種村国夫・夏石番矢・Noliko・和叶。
であるが、愚生の知人は夏石番矢のみ。以下に彼の色紙の句を挙げておこう。
中性子愛も歴史も通過し闇へ 番矢
われらの祈り百年雨ざらしの梯子


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