小林鮎美「死してなお村を出られず草いきれ」(『女王蟻』)・・


 小林鮎美第一句集『女王蟻』(ふらんす堂)、序句は櫂未知子。


  わたくしの城へようこそ女王蟻      櫂未知子


跋文は佐藤郁良、それには、


 小林鮎美さんと初めて出会ったのは、二〇一一年の秋、第三回石田波郷新人賞の授賞式のことであった。私が選者を務めていたこの賞で、鮎美さんが奨励賞を受賞されたのである。当時鮎美さんは二十五歳、華奢な印象の中にもしっかりとした芯の強さをを感じさせる女性であった。

  人も馬も痩せれば青し旱星

  生まれつき手持ちぶさたで深雪晴

 これらの句は、その時の受賞作品に収められていたものである。(中略)

 鮎美さんの同世代には力のある女性俳人が数多くいるけれど、小林鮎美の実力はその中でも出色だと私は信じて疑わない。すでに俳句歴二十年、ようやく上梓にいたった第一句集『女王蟻』を、私は自信を持って世に送り出したい。そして、鮎美俳句の一人のファンとして、これからも彼女の俳句を応援し続けたいと思っている。


 とあり、また、著者「あとがき」には、 


 大学時代から現在まで、大体二〇年くらいの間に作った句をまとめました。実体験の句、妄想の句、どうやって作ったか覚えていない句など、二九八句を収めています。少しでも楽しんでいただけたら幸いです。(中略)

 また、九年前、出産の際に三・六リットル出血しICUにて治療を受けました。医療関係者と献血をしてくださった方々に感謝いたします。


 とあった。集名に因む句は、


  水やりは女王蟻に届くまで      鮎美


 であろう。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい。


  人類は街を創りてクリスマス

  ごきぶりと暮らすごきぶり殺しつつ

  コンビニに電池・秋思に周波数

  花ミモザ手紙は一度旅をする

  万緑や死ぬまで座る椅子の数

  春の雪マトリョーシカに闇の層

  蚊の中で混じる夫の血わたしの血

  星座には入らぬ星よ流氷期

  人死んで家族集まる春の家

  ぶらんこの鉄の匂いよもう泣くな

  人生は実写版かも冷素麺

  この星の遠心力と飛魚と

  まぼろしの鳩を吐くまで止まぬ咳

  水仙喋る喋るけど全部文字化け

  巻貝の中はまっしろ春の夢

  

  小林鮎美(こばやし・あゆみ)1986年、群馬県利根郡生まれ。 



 
                    河口聖↑

★閑話休題・・河口聖・斎藤泉・樋口慶子・宮塚春美「野生の思考展ー野に生きることー」(於:越谷・ギャラリーK)・・
  

斎藤泉↑
宮塚春美↑
                   樋口慶子↑

 8月1日(土)が展示の最終日だったので(7・20~8・1)、やっと7月31日(金)に滑り込んだ。いつももことながら、ギャラリーの斜め前にある「きっちゃてん」で、一服して帰ることにしている。


               撮影・芽夢野うのき「さだめは神のみが知る夕化粧」↑

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