加藤国子「宇宙への旅始まりぬ雲の峰」(『ビーズの指輪』)・・
加藤国子第二句集『ビーズの指輪』(ふらんす堂)、跋文は加藤哲也「加藤国子句集『ビーズの指輪』を読む」、その中に、
(前略) 葉桜の影は無数の子を包む
「葉桜」は花が散って若葉が出始めた頃の桜を指す。艶のある葉が美しい。(中略)
「葉桜}の句としては、星野立子にこんな句がある。「葉桜の影ひろがり来深まり来」、「葉桜の影」までは同じだが、それ以下はまったく異なると言っていい。また有名な篠原梵の句だが、「葉桜の中の無数の空さわぐ」というのがある。この句では「葉桜」と「無数」が同じで、雰囲気的に似ているところもあるのだが、「空さわぐ」という把握と「子を包む」では着眼が違うから類想というには当らないだろう。ちょうど、立子と梵の句を合わせたような形になっているが、新しい情趣を醸し出すことに成功していると言っていいだろう。
とあり、著者「あとがき」には、
本書は私の第二句集です。二〇一四年から二〇二三年までの十年間の作品より三百二十五句を選びました。約四十年間の俳句歴、県立高等学校の教員としての四十二年間のしめくくりとして句集を上梓することにしました。私のちちであり、俳句の師でもあった故寺島初巳、夫の加藤哲也に深く感謝します。
とあった。集名に因む句は、
向日葵のごときビーズの指輪かな 国子
であろう。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。
盲導犬侘助の道避けにけり
秋暑し大仏の手に祈り紐
照紅葉曇りなき世をのぞみけり
折紙につつみ社へ針供養
目で語る役者に見入る秋の夜
人力車蜻蛉の止まる京の果て
菜の花や静かに語る元兵士
陶狸猫お気に入り冬ぬくし
親知らずめつぽう晴れて初便り
さくら湯の花びら浮き世流れたる
菫すみれ生まれかはりてなほ菫
春の灯の中より響くピアノの音
囀の山また山を越えて来る
削氷(けづりひ)の納屋の奥にて横たはり
月まつる壺にあまたの花をさし
加藤国子(かとう・くにこ) 1960年、愛知県生まれ。
★閑話休題‥高野ムツオ「夏の雨うるさくひびく夜の寺」(「週刊文春」7・30号「新家の履歴書987より」)・・
「週刊文春」7.30/3372(文藝春秋)、「新家の履歴書987」は高野ムツオ(俳人・現代俳句協会会長)である。キャプションは「カッコウが決め手となった多賀城市の終の住処。今は妻とベランダ越しの別居中?」その文中に、
(前略)ただ、小学校四年生の時、阿部みどり女という高名な俳人の先生がご指導くださった夜の句会で、私の句が選ばれたことははっきり覚えています。〈夏の雨うるさくひびく夜の寺〉。そのまんまの情景を詠んだだけですが、やっぱり誉められる嬉しいですね。お寺の雰囲気、句会の様子、本堂の暗さ、雨の音——。みな思い出せます。わずか五七五の言葉がたくさんの情報を記憶から引っ張り出してくれる。これが俳句の、そして句会の醍醐味なんです。
とあった。
地震(ない)の闇百足(むかで)となりてあゆむべし
泥かぶるたび角組(つのぐ)み光る蘆(あし)
撮影・鈴木純一「ホルモンに因果ふくめる団扇かな」↑
7月30日 リーガル万吉 没 (1894~1967)漫才師(リーガル千太の相方)

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