上田玄「銃後の街に/尾鰭は泳ぐ//水枕」(「門」7月号・第466号より)・・


 「門」7月号・第466号(門発行所)、桐野晃「玲玲抄」の三冊の内の一冊に『上田玄全句集』(鬣の会)の句を取り上げ、鑑賞が付されている。それには、


 銃後の街に

 尾鰭は泳ぐ

 

 水枕        上田 玄


  多行形式句。昭和二十年を境とした日本における戦後も、地球上のどこかで今日に至るまで「銃前」であるという意味では、昭和十年代後半から「街」を泳ぎ始めた「尾鰭」は、今なお泳ぎ続けており、自身もまた「発熱」し続けているのだろう。〈星流れ/父の/背負ひし/薄き痣〉。戦争を実際に経験した父の「痣」の重さ。〈バンザイノ/海ヲ/今生/水母カナ〉。文節で改行された一行一行の意味が深く、またそれぞれの言葉の奥から、隠された無数の怒りや悲しみの叫びが溢れ来るようで、立ち止まりながらでなければ読み進めることが、できない。


 とあった。ともあれ、本誌より、アトランダムになるが、いくつかの句を挙げておこう。


  戦前や朝の裸の汗あつぱれ          鳥居真里子

  過去帳を開くや軍靴麦の秋          野村東央留

  月に置く椿は屍置くごとし           成田清子

  恋猫となりて抜け出しそれつきり       石山ヨシエ

  木々磔刑永遠のこゑあり霏霏と雪        村木節子

  見えぬ道の一つを進むしやぼん玉        島 雅子

  オルガンを漕ぐやつぎつぎ湧く朧       中島悠美子

  恐竜の骨を見てゐる花の雨           泡 水織

  さへづりのひかり憑きたるままねむる      上野龍子

  ひとでひとで海星は指をどう使ふ        田中洋子

  水馬水輪水玉彌生の赤             大熊峰子

  春浅し三日みづかき甕のぞき          加藤 閑

  目を閉ぢるとき逃水にたどりつく        佐々木歩

  麗日のわたしの小鳥わたしの巣         中澤美佳

  蛇穴を出て性別を消す人間          三上隆太郎

  海馬より生まるる戦(いくさ)藍微塵      岡本紗矢

  雲消しの術よく効いて山笑ふ          上田三味

  桃は太宰の花あなたとともにゑがく花だ     垂水文弥  

  三月のありやうとして蹈鞴ふむ         川森基次

  靴履くに屈むは野暮か初雲雀         水出かをり

  宝物の疵を見せあひ朧の夜           松本明子

  相対の世をはらみつつ散るさくら        山口一夫

  白旗の少女ポップコーンらるられる花るるを ちねんひなた



  撮影・芽夢野うのき「りっぱに忘れりっぱにあちらねこじゃらし」↑

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