山本左門「爆音に近づいて行く日傘かな」(『星暦』)・・
山本左門第5句集『星暦(せいれき)』(ふらんす堂)、その「後記」には、
本書は『星餐』に続く第五句集である。二〇一四年ぁら二〇二四年の間に、同人誌、新聞、雑誌等に発表した作品の中から三百八十余句を抽出して収録した。
私は世に言う「全共闘世代」「団塊の世代」に属するが、句集をまとめていると、もの凄いスピードで私の周囲を擦過していった時間の影法師に些か茫然とする。特に今回は公的にも私的にも、非日常が日常化したような劇的ともいえるさまざまの出来事があったので、一層その感が強い。
とあった。扉には次の献辞がある。
からす麦しげった中の立ち話し。/夜よりほかに聞くものもなし
ヴェルレーヌ「わびしい対話」
ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。
春の山声を殺してゐたりけり 左門
春の昼大きな箱を燃やしけり
緑蔭に入り緑蔭の消えてをり
降り積る時間と記憶蝸牛
立葵浸す茎に捧げらる
夏草や線路は忘れられてゐる
カルネアデスの板流れ着く青岬
戦争を待つてゐるやうな青バナナ
敗戦忌沖にあつめしちぎれ雲
蓼の花昏れオルガンの片手弾き
白桃の夜のくれなゐ夜の豪雨
露草は人影にさへ露零し
仲秋のからだの裏と表かな
木の間より月見え明日の淋しさ見ゆ
鳥渡るプラットホームだけの駅
引き寄せて天のふかさよ烏瓜
無花果や未生の悲鳴縷々として
冬麗や皿砕かれて彩を出す
雪雲に夕日の血いろ滲み消ゆ
白鳥の群れ啼く声にまたも雪
山本左門(やまもと・さもん) 1950年、大阪生まれ。
撮影・鈴木純一「シャバダバヤ浮人形はドゥビドゥビドゥ」↑
7月21日 弘田三枝子 没 (1947~2020)

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