二村典子「まくなぎもまんはったんも避けるから」(『ひらく庭』)・・


  二村典子第3句集『ひらく庭』(黎明書房)、著者「あとがき」に、


 第一句集は俳句を始めてから十六年後、第二句集はそれから二十三年後の二〇二四年に刊行しましたので、まだ二年しか経っていません。次の句集を出そうなどと一ミリも思っていませんでした。けれどこの「一ミリも思っていなかった」ことが、まさに第三句集を出す動機になりました。(中略)

 「良し悪し」と「好き嫌い」は決して対立するものではないはずです。今まで「良し悪し」にこだわり過ぎて来ました。その結果、幸福度という尺度でみると、私の俳句生活は幸せを感じることが少なかったかもしれません。むし苦しさが楽しいという自虐的なものになってしまっていました。これからは、「好き」をもう少し開放してもいいのではないかと思い始めています。俳句を始めて四十年以上経ってやっと。「好き」を押し通すとどうなるか、とても楽しみです。少なくとも今より幸せになれる気がします。


 とあった。集名に因む句は、


  春の雪どこでもひら庭である     典子


 であろう。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。


  アレルゲンらしくない顔ヒヤシンス

  金魚にはたたかう気なんてないしっぽ

  残飯と残暑山積み控室

  寒林からとりだす少しちぎれてる

  いなびかり線のどこかが閉じてない

  蓑虫がゆれるきれいな予報円

  八月の誤字がこの期におよんでも

  杉の花コピーのコピーコピーする

  風光る中の見えない競馬場

  裸足ってことは最終的なのか

  オカリナとコカリナひびく冬の凪

  冬の月つと非通知の通知音

  天文学的灰色雨催い雪催い

  水滴が水滴なぞりゆく九月


 二村典子(にむら・のりこ) 1962年、愛知県生まれ。

 

  

      撮影・中西ひろ美「出口まであとさきがある昼寝人」↑

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