飯田香乃「足ぶみし待つ踏切のオリオン座」(『グルノーブルの秋』)・・
飯田香乃第二句集『グルノーブルの秋』(草土社)、跋は酒井弘司「学生時代の香乃さん」。その中に、
飯田香乃さんの第一句集は、幼稚園の年長さんから中学一年生までの作品を収めた『魚座のしっぽ』でした。
第二句集の『グルノーブルの秋』は、平成二十七年から令和六年までのい十年間。中学二年生から大学を卒業するまでの思春期から青春の時代の作品ですす。
同人として参加している「朱夏」誌に発表した作品、ニ八五句を収録しました。(中略)
グルノーブルは、フランスの南東部。アルプス山脈の麓にあり、スイスやイタリアに近い山岳都市。大自然や歴史のある街並みが魅力と言われています。スタンダールも、この地の生まれです。
また、大学での日々を書いた作品では、
スタンダール読みおえ外の雪を知る
卒論を出すおとなへとまた一歩
卒業式そっと手を振る学び舎に
青春の光芒が、どこか見え隠れする作品です。
この第二句集『グルノーブルの秋』は、社会人へと巣立っていく成長過程を、つぶさに見つめた一集でもあります。
とあり、また、著者「あとがき」には、
(前略)ただ、大学生として暮らすな中で気づいたことは、「過去はさまざまなかたちで永遠になる」ということでした。未来なんて、まだまったく分からない、現在は」まさに今この時間なのだから刹那的すぎます。
それでも過去は、記憶に、写真に、書物に、ありつづけるのです。きっと、その中で最も危くて尊くて儚いのが、記憶とか思い出なんでしょう。そしてそれを、五・七・五という十七文字に掬いあげることが「俳句を詠む」ことなんだと思っています。
とあった。ともあれ、以下に、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。
夏つばめ山の駅から大空へ 香乃
青葉青葉電車はスピード上げながら
授業で「無季俳句」「自由律俳句」を習う
沙菜ちゃんにあいたいこの頃なにしてる
サッカー観戦ホットココアとレモネード
大神神社(おおみわじんじゃ)霊気漂う春の宵
落ちるかとしがみついてる線香花火
「真冬並み」といわれはじめて登校す
風に想う君とのmemoryわが春愁
淡い空へしゃぼん玉ぽわりぽわり
フランスで
山も木も秋支度するグルノーブル
六月の窓から入る風の声
踏み入って大雪だるまがぽっつんと
飯田香乃(いいだ・かの) 2001年、東京都生まれ。
撮影・中西ひろ美「幸いはこれから届く小六月」↑

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