西東三鬼「広島や卵食ふ時口ひらく」(『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集』より)・・


 鈴木比佐雄・座馬寛彦・羽島貝・鈴木光影編『広島・長崎・沖縄からの永遠平和詩歌集/報復の連鎖からカントの「永遠平和」、賢治の「ほんとうの幸福へ」』(コールサック社)、帯には「269名の詩人・歌人・俳人が世界に贈る希望の書」とある。鈴木比佐雄の解説「『永遠平和』を宿し未来につなぐ多様な詩歌の試み/広島・長崎・沖縄からの永遠詩歌集―—カントの『永遠平和』、賢治の『ほんとうの幸福』へに寄せて」の末尾の「編中」の結びには、


(前略)今回の「永遠平和」のテーマとした当詩歌集は、被爆者や戦禍に遭遇した人びとの声にならない無言の思いや叫び声の代弁、そして核兵器や大量破壊兵器の廃棄を現実的に進める試みを詩人・俳人・歌人たちが言葉を通して表現しようとした。本書の英語版は二〇二五年春に刊行される予定で、併せてお読み下されば幸いだ。世界の人びとに日本人が広島・長崎・沖縄で経験したことや、現在進行中のアフガニスタン・ウクライナ・ガザなど世界の戦争地域に関する詩歌も併せて収録させて頂いたので、その思いをお読み下さればと願っている。


 とあった。俳人作品だけでも約100名ほどの昨品が掲載されている。その中から、わずかになるが、以下に挙げておきたい。


  原爆ドームただ一本の霜柱          長谷川櫂

  長梅雨や「廃炉詩篇」の長恨歌        安西 篤

  人間を乗り継いでゆく神の旅         堀田季何

  空で溶けてしまふ噴水原爆忌         飯野幸雄

  炎天はドームの骨をまだ舐る         中原道夫

  黒い雨がふると考えない葦が考える      森 獏郎

  「核」の字の「人」はつぶれて原爆忌     東 國人

  セシウムの霊の憑きたる雪女郎        小橋啓生

  セシウムの得体や海霧(じり)に眼を凝らす  小沢真弓

  熱かつたろう熱かつたろう石一片      宇多喜代子

  神よ被爆地に星粒を撒いて下さい       前川弘明

  原爆忌は季語ではない日本の青空       田中 陽

  にんげんはあてにはならぬところてん     瀬戸正洋

  うりずん南風(ぺー)(むげんだい)に横たわる

                      野ざらし延男

  歪んだ口がピカソのゲルニカどっと吐く  おおしろ 建

  戦争を語らぬ父の手指がない         平敷武蕉  

  沖縄はずっと立ち泳ぎのままだ       川名つぎお

  万歳の手のどこまでも夏の花         大井恒行

  鳳蝶(あげはちょう)国旗二百にまぎれゆく  鈴木光影

  原発の廃炉妖怪かひやぐら          宮坂静生

  真珠湾忌父と娘のチェスゲーム      マブソン青眼

  冬ぬくくガザ瓦礫から誰かの腕        関 悦史

  抑留のことは触れず鳩を吹く         大関博美

  戦前の前も戦後や秋扇           渡辺誠一郎

  国の忌をいくつ増やして百日紅        対馬康子

  原発の風下にゐて田草引く          関根道豊

  お降りの雪永久に戦後たれ         高野ムツオ

  原発へ津波・ミサイル・蜃気楼        永瀬十悟

  子どもの血はワインではない陽よ       赤野四羽

  エイサーのひとりは弥勒(みろく)足鳴らす 松田ひろむ



    撮影・中西ひろ美「なお暑しシェード越しなる蝉の声」↑

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