谷口智行「鷹柱とは天心を支へざる」(『海山』)・・


  谷口智行第4句集『海山』(邑書林)、著者「あとがき」に、


 句集『海山(うみやま)』は、『藁嬶(わらかか)』『媚薬(びやく)』『星糞(ほしくそ)』につづく第四l句集である。平成三十年四月から令和五年までの約六年間の作品から自選した。

 句集名『海山』は、風物や暮しの象徴としての海と山ではない。しみじみとひたすらに〈意味〉を消したかったまでである。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておこう。


  じんるいとけものは道祖星新し         智行

  涅槃図に看取りの医(くすし)をらざりき

  山暮れて海に日のある藜かな

  とことはにうしほにけぶる紀のさくら

  かたばみはみちくさの花ともだちの花

  暮石忌鬼ヶ城とは去り難な

  共喰ひの果は干死(ひじに)のちちろ虫

    茨木和生先生

  一陽来復真鳥となりて癒えよかし

  贄とせりゐのししの舌切り取りて

  どこまでも歩くぶらんこ乗りすてて

  山滴る霊もマグマも噴き尽くし

  その夜どの森どの木も聖樹なり

  早苗饗にあまくかなしく山羊鳴く

  山のもの海へと返す夏の川

  二日賭事三日鮎掛二日寝る

    亡弟三十三回忌

  夜の長し死者は褒められ叱られて

  せきれいを先に渡して流れ橋

  陰石の割目は魚道菊の雨

  詩を作るやうに木の実を並べをり


 谷口智行(たにぐち・ともゆき) 1958年、京都生まれ、和歌山新宮育ち。



         撮影・鈴木純一「流氷や伝言板に頭文字」↑

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