松本勇二「あべかんと父が行きたる黄泉に夏」(『風の民』)・・
松本勇二第二句集『風の民』(文學の森)、著者「あとがき」に、
平成十四年に初句集『直瀬』を上梓してから何年たったであろうか。次の句集をと思いながら、ついつい先延ばしになってしまった。その間に、「虎杖」の相原左義長師、「海程」の金子兜太師を亡くした。両親も亡くした。その他にもさまざまな出来事があったが、何とか乗り越えてくることができた。
俳句を始めてから四十年になる。『風の民』はその記念碑的な句集となった。作成年別に並べたのも、その記念碑的なものによる。ただ振り返るのみである。
俳句と人生の両輪と思い、どちらも懸命にやってきた。(中略)
「一句書いて、すぐに死んでしまわず、まだ蠢いているような俳句を」などとよく言っているが、果たしてどうであるか心配だ。
あまり褒めてもらったことのない両親と、いろいろなことを教えてくれた兄に、この句集を天界から眺めてもらいたい。そして、静かにほほえんでもらいたい。
とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
軍隊は膝に悪かろ遠霞 勇二
電話あり凩郡凩町字凩
運転を狐に替わる花野駅
我等複数森青蛙も複数
父の子でよかった枯葉降り止まず
麦秋や眼を閉じた方が明るい
死後少し残る聴力夕かなかな
ででむしの殻に仕舞いし闘志かな
鷹匠のまず天網を指し示す
母逝くや時雨と言えどはげしかり
夢に来る死者が多くて虫すだく
もういいと云う雪とガンバレと云う霙
カーブミラーの奥の青さよ芒原
松本勇二(まつもと・ゆうじ) 1956年、愛媛県久万高原町生まれ。
撮影・芽夢野うのき「もうなにも吐くものもなく螢袋です」↑

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