金子兜太「妻よまだ生きます武蔵野に稲妻」(「海原」第53号より)・・


 「海原」第53号(海原発行所)、本号の特集は「第5回 海原金子兜太賞発表」。本賞に佐々木宏「渋い柿」、奨励賞に小西瞬夏「十指」、河西志帆「もずくの天ぷら」。それはそれで目出度いことだが、愚生には、岡崎万寿の新連載「俳人金子兜太の全人間論ノート(1)」である。何しろ、岡崎万寿(次の正月で94歳)での新連載で、兜太が98歳で亡くなっているのだから、岡崎万寿にとっても命懸け、退路なきの事業だと思い、それだけでも感動するのである。ちなみに、兜太最晩年の句を、孫引きすると、


  白寿過ぎねば長寿にあらず初山河(94歳)     兜太

  オリオン出づ百歳までは唯の歳(95歳)

  妻よまだ生きます武蔵野に稲妻(97歳)

  かくも細かく科の花咲きわれは老いず(97歳)


 である。その他の記事では、小野裕三「英国Haiku便り[in japan]「先生、俳句で比喩を使ってもいいんですか?」、じつは愚生も、むかし「俳句は比喩ではダメだ!一句が書かれたのちに、一句全体が比喩的に読まれるのはかまわないけど・・」と言われてきたクチである。そして、阿部鬼九男が最晩年、「重信はそう言っていたけど、でも結局比喩だよなぁ・・」と、ニヤッとされて呟かれたのを覚えている。ともあれ、「海原金子兜太賞」の受賞者の一人一句とお二人、ことごと句会の仲間の句を挙げておこう。


  公僕でしたかなり渋い柿でした    佐々木宏(本賞)

  手袋に入ればまぎれなき十指     小西瞬夏(奨励賞)

  かでなふてんまもずく天ぷらは此処  河西志帆(奨励賞)

  夢殿の合鍵合わず蛍狩        安西 篤

  美しきもの見つ踊りの外にいて    武田伸一

  夏の君うすむらさきの化粧水     武藤 幹


 そういえば、らふ亜沙弥の訃報がもたらされた。ご冥福を祈る。合掌!



★閑話休題・・安西篤「三・一一添付ファイルが開かない」(「海程多摩」第22集より)・・

 安西篤つながりで「海程多摩」第22集(発行人・安西篤)、特集に「追悼 伊藤雅彦」、追悼文は伊藤巌・竹田昭江・小松よしはる・野口佐稔。他に、「金子兜太研究会 論考」に、大髙宏允「兜太生きもの感覚と波動」と石橋いろり「秩父人・金子伊昔紅ー兜太産土の地の原風景」がある。ちなみに石橋いろりには、本稿の前に、「海原」47号と48号に、「俳人金子はるを訪ねて(上・下)があり、金子兜太の母・金子はる(享年104)についての貴重な論が掲載されている。


  病みきりて静かに逝きぬ合歓の花     はる

  抱卵の燕ささやき交替す

  元朝に生れて夫や米寿たり


 ともれ、以下に本誌本号より、幾人かの句を引いておきたい。


  横丁の昭和は剝れ霙鍋           石橋いろり

  雪解川わらべの唄に国の非史         伊藤 巌

  表札に名字いろいろ冬温し          植竹利江

  朧から掛け声歩け 歩こうか         大髙宏允

  生も死も並みが一番夕夏野          岡崎万寿

  ドローン飛ぶプロパガンダの霧の中    小松よしはる

  花林檎マトリョーショカの中マトリョーショカ 芹沢愛子

  AIの軽やかにに曳く蜘蛛の糸         高木一惠

  綿虫とぶわたしから遠いわたし        竹田昭江

  ほんとうのことは毀れた街にある       田中信克

  亀鳴くと知りて自由になりにけり       野口佐稔

  「会わない」が「会えない」になるしゃぼん玉 宮崎斗士

  開戦日日の丸という赤き穴          望月士郎

  ゲルニカの鋼鉄の線五月の馬        望月たけし

  俳人や戦車の前に浮いて来い         柳生正名



         芽夢野うのき「天のから泣きエゴの実の点々」↑

コメント

このブログの人気の投稿

高篤三「Voa Voaと冬暖のメトロ出る河童」(『新興俳人 高篤三資料集』より)・・ 

田中裕明「雪舟は多く残らず秋蛍」(『田中裕明の百句』より)・・

渡辺信子「ランウェイのごとく歩けば春の土手」(第47回・切手×郵便切手「ことごと句会」)・・