広瀬ちえみ「苦かったいまごっくんとしたことば」(「What’s」Vol.4)・・


 「What’s」VOl.4(編集発行人 広瀬ちえみ)、編集後記に相当する「ツリーハウス」に、


🔷柳本々々さんの「川柳作家にききにいく②―往復書簡 なんにもないところから」は広瀬ちえみとの往復書簡です。基本的にページ数は気にしていません。でも読んでみるとあまりページ数の多さを感じさせないのではないでしょうか(愚生注;16ページ)。(中略)また、イラストレーターの安福望さんのイラストを使わせていただけることになりました。々々さんには、これか安福さんの扉絵のふんいきを軸にすすめていきたいという意思があります。


 とある。その往復書簡「なんにもないところから」を、少し引用する(興味のある方は、直接、本誌に当たられたい)。まず、「『もともとからちえみさんへ』2022年11月8日」から、


 (前略) うっかりと生まれてしまう雨曜日

 なにが「うっかりと生まれた」のか。「雨曜日」という不思議な曜日になにかがうっかりと生まれてしまったのか。それはわたしかもしれないし、なにかのいきものかもしれない。でも、もっとそれ以上に大事だとぼくがこの句でおもっているのは、ここで「うっかりと生まれてしま」っているのが「雨曜日」ということばそのもなんじゃないかということです。

(中略)そして実は現代川柳って、そういうことばそのものが生まれる現場にまざまざとあちあうことなんじゃないかとおもうんです。(中略)

   あかさたないきしちにがありミルフィーユ

 こんなふうにもおもいます。現代川柳は、ことば、を描いているんじゃないかと。もっといえば、ことばからうまれてしまう、うまれざるをえない、わたしたち、というものを扱っているんじゃないか。(中略)

 でも、まだ「まったくこの世界にできあがっていないもの」を「このわたしでないわたし」に「どういうふうにできあがったもの」としてつくってもらうのか、ということを考えたことがありませんでした。(中略)

 なんにもないところから川柳はどういうふうにあるしゅんかん、うまれるんだろう。雨と曜日は、わたしのなかで、どんなしゅんかんに、どうやって、雨曜日、になるんだろう。(中略)

 「ちえみから々々さんへ」 2023年1月20日  (中略)

 ところが々々さんは、雨と曜日を分けて、ことばをばらばらにしたうえで、くっつけなおす、また「雨曜日」そのものが生まれる現場に今たちあっている、と示してくださったことに驚きます。

 ことばはうまれなおすもの、そうです、そうなんです。うまれなおしたことばにびっくりすることを書くのが川柳かなと感じています。

 だヵらうまれなおすには一度壊さなければならない、こわしたところによろよろと立ち上がってくることば、また堂々と力強く鬼に金棒みたいに発せられることば、そこに立ち会う、(中略)

 々々さんは「ことばを描く」と(「書く」ではない)述べられておられますが、それははじめからことばをやりなおすということいですね。(中略)

 そういう意味で川柳は「さよならの文学」だという々々さんのことばには、なるほどと思います。では俳句はと考えると、「ことばを足していく文学」のような気がしますね。季語を中心にそこにことばを見つけていくというのかな。(中略)

 「もともとからちえみさんへ 2」 2023年2月19日(中略)

 俳句が名詞の世界なら川柳は動詞の世界なのかな。句ができたあとも、これはどういうことなんだろう、と意味としても形式としてもたえまなく大きな動詞としてうごめきつづけているのが、川柳なのかなって。(中略)

 ちえみさんは俳句は「足していく」とおっしゃられたけれど、それはこう、なんていうのかな、ことばを固めていくことにちかいのかな。そして川柳はことばを溶かしていく、溶かしながらうまれるものをかんがえていくということなのかな。(中略)

 声。ああそうだ、それは「曜日」の声をきいているんだ、とおもったんです。わたしたちはこといばをみるんじゃなくて、ことばの声をきいている。「絶景」だってたまには「しにものぐるい」のものとしてみてほしいばあいだってある。いろんな声をはっしている。(中略)

 川柳にはどうもことばの声を「聞く」という秘密のテーマがありそうですね。


とあった。ともあれ、本誌よりいくつかの句を挙げておこう。


  0号室 おひとりさまのご案内         浪越靖政

  菜の花や涙一手にひきうけます         加藤久子

  はりー、はりー、鎮火できない模様です     竹井紫乙

  湯冷めして万年床の薄っぺら           叶 裕

  ほんとうの初体験はこれからよ         鈴木節子

  かなしい骨とやわらかな打電          妹尾 凛

  山彦は一升瓶の中からも            水本石華

  人でなかったじかんのながさ         佐藤みさ子

  足してみる引いてもみたが何もない       鈴木逸志  

  生きている途中でもう死ぬ話          中内火星

  迷ったが何もしないということ         浮 千草

  黙り続けてつまらぬ人になってきた      鈴木せつ子

  冬の大三角形の奥の闇             川村研治

  恥ずかしいノイズで家族だと解る        月波与生

  鶴を見に行って風だけ見て帰る         原 ゆき

  ヤアヤアヤア 抱きしめたいがやって来た   高橋かづき

  こんとんがとろんとなってきたらはる     広瀬ちえみ



      撮影・鈴木純一「イチハツや二発目を聞く散髪屋」↑

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