井出野浩貴「野次愉快タイガース戦ナイターは」(『孤島』)・・


 井出野浩貴第二句集『孤島』(朔出版)、帯文は西村和子、それには、


   虫の夜の孤島めきたる机かな

 宇宙的空想から共に生きる者たちへの共感まで

 幅広い世界へ読み手をいざなう。

 鋭敏な五感で生活者の実感をこまやかに詠じた作品だが

 季語が多くをかたっている。

 俳人協会新人賞受賞から八年 人生経験は創作者を鍛えた。


とある。ともあれ、集中より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい。


  しだれ梅くぐらむ息吸はむ       浩貴

  春燈や微恙の床に唐詩選

  翼あるものもやすらひ水の秋

  さへづりのつひに姿を見せぬまま

  わが胸の奔馬嘶き鰯雲

  父もまた父厭ひけむ根深汁

  死にきれぬものに蟻はや群がりぬ

  小鳥来る母の月火水木金

  みづうみにうつらぬ高さ夏つばめ

  つきおうてやるか天道虫の擬死

  いしぶみに飢饉の二文字曼殊沙華

  弾圧も論争もなし西東忌

  ちちははの亡き世の茅の輪くぐりけり

  日の落ちてなほ日をはらむ芒かな


 井出野浩貴(いでの・ひろたか) 1965年、埼玉県生まれ。



       芽夢野うのき「わたしはわたしされど青き蔦なる」↑



  

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