藤井南帆「本日はイルカとならむ水眼鏡」(『花縮砂』)・・
藤井南帆第一句集『花縮砂』(ふらんす堂)、序は藤田直子、それには、 (前略) 草月流の師範である南帆さんは、俳句と生け花には似たところがあると言う。生け花に「疎密強弱」という言葉があり、「生けるときには、花に密度と強弱をつけなさい。一番主張したい部分の爲に、他の部分は思い切って捨てなさい」と教えられた。俳句を作るにもこの言葉が念頭にあると話す。 とあり、跋の黒澤真麻生子には、 (前略) 蜩や悲しむことをためらはず 叶ふ夢叶はぬ夢やひなあられ 光と影、始まりとと終わり、心のやわらかいところ、生きとし生けるものたちの様々な事象や感情を繊細に感じ取り、己の感性を信じて句に仕立てることができる作者である。 とあった。また、著者「あとがき」には、 旅の夢は沖を見つめて花縮砂 句集名となったのは南の島への旅で詠んだ一句である。 小さな頃から南の海に憧れて小学生になると写真集やポストカードを集めては眺めた。暖かい季節が好きで寒いのは大の苦手。一年中夏だったらいいのにと思いながらプールの底に沈んで水面を眺めるのが好きな子供だった。 大人になって常夏の島に行けるようになり、波の音を聴きながらかいだ花縮砂の香りは甘くて、憧れが叶ったとおもった。 本好きで、言葉や文学に興味があり、図書館や本屋が大好きな私にとって自分の句集が出来上がることもまた一つ憧れが叶うことである。 とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておこう。 団栗のみな一点に光もつ 南帆 白鳥の夢みる力おとろへず かなかなの悲しとまでは言ひ切らず 生くるもの皆傷負うて冬銀河 ふくろふにもおばけにもなる芒かな 春泥に羽をよごさず鳩歩む 千年を生くる言葉よ蓮の花 真円ははかなきかたち大花火 祖母永眠 永訣の手向けに桜一枝を 白鳥の生涯白を裏切らず ぬかるみの中の光や建国日 終はりゆく昭和百年除夜の鐘 藤井南帆(ふじい・なほ) 1977年、兵庫県生まれ。 撮影・芽夢野うのき「雨しきり降る秋の木に真っ赤ないのち」↑