夏礼子「縦横の糸のほつれを風が縫う」(『夏礼子 柳句抄』)・・
『夏礼子 柳句抄』(詭激時代社/詭激時代セレクション袖珍新書・限定私家版)、巻末の「言葉の森へ」には、
子どものころからの方向音痴は、今更嘆いても仕方がないとして、いつも私は言葉に迷っている。
俳句や文章を書きながら、どうしたものかと心が立ち止まってしまう。書き出しの言葉も、「子供の頃」とした方がスッキリとする(最近は、「こども」や「ころ」と新聞や雑誌で表記されることが多くなっている)だろうかと考えたたりしてグズグズ悩む。
スマホで検索すれば何でもすぐに分かるらしい便利な時代に、ガラホの私は国語辞典が手放せない。(中略)
また、五十四歳で完全失明した男性のモットーは、「子どもには夢を、若者には希望を、大人には生きがいを、お年寄りには人生の喜びを」で「、命ある限り何かに挑戦していきたいし、その心を大切にしようと思っている」と続けている。
その他にもゲーテの言葉に、「年を取るということはそれ自体が新しい仕事を始めるということなのだ」と。
まだまだ書ききれない出会いがあるけれど、言葉の樹海に迷い込まないように気をつけよう。
斯くて今日も、言葉の森へ朝から心を弾ませている。
とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するがいくつかの句を挙げておこう。
ヒヤヒヤも希望のうちと風に立つ 礼子
秘密めくマトリョーシカに騙される
今日のこと狂する朝の水を飲む
横文字にはぐらかされている不安
天災の無情よ人災は非情
——平成24年~令和7年(205.1 .5)―—
夏礼子(なつ・れいこ)昭和24年、香川県生まれ。
★島田章平「ふらここの真下銀河は創世記」(『島田章平遺稿句抄』)・・
『島田章平遺稿句抄』(詭激時代社/詭激時代セレクション袖珍新書・限定非売品)、巻末の各務麗至「悼文にかえて」には、
息が足りないこの世の息が風船玉 野﨑憲子
令和八年三月十四日も、島田さんの追悼もあっての袋回し句会で私が特選にした一番衝撃を受けた句だった。
この遺稿句集抄を纏めるにあたって、私はどうしてもこの句を献辞として掲げた一冊にしたかった。互選後に仰られた、河野裕子の忘れられない短歌で、——島田さんに重なってしまって、と……。先の急逝の連絡もで、そうでなくてもドォーンと来た。
切羽詰まった悲壮感と、それでも、もっと息を、との、風船の中の息の存在に、どうかしたくて希望を見ていたのだった。
生死とは終はればをはる如月よ 麗至
これがこころのいたみきさらぎの月
とあった。ともあれ、幾つかの句を以下に挙げておこう。
天と地と金子兜太と臥竜梅 章平
七月や銃声まっすぐの迷路
銀河系無人の地球 氷塊
狐火や俳諧自由といふ心
これよりは原発敷地大花野 (サンデー毎日「サンデー俳句応」より)
島田章平(しまだ・しょうへい)
昭和22年1月29日~令和8年2月17日。享年80。香川県生まれ。
撮影・鈴木純一「名を止めて五月の闇や面あかり」↑
5月14日 三代目 實川延若 没(1921~1991)

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