久保純夫「蛇穴を出で暗國の拡がりぬ」(「儒艮」vol.55 より)・・


  「儒艮」vol. 55(儒艮の会)、特集は「久保純夫第16句集『識閾』。内容は久保純夫「『識閾』抄」、田中信克「『俳』の世界の不思議さと豊かさ――第16句集『識閾』評」、岡田耕治「句集『識閾』の自在」、金山桜子「一句随想」、曾根毅「『識閾』選」、渡邉美保「『識閾』より」、妹尾健「『識閾』覚え書」。他に、津髙里永子「村越化石の百句(23)」、久保純夫「平尾台経験——パロディのことなど」、押木文孝OSSIEコラム50「電気投票記録器」等。

 ともあれ、本誌より、いくつかの句を挙げておこう。


  青龍のみどり澄みきる虚空かな     久保純夫

  穏やかに焔を吐きぬ麒麟かな       〃

  人参の極まってゆく妹尾健        〃

  静止して見える時間や雲の峰      曾根 毅 

  ふらここやさざなみの立つにはたづみ  岸本由香

  花づかれみな棄てたまま追えぬまま   田中信克

  春の夢見んと障子に指の穴       志村宣子

  風船を持つてゐるので持てません    亘 航希

  身中に梅の香満ちる観世音       上森敦代

  母親の降参早し雪あそび        原 知子



★閑話休題・・坂口昌弘「書魂より出づる光は見る人のこころの深き祈りとなれり」(『書魂の祈り』)・・


 坂口昌弘『書魂の祈り』(私家版)、「はじめに」に、


 手島泰六氏の書について語りたい。/泰六氏は書人(書家)であると同時に、神の人でもあるので、書人を語る上において、神人であることが深く関係している時には、氏の思想に触れたい。/私は書に関しては門外漢なので、専門外の者が感じた印象であることを断っておきたい。


 とあり、また「あとがき」には、


(前略)手島氏は宗教家と書家の二面性を持っているが、氏はそれを二刀流といい、「左に崇教、右に芸術」と述べている。(中略)

 書を見ることを通じて、書に書かれた漢字の意味を深く知り、その意味と書体の形の関係を知り、漢字の意味と書体の形が一如であることを知り、書の一字が象徴するところは詩歌文学と異ならないことを深く知ることができた。 

 環境破壊や世界中での戦争という殺し合いの時代において、詩歌俳句や書を通じて、祈ることの大切さを知ることができたことに感謝したい。

 

 とあった。


 手島泰六(てしま・たいりく) 1947年、東京都渋谷区生まれ。

 坂口昌弘(さかぐち・まさひろ)1948年、和歌山県和歌山市生まれ。



   撮影・中西ひろ美「『新』のつくものに囲まれ春キャベツ」

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