上田玄「暮れまどふなみのあはひにぽちょむきん」(『上田玄全句集』より)・・
『上田玄全句集』編集員会編『上田玄全句集』(鬣の会/風の花冠文庫・限定400部・税込み2000円)、凡例には、
一、本集は、上田玄の既刊句集『鮟鱇口碑』『月光口碑』『暗夜口碑』及び『句控 ニ〇一九年以後』と、現時点において判明している全作品を収めた。(中略)
三、未刊句については、一行作品を「未刊句篇Ⅰ」、多行作品を「未刊句篇Ⅱ」として、それぞれ原句のままに年次ごと・発表順に収めた。(中略)
四、初出と句集掲載における異同については解題において示した。(中略)
五、上田玄は初期から多くの評論を書いているが、ここでは、渡邊白泉論を中心に併録した。なお、「渡辺白泉」の表記は、上田玄の表記を尊重した。
とある。「『上田玄全句集』解題」と「後書きにかえて」は深代響。その「後書きにかえて」には、
(前略)当初は一人で『上田玄全句集』を出そうと資料の蒐集を始めていたが、粗忽なわが身を省み仲間をさがした。ニ〇二四年六月二三日、上野で鬣同人堀込学と落合い、第一回『上田玄全句集』の打合せをした。その後、同同人九里順子、水野真由美が加わり、四人の『上田玄全句集』編集員会となった。上田玄の全貌を明らかにし、後世に残すためにはどのような全句集にしたらよいか議論を重ねた。(中略)
昭和四〇年代半ば以降登場し固有の俳句世界を確立した俳人たちと同様、上田玄もまた俳句に関わるその初期から優れた評論を発表して、自らの俳句の世界を深化させた俳人であった。評論は「渡邊白泉論・その他」として以下の八篇を収録している。「『媚薬と星をー秘められた浪漫的資質』特集 三谷昭を読む」(「鬣TATEGAMI」第五七号)、「『秋風羽衣曲』を受けて」特集 俳句の吉岡実」(「鬣TATEGAMI」第四六ごう)、「『富澤赤黄男戦中俳句日記』中の多行表記」(「鬣TATEGAMI」第七九号)、「感傷の超克ー窓秋の『河』への評と戦火想望」(「鬣TATEGAMI」第七二号)、「晩年の渡邊白泉・その音韻論」(「鬣TATEGAMI」第七麓号)、「追悼中島敏之」(「鬣TATEGAMI」第五八号)、「白泉各句一・二」(鬣TATEGAMI」九三号~九六号)。ここに上田玄の強靭な持続する志と内的必然性による思考の経緯を見ることができるとともに、シュルレアリスムや演劇活動への傾倒、あるいは舞踏や映像制作の経験など、二〇世紀の芸術が開いた世界の体現を垣間見ることもできる。
とあった。本全句集の特色は、近年には珍しく、かつて三橋敏雄が編んだ『西東三鬼全句集』のように作品の初出誌、並びに表記などの異同を調査網羅していることであろう。ともあれ、本集より、不十分ながら、いくつかの句を挙げておこう。是非、本全句集を、直接、手にとっていただきたい。
海ゆれてわれはしらしらそこひなる 玄
ひろげられさびくぎ舌にうちこまれ
地にふれてたちまち重き絮となる
これはこの
月光褶曲
戦後というも
屠殺され
さまよう鬼あり
俳句忌あり
撃チテシ止マム
父ヲ
父ハ
せみくぢらいづこにくらき子宮おふ
耳霊(みみだま)
目霊(めだま)
声を奪ひて
目借時
上田玄(うえだ・げん) 1946年7月21日~2023年12月30日、享年77。
静岡市生まれ。
撮影・芽夢野うのき「春はあけぼのつげ義春を告げる鳥」↑

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