田中裕明「小鳥来るここに静かな場所がある」(「静かな場所」第32号より)・・
「静かな場所」第32号(発行人・対中いずみ)、招待作品に浅川芳直「絹の音」、特別寄稿に岩田奎「『田中裕明の百句』余話」、森賀まり「関西俳句講座より/『俳句に内在する明るさ」に考えたこと」の中に、
(前略)爽やかに俳句の神に愛されて 田中裕明
この句には「発病」と前書きがある。俳誌「ゆう」を発刊した、まさにその一月に病気がわかった。
「俳句の神に愛されて」、それは、俳句に愛されたということ。じつはそれは俳句を愛している、ということと同じこと。彼は、俳句に賭してきた身を自覚したのだ。この言いさしはきっと、ああ、自分は俳句が好きだ、とつぶやいている。「爽やかに」には最後の方でよく口にしていた、「クリアでシンプルなんだ」という言葉があらわれていると思う。
とあった。ともあれ。、本誌本号より、いくつかの句を挙げておきたい。
柚の香のつと捥げば立ちたる辞去の門 浅川芳直
花冷の夜は首輪を外しやる 満田春日
おほかぜにつちかぜ湧きぬ残る鴨 森賀まり
読む人のまはり冷んやりしてをりぬ 対中いずみ
夏帽の子や読みながら歩きくる 藤本夕衣
撮影・中西ひろ美「強東風を名残の音と聞きにけり」↑
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