素潜り旬「作業服には大団円がよく似合う」(「川柳スパイラル」第23号)・・


 「川柳スパイラル」第23号(編集発行人・小池正博)、特集は「十四字作品集」。その解説の小池正博「『十四字の歴史』」には、


 一、『十四字の歴史』

 「十四字」(じゅうよじ)とは、「十七文字」(長句)に対する「十四字」(短句)という意味で、仮名書きにした場合の文字数(音数)に基づいて、こう呼んでいる。この呼称が適当かどうかは異論のあるところで、川柳人の中でも「十四字」「十四字詩」「七七句」「川柳短句」「短l句」など様々な呼称が並立している。

 十四字(短句)のルーツは連句にある。連句は五七五の長句と七七の短句を繰り返すことによって成立する詩型である。このうち、五七五の詩型として独立したものが俳句と川柳であるが、それでは七七の方はどうなったのだろうか。独立詩型としての七七は川柳のフィールドでは「十四字」と呼ばれ、愛好者がそれなりに存在するのは『俳諧武玉川』の影響が大きい。『武玉川』は江戸座の高点句付句集で長句だけでなく短句も収録されている。(中略)

 三、十四字の現在

 清水美江に師事した佐藤美文は川柳誌「風」を編集発行。五七五形式の川柳とは別に十四字の投句欄を設けた。二〇〇二年十二月、同誌の創刊五周年を記念して合同句集『風・十四字作品集』(新葉館出版)が発行された。(中略)

 私自身も十四字には早くから注目していて,『セㇾクション柳人・小池正博集』では、「十四字」の章を設けて百句を収録している。

  鳥の素顔を見てはいけない      小池正博

  君の胎児を恋人にする

  茹でられながら孵化の夢見る

  傘を返して恋のはじまり   (中略)

 最近では暮田真名の影響もあって、ネットなどでも十四字形式の川柳が目につくようになってきた。

  弟的な寿司なのかなあ        暮田真名

  かけがえのないみりんだったね


 ともあれ、その十四字作品集からと他の川柳作品のいくつかを以下に挙げておこう。


  某月某日某時某所            岡本遊風

  汚点はないが 欠点はある        松本 藍

  時にジャズめく恋猫の声         宇川草書

  夢の中だけ跳べる大空          八木幸彦

  来週末の雪になる母           八上桐子

  通電すると雨になります         楡原 級

  えいえんの比喩/なみなみの海      林 やは

  長すぎる第二芸術すべり台        石川 聡

  月経痛で前世を占う           中山奈々

  ふくろとじこの世のなかにいるおまえ   川合大祐

  こもれびになっても爪 あかいんだね   西脇祥貴

  そちら側のどこからでもキレます   まつりぺきん

  朝の月水のい会うのはこのあたり     畑 美樹

  ああ義賊こたえは消せるボールペン    兵頭全郎

  せせらぎは百合の花粉を落とせない   宮井いずみ

  認証しましたようこそガラパゴス     浪越靖政

  こぼされるお茶の立場で待っている    湊 圭伍 

  土産にと渡されている泡立て器      小沢 史

  山鳩は良妻賢母憑依派         猫田千恵子

  身体から想い静かに出て行った      悠とし子

  何もかも忘れてしまう立ち泳ぎ     清水かおり



          撮影・芽夢野うのき「春風ならん岸辺のその日」↑

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