野谷真治「ことだまじいぷひゆとひいらぎ」(『赤ちゃんしぐれ』)・・
野谷真治作品集『赤ちゃんしぐれ』(青ひげ書房・1985年2月刊)、昨日の本ブログ「第一回 令和俳人展」つながりで野谷真治。会場で販売されていた作品集『赤ちゃんしぐれ』について、その解説が来空だったので、なつかしく、思わず手にとった。来空氏は、独力で『河東碧梧桐全集』を編纂刊行し続けた短詩人である。かつて、愚生と同じ小金井市に住まわれていたので、何度か呼び出されて、武蔵小金井駅前の喫茶店でお会いしたことがある。その解説の中に、
野谷真治は日大藤沢高校在学中に短詩をはじめた。
人間の暗号が犬のクエスチョンマーク (中略)
一行詩、それはコトバで書くマンガ。(中略)
まちすじじれんまたいぷすりっぶ
写植や邦文タイプ(それは整然と、別の意味で混沌とあるコトバたち・・街筋)の中の
一文字を一個人とすると、二つくっつく時にまぐわい(目交・・媾ひ・・間交・・間具合)、三つの時を一子の誕生と。
コトバ、それは社会の仕組みそのものとして、私達の目前に!。私達はジレンマし、タイプ(記録)し、そうしてスリップもする。(中略)
野谷は、自己の感性に率直で忠実なのだ。そのことで、短詩成立の情念を内包する。発祥のプロセスは時代をつらぬいて等しい関係であろう。
野谷は、誤またず、スタートラインに立っている。ためらうことなく、ひたすら出航せよ!果てなき希望の海へ。 (来空)
とあった。集名に因む詩行は、
おやすみよたったみ竜馬と赤ちゃんしぐれ 真治
であろう。本集発行(「阿呆丸出帆NO.1」)から、ほぼ40年の歳月を閲している。ともあれ、本集よりいくつかを挙げておこう。
落日や案山子のままで空へゆく
あしがらこがしすだれたつなみ
いろとりどり来いもようしらかばすてっぷ
てのひらうらないてのひらかえす
きさまさかさまわからぬわかさま
秋れたぁ木でふらわあそんぐ
おらあふひとぶこあらけむらな
黒髪大地ななかまどしぶき
はたたびたなびくゆげさと待つり
野谷真治(のや・しんじ) 1961年生まれ。
撮影・芽夢野うのき「ここからは枯れた一本持って冬」↑
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