岩田奎「蟻地獄蟻がはこびしものも落ち」(『敵』)・・

 


 岩田奎第二句集『敵』(書肆侃侃房)、帯の惹句には、


デビュー句集『膚』で田中裕明賞と俳人協会新人賞をW受賞した俊英、待望の第二句集。

  叫ぶおやすみとか氷るおやすみ


 とあり、帯文の服部真里子は、


  挽肉のあらければ咲く辛夷かな

 辛夷が咲くのは、この挽肉が粗いからだったのだ。ひとつの死である挽肉が、粒の粗さのために口の中で弾ける逆説的な生命感。辛夷が咲くことはまさにそのような現象ではないか。私たちの世界の、思いもよらないきらきらした残酷さを、『敵』はこうして取り出してみせるのである。


 とあった。そして、著者「あとがき」には、


  題は敵にした。自分はつくづくやさしさがたりないと思う。この句集を編むことを通じてすこしばかりやさしくなれたような気もするが、もっとやさしくなっていきたい。くわえて、これからも敵にめぐまれ、敵にしたしんでありたい。日日共同制作者と呼ぶべき句敵(くがたき)の皆さまに感謝しつつ筆を擱く。


 とあった。ともあれ、以下に、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておきたい(ちなみにページ下段に句の読みがローマ字で表記されているが、それは省略した)。


  えいゑんの中をゑんそくしてゐたり      奎

  歌が止みシャワーの音の止みにけり

  星祭われら虚業のビル灯す

  発明をなさぬ掌水澄めり

  公にならぬ氷の上のこと

  山東京伝本名醒都鳥

  水鳥の心それぞれ敵をもち

  ぜんまいはさうせぬこともできるなり

  陸にてはくもりてありぬ箱眼鏡

  新社員配属血沼海ぞひに

  花石榴拳固くらはずくらはせず

  運動会すみたることは塗りつぶされ

  青写真この世の鳥は遊ぶなり

  戦闘機もミツビシがよく寒卵

  仏罰としてものの芽のひらくなり

  雪ぶかくなるまでこの時速でゆく

  金亀子言葉ひらめききらずあり

  欅枯れながらながるる水の熱


 岩田奎(いわた・けい) 1999年、京都生まれ。



     撮影・中西ひろ美「やんちゃだったあの子の夏の昔歌」↑

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