早舩煙雨「失笑恐怖ウマヅラハギに消しゴムのカスが降るよ」(「We」第21号)・・


 「 We」第21号は、第一回We俳句賞発表、大賞は早舩煙雨「点滅」(台湾 1985年生)である。因みに、関悦史選者賞に海音寺ジョー「アマテラス石」(京都府 1971年生)、竹本仰選者賞に加藤ヒロユキ「コスモス」(名古屋市 1998年)、加藤知子選者賞に田中目八「セノーテ」(大阪市 1978年)。選考の選評に関悦史は、


 応募総数は13篇と多くはなかった。全体に奇矯ながらそれが作者の内面に収まってしまい新鮮味には繋がっていない作品が多いなかで、ともかく奇襲性において最も優れていると見て私は「点滅」に4点を割り振り、1位とした。

 《あなたは 葡萄石 あなたを見たことがない》の二人称「あなた」や、《天井裏を覗く女そのまま花となれよ》の女への命令形などは、自意識に立てこもってそこから攻撃的な言辞を発するかのような表現の狭さとしても出て来うるものだが、句はそういう性質からは微妙に一線を画している。(中略)

 長短さまざまの自由律を含む20句は、必ずしも全てが成功しているとは限らないが、もたついたところはなく、言葉が奇矯で無味乾燥なオブジェになりはててしまう危険と、逆にセンチメンタリズムに陥る危険の間の細道を渡り切ろうとする気息が一貫していた。


 と記している。ともあれ、本誌より、いくつかの句を以下に挙げておこう。


  桜散る乾いた悲鳴に似ていた        中内亮玄

  中国語講座五巡目冬に入る       海音寺ジョー

  真鰯の群れ爆散す爆縮す        加藤ヒロユキ 

  汲めばはや烟る水こそアラベスク      田中目八

  茶の花や耕すように一と書く       柏原喜久恵

  冬の鷺墨とまなこを腐乱させ        加藤雅臣

  幼の目全き冬の蝶宿す           貴田雄介

  寝返りに寿衣破るるや花の主        斎藤秀雄

  異界とも交わす交信日向ぼこ        島松 岳

  北へ汽車父冬耕の野に訛る         竹本 仰

  夜学校おわる頃なり月の雨         林よしこ

  シロナガスクジラというも火の時間     阪野基道

  近すぎる他人のごとく冬の河       松永みよこ

  やわらかなバニラ掬って秋の昼      籾田ゆうこ

  今はまだこちら側ですちんちろりん     森さかえ

  子が吹いて押し広げたる鰯雲       内野多恵子

  ケセラセラ釣瓶落としの無人駅       江良 修

  永訣やいつもの朝にリコリスを      小田桐妙女

  曼殊沙華遠くの魚たち澄んで        男波弘志

  禁忌の実ねつをだしては捥いでいる   しまもと菜浮

  共生の言葉かくかく鹿鹿の声        加藤知子



      撮影・中西ひろ美「ぼんやりと東京であり春であり」↑

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