髙橋鏡太郎「冬薔薇の影さびさびと手鞠かな」(「鬣 TATEGAMI」第97号より)・・


 鬣 TATWGAMI」第97号(鬣の会)、特集は⓵林桂句集『遠近紀行』、②林桂『高柳重信の百句』、③樽見博『早く逝きし俳人たち』。⓵の論考に恩田侑布子「とをてくう、とをるもう、とをるもう。P(ぴあの)の抒情」、大橋弘典「喪失の先にー林桂『遠近紀行』」、深代響「林桂句集『遠近紀行』評ー『まだ見ぬかたの花を尋ねん』」 。②に川名大「作品およびテクストとしての犀利な読み解き」、外山一機「林桂を介して読む『高柳重信』」、中里夏彦「創造された『空白の一行』〉、③に坪内稔典「個々によく生きた俳人たち」、九里順子「受け渡す力」、堀込学「『早く逝きし俳人たち』について」。さらにエッセイの部分に樽見博「高橋鏡太郎『風流人』掲載句追加」がある。それは樽見博『早く逝きし俳辞たち』の読者からの指摘に、髙橋鏡太郎句の脱落についての句がかなりあり、その脱落をおぎなう句群の一句を、このブログタイトル「髙橋鏡太郎『冬薔薇の影さびさびと手鞠かな』」にした。その他の記事も充実の一冊。興味を持たれた方は、直接本誌に当られたい。

 ともあれ、以下に、本誌より、いくつかの句を挙げておきたい。


     ガザへ運ぶ泣きも呻きもせぬ塩を 江里昭彦

  掬えぬ塩地底まで腕伸ばせずに           後藤貴子

  鳥征く、鳥の死だけが落ちる            久坂夕爾

  引力を解かれたるもの天空へ            西平信義

      ローレル川田氏に

  掘れば骨掘らずとも骨死者の夏           井口時男

  妹の手の硬きこと檀の実              沼田恵子

  きの月西のそへと流れいく           丸山 巧

  貯水塔の遺跡と化して夏草や            佐藤清美

  己が抜け殻と知ってか蝉の声            青木澄江

  赤のまま歌へよ歌へ今も昔も            九里順子

  つかの間を瀧でありけり秋の水          水野真由美

  雨の夜にピザ屋は灯る ずっと雨          外山一機

  よるの9割がみずになる            西躰かずよし

  土塊(つちくれ)のまだあたゝかき夜涼かな     堀込 学

  

  橋上日没

  父か

  開かぬ

  傘を振る                      深代 響


  (ゆめ)

  (いらか)

  (とほ)つ沖(おき)こそ

  雲繁(くもしげ)し                 中里夏彦



     撮影・中西ひろ美「暮早し町にひとりの茶を飲みて」↑

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