安井浩司「御灯明ここに小川の始まれり」(『角川 季語別俳句集成 新年』より)・・
角川書店編『角川 季語別俳句集成 新年』(角川書店)、本書の巻尾に、「自由律俳句・無季俳句」が収載されている。 愚生の句も、3句入集している(じつは、自分にもほとんど記憶にない句もあったが・・・)ので、他の方々ともども、いくつかの句を以下に挙げておきたい。
歩行(かち)ならば杖つき坂を落馬かな 芭蕉
油さし油さしつつ寝ぬ夜かな 鬼貫
襟にふく風あたらしきこゝちかな 蕪村
亡き母や海見る度に見る度に 一茶
うしろすがたのしぐれてゆくか 山頭火
陰(ほと)もあらわに病む母見るも別れか 荻原井泉水
墓のうらに廻る 尾崎放哉
断水の 飢饉のやうな 夕方がきてゐる 吉岡禅寺洞
貝眠る重いなみだをあまた溜め 三橋鷹女
松葉杖傷兵銃のごとく擬す 横山白虹
広島や卵食ふ時口ひらく 西東三鬼
後ろにも髪抜け落つる山河かな 永田耕衣
見えぬ眼の方の眼鏡の玉も拭く 日野草城
草二本だけ生えてゐる 時間 富沢赤黄男
木の股の猫のむこうの空気かな 橋 閒石
しんしんと肺碧きまで海のたび 篠原鳳作
音たててうどん食うこの妻を見捨てず 細谷源二
なんといふこひしさ魚を焼いてゐる 安住 敦
嬰児抱き母の苦しさをさしあげる 高屋窓秋
千人針はづして母よ湯が熱き 片山桃史
銃後といふ不思議な街を丘で見た 渡辺白泉
撃たれても愛のかたちに翅ひらく 中村苑子
非常口に緑の男いつも逃げ 田川飛旅子
夫逝きぬちちはは遠く知り給はず 桂 信子
要するに爪がいちばんよくのびる 阿部青鞋
しろい昼しろい手紙がこつんと来ぬ 藤木清子
ぶつかる黒を押し分け押し来るあらゆる黒 堀 葦男
いつせいに柱の燃ゆる都かな 三橋敏雄
しづかに
しづかに
耳朶色の
怒りの花よ 高柳重信
傘さして未来の悲痛ここにあり 和田悟朗
いつか星ぞら屈葬の他は許されず 林田紀音夫
まぶしみて父とほざかる旗日かな 八田木枯
広場に裂けた木塩のまわりに塩軋み 赤尾兜子
死ぬ朝は野にあかがねの鐘鳴らむ 藤田湘子
灰色の象のかたちを見にゆかん 津沢マサ子
風呂敷の物にしたがふあはれなり 髙橋睦郎
生涯にさがしものして水明り 鳴戸奈菜
三叉路の木に福耳を吊しおく 山本敏倖
幾千代も散るは美し明日は三越 攝津幸彦
一億を一人超えたり二重橋 山﨑十生
みちくさを水の記憶に加へけり 大屋達治
百年(ももとせ)を生きて翁の面はづす 水野真由美
潮騒のどこかが余熱ピアス揺れ 田中亜美
少年ふたり微熱の街に触れ合いぬ 大井恒行
撮影・芽夢野うのき「風騒ぐ人形の首つぎから冬」↑

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