夏礼子「道草もまた道虹に呼ばれたる」(「詭激時代つうしん」15)・・


「詭激時代つうしん」15(詭激時代社)、各務麗至の個人誌で、栞版とある。本号は、夏礼子「五次元のはなし」20句と、各務麗至「人間にして」30句、「新しい生活」30句の掲載である。その「覚書」に、


 (前略)いつの間にか、私は「石橋を叩いて渡らな生き方を選びそうになりつつあるようだ。(夏礼子) 

(覚書にかえて……)

 母さんとよく行った、運動公園に、不動の滝に、行ってきました。ベンチに座ってコーヒー飲んで……、ニトロ服用して落ち着くのだから「いいですね」の先生の言葉もあって、強気で来れたのは母さん心配させずに済んで母さんのためにもそれも良かった。(中略)

 ―-息子たちに送ったラインである。句は希望があった頃の作品である。(各務麗至)


 とあった。ともあれ、アトランダムになるが、本号より、いくつかの句を挙げておこう。


  青空を崩していたり花の雲         夏 礼子

  五次元の話蛙の目借時

  園児来てよりコスモスの揺れはじむ

  極月のふと押し戻る時空かな

  あかのままぼろぼろだれもいなくなる


  寒濤や人間にしてさだまらず         各務麗至

  懐手遥か火薬のにほひかな

  冬の思想冬の裏山おそろしき

  春眠や目が覚めえるとは限らない

  戦争が押し寄せてくる夏の海

  赤青黄コスモスカオス原爆忌

  うしろ指さされてしまへ鳳仙花

  なつのいしたれかがたれかてふごとく

  鏡面のうしろの白き秋ゆふべ

  これも戦争恋にも見えて時雨です

  戦争にして戦争の年の暮

  抱かれて春や子の息うすみどり

  母と呼ばれ吾妻と呼ばれ水温む


     撮影・芽夢野うのき「白息の人と木の間を蛇のごと」↑

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