佐藤友美パロミタ「救いようのない/私という/救いを/発見した/今日」(『はらみつ録2018詩画集五行歌/光のほうへ』)・・

 

 佐藤友美・はらみつ録2018詩画集五行歌『ひかりのほうへ』。その冒頭に、


 画に再び取り組むようになってから四年目、五行歌を習慣とするようにんさってからは二年が経過しました。画の方はようやく、十代の頃の手に追いついて来たように感じています。(中略)

 今回も五行歌は推敲選歌ということはしていません。切り揃えられてすらいすされた刺身のように、ごろんと並べてあります。(中略)

 この間に起こった一大事はなんと言ってもパウルの師匠の来日公演ツアーの制作で、年末のインド修行を挟み、今年の6月にそれを終えてからは8年ぶりにオーストラリアへの里帰りも果たしドリーミングについて学んだり、改めて自分のルーツや、インドに導かれた意味を考えたりなど途中で参加し鶴岡真弓先生の講座には画を描く上で大きな転機となるインスピレーションをいただきました。


 とあった。以下に五行歌のいくつかを挙げておこう。


  疲れちゃった

  弱いことは罪ではない

  といっても

  辛いことだ

  人であることは    (以下は改行は/で表記)


 モラハラは/男の性か/つまり正しさを/信じられる人種/自覚もなく

 狂って/しまったら/その形の方が/生き物の本来の形かも

 うらむなら/天をうらんで/人をうらむな/それしきで天は/身放さない(はず)

 寂しがりやの/心よ/一体なぜ抱擁に/気づかないのか/傷ばかり負って

 他人の声を/通して天は/私にエールを/送れども/私の肌は硬いまま

 苦しみを丸め/天に放って/撃ってみたら/けして/返って来なかった

 この沈黙よりも/耳よい歌など無いのに/歌うのは/よりよい沈黙を/歌うため

 呼吸の中に/立ち上がる/経験だけは/存在の意義を/否定しない 

 足下の/鈴から響く/天上の音が/ひと足/ひと足


 佐藤友美パロミタは、自身の来歴について、『パロミタ随筆集』(私家版・2022年12月刊)で、


 四歳から七歳までをオーストラリアのシドニーで(このときは現地校)、七歳から

一〇歳までをシンガポールで(このときは日本人学校)過ごしてから、十代のほとんどを埼玉県で過ごしました。大学でまたオーストラリア国立大学というところで優等学位(Honours)までやって卒業しました。アジア研究学部で、サンスクリット語と日本語を学びました。


 とあった。 近年は翻訳者・パロミタ友美として、ウイリアム・ダルリンプル著『9つの人生/現代インドの聖なるものを求めて』(集英社新書・2022年1月)、アルンダティ・ロイ著『至上の幸福をつかさどる家』(春秋社・2025年5月刊)などがある。


 

 パロミタ友美(ぱろみた・ともみ) 1986年、埼玉県生まれ。



        撮影・中西ひろ美「秋暑し仲がよいのか悪いのか」↑

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