篠原隆子「空爆や片陰さへも奪ひ去り」(『一つ踏み』)・・


  篠原隆子第一句集『一つ踏み』(角川書店)、序句は大谷弘至、


  舞扇いざ忘れ世の花をこそ       弘至


 著者「あとがき」には、


  (前略)舞踊の振り付けを仕事にしてきたこともあり、音楽はいつもわたしの身体の中を流れています。

 「俳句は音楽でなくてはいけません」という、大谷主宰の言葉を聞いた時、「俳人」になりたいと思いました。

 「言葉には意味の他に風味がある」という長谷川先生の言葉は、長く日本語を離れていた身にしみ入りました。(中略)

  句集名の『一つ踏み』は、拙句

   清らなる地を一つ踏み舞始

 よりとりました。


 とあった。 ともあれ、愚生好みに偏するが、本集より、いくつかの句を挙げておこう。


  わが汗のおちて大地の白さかな       隆子

  竹伐るや畚(ふご)も柩も竹の国  

  福引や踊り出たる当たり玉

  よき椿えらんで杖に翁の忌

  どの紙も狭くてこまる筆始

  ものの芽やくれなゐなせる毒と効

  猿曳が天をあふげば猿もまた

  大空へ帰りたき羽子つきにけり

  蛍来よわが身の水の涸れぬうち

  草の香の無月をねむれ月の子よ

    サダーム・フセイン

  宰相の像をちこちに陽炎へり

  水売って日銭をかせぐ髪に花

    イラク人は私が日本人と知ると、

         必ず雪とはどういうものかと尋ねる

  夜咄のまほらの雪ぞなつかしき

  灼けにけり大地も人も銃身も

  夕涼や生くるものみな外へ出て


 篠原隆子(しのはら・たかこ) 東京清瀬市生まれ。



★閑話休題・・テンジン・クンサンwith駒沢裕城/ナマステ楽団「天国的人生興奮」(於:新宿CON TON TON VIVO)・・



 9月14日(日)午後は、旅音楽一座ナマステ楽団(ギターの末森英機・タブラのディネーシュ)、チベット仏教音楽家のテンジン・クンサン、孤高のペダルティールギターリストの駒沢裕城(元はちみつぱい)のライブ「天国的人生興奮」(於:新宿CON TON TON VIVO)に出掛けた。


  撮影・芽夢野うのき「川べりを下りつつ彼岸まで陽気に陽気に」↑

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