永田耕衣「風折れの黄カンナや我関わらむー小庭眼前ー」(「風琴」第4号より)・・
「風琴」第4号(風琴の会)、ブログタイトルにした耕衣「風折れの黄カンナや我関わらむー小庭眼前ー」の句は、皆川燈による「耕衣から径子へのハガキ②」からのもの。その「3 昭和五四年八月三日」のハガキには、
おカゼまだご不調如く江川さんからのハガキで拝察いたしましたが如何ですか。夏風邪はめんどうですが、ソレを夏風に替えて下さい。(以下略)
とあった。江川さんからというのは、「琴座」同人だった江川一枝さんのことだと思うが、今は、愚生の近くにお住まいで、二年程前にご主人の大前博さんを亡くされ、ご本人も体調を崩され、3週間ほどまえに入院をされたと聞いた(ご快癒を祈念!!)。
他の記事で、いつも愚生が気にかけているのは、五十嵐進の連載「フクシマから見えるもの④汚染地に住み続けさせる」である。その中に、
(前略)「被曝を軽減してきた古典的放射線防護」というのは「チェルノブイリ法」のことである。放射線源から、まず遠く離れること、これが被曝を免れる基本のキである。
「汚染された地域に住み続け」ないで遠く逃げることである。
「チェルノブイリ法」は放射線汚染度合いを4段階に分けて避難(逃げる!)を喚起しているのはよく知られている(だろうか)。幼児や妊婦は0,5ミリSv/年で逃げろと言っているのである。/年ではわかりにくい。時間であいえば0,5マイクロSv/hである。(中略)
チェルノブイリ法からすると、日本の多くの地で幼児、妊婦は現在でも避難すべきレベルなのである。チェルノブイリ法ではさらに土壌汚染の内部被ばくも留意されている。日本より厳格な向かい方をしている。だが、IAEAはその厳格さが邪魔なのである。被曝した国民の人権を第一に考えたこの法律が邪魔なのだ。避難させれば、住まい、仕事、学校、医療、生活費さらに放射能の体内での低減化を目指す「保養」も加わる。とにかく莫大な金がかかる。(中略)1996年のこのIAEAの認識と覚悟のもとにICRP(国際放射線防護委員会)は勧告を出す。
「2007年勧告」である。東電福島第一原子力発電所爆発は2011年3月。「勧告」の4年後の事件であった。この勧告を適用する最初の、格好の出来事であった。
チェルノブイリ法は作らせない、と。
とあった。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。
花散るや無縁不縁の人あまた 柴田獨鬼
蝉の声聞こえてこない森を出づ 関根順子
死と生をゆらり黒蝶越境す
蜜を満たした壺をかかえて 月 犬
ルルと鳴る無言の電話妣からの 西谷裕子
初夢は喧嘩大好きべらぼうめ 三池 泉
用水の痕跡に咲く花あればグーグルに問ふあふひと答ふ
廃屋の少年院へ大夕立 皆川 燈
深山霧島手は幾度かからくれなゐ 矢田 鏃
春の風塵のわたしを塵にかえす 結城 万
足音が上がってくるいつも 五十嵐進
耕衣を思い鯰フフっと笑う M・M
★閑話休題・・宮澤順子「呼吸する水の素肌を秋の風」(『四季吟詠句集 38』より)・・
『四季吟詠句集 38』(東京四季出版)、「俳句四季」の〈四季吟詠欄〉で特選を得た作家による21名の合同句集句集である。各自作品57句とミニエッセイを収載している。その中の宮澤順子の句を、愚生好みに偏するが、いくつか挙げておきたい。
薄氷や無傷な水でいられない 順子
春愁やまた開くまでたたむ傘
向き合うか逃げるか団栗を握る
求めるは求めないこと息白し
ダイヤモンドダストあなたで溢れる
悔いが残っている枯葉はんさいのか
宮澤順子(みやざわ・じゅんこ) 1970年、東京都生まれ。
撮影・鈴木純一「白百合は汚れちまって胸を張り」↑

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