救仁郷由美子「唐門前(せん)修羅の脇行くごんぎつね」(LOTUS第52号より)・・

 

  LOTUS(ロータス)第52号(LOTUSの会)の特集は「救仁郷由美子 追悼」である。救仁郷が「LOTUS」に発表した句、と安井浩司論2篇、追悼文は、大井恒行「救仁郷由美子のこと」、山田千里「救仁郷由美子は生きている」、表健太郎「温かい石」、鈴木純一「三度別れる」、酒巻英一郎「影向の縄梯子」。他に各同人による追悼句と俳句作品の一句鑑賞。そして、救仁郷由美子遺稿句集(未発表)。本号扉には、


 LOTUS会友救仁郷由美子(本名 大井由美子)は闘病中のところ薬石功なく令和四年八月十日逝去いたしました。/享年七二歳/生前 俳句有縁の方々から賜りましたご厚情に厚くお礼申し上げます。/深くご冥福を祈りたいと思います。

                            合掌/LOTUS発行人


  とあった。LOTUSの皆さまの深い友情に感謝したい。ありがとうございます。ここでは、同誌同号より、同人諸兄姉の俳句作品を挙げておきたい。


                   遺品・安井浩司の形見分け、文鎮代わりの愛用の石↑

               表健太郎より手交さる。


  天女ふと胞衣はみだしぬ朴の花       丑丸敬史


      詩語思索符三点を、なほ先へ、

  

     残……                奥山人


  又の日の天与と云わむ玉霰         小野初江

  寒月下打ち抜くための釘選び        表健太郎

  おみなごをはしらと数えしか鳥よ      九堂夜想

  風の景色それら風のように在ると      熊谷陽一

  狐の火ときどき水の舌見せる        三枝桂子

  

  眞愛しむ

  童女御覧の

  裳裾かな                酒巻英一郎


  いくつもの南がありて木の実落つ      志賀 康

  点取りに昼夜を尽くし秋の風        曾根 毅

  桜騒闇より黒い錠をして         高橋比呂子

  キリストのみ衣に触れさえすれば、私は 

  癒される。浄められる。そして私から、

  この世から外に出ることができる

  雨運河底まで指が届かない         古田嘉彦

  遠望の果無に咲くおみなえし        松本光雄

  湯めぐりは赤きカンナに触れたから     無時空映



★閑話休題・・大井恒行「野の中の保夫やすかれ大花野」(全労協前事務局長・野中保夫さんを偲ぶ会)・・

             かつての書泉労組の仲間たち↑



 昨日、18月28日(土)13時から、「全労協前事務局長・野中保夫を偲ぶ会」(於:文京区民センター)だった。愚生は、労働運動からすっかり足を洗ってから、ほぼ15年ぶりに、旧知の方々とお会いした。野中保夫は、高校卒業後、神保町の書泉グランデに入社し、働き、労働組合を結成し、その仲間たちは、当時、出版社では光文社、教育社の労組つぶしに会社側により、右翼暴力団が導入され、、書店では、渋谷の大盛堂書店に入り、その労組を一夜にして潰し、その余勢もあって、書泉にも導入された。暴力と、さらに家族、実家などへの嫌がらせが繰り返され、経営者はロックアウトして、組合を職場から追放した。しかし、彼ら組合員は切り崩されたが16名が、残り、17年を闘い続け、職場にもどるという勝利的解決を勝ち取った。愚生の弘栄堂書店労組は1972年11月に結成されており、栄松堂書店、信山社ブックセンター、丸善、教文館、紀伊国屋、名古屋の精文館などで全国書店労働者組合協議会を結成し、書泉労組支援のために、愚生の弘栄堂書店組合も、組合員全員約100名を支援ストライキに入れて、出版労働者を中核にした部隊を作り、書泉グランデ前で待ち構える右翼暴力団に体当たりと素手で立ち向かい、不退転の気持ちが上回ってか、初めて右翼暴力団の壁を撃破した。その日から、彼らの暴力も止んだのだった。それらの運動を中心的にになってきた一人が野中保夫だった。その野中が先般6月3日に、急激な病に斃れた。享年、67。これから、まだまだ、中小零細、未組織労働者のために闘うべき人であった。今も冥界で、人間に熱あれ!人間に光あれ!と熱く語りながら、やさしさを湛えているにちがいない。ご冥福を祈るのみ・・・。



    撮影・中西ひろ美「サンザシと名を付けられし実りかな」↑

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