岩田奎「ラブブくる夜寒の船に一杯に」(「オルガン」42号)・・


  「オルガン」42号(編集・宮本佳世乃/発行・鴇田智哉)、巻尾のエッセイ、宮本佳世乃「正六角形」に、


 ニ〇一五年に「オルガン」を創刊してから、十年が経った。今回新しいメンバーとして岩田奎さんを迎え、六人となった。これから一緒に活動できることが、純粋に楽しみである。(中略) 

 一身上の都合で、今年の九月に結社を退会した。句会の数は減ったが、。これからも自分らしい句を作っていきたい。


 とあり、宮﨑莉々香「わたしは俳句が上手にできない」には、


 わたしは俳句が上手にできない、下手な方だと自分で思う。

 中学二年生の秋に、文章を組み立てる能力が上がるかもしれないし俳句をやってみたら、と国語の先生に言われて俳句をはじめた。(中略)

 二十三歳の頃に俳句を読むのも書くのも出来なくなった。十四歳の頃から俳句が好きでその時わたしが俳句だと思いたいものを俳句として書いていたけれど、わたしが俳句と思いたい俳句の眼鏡で世界を見ているのではないか、という疑問が出てきた。世界を本当の意味で見ることが出来ていないのではないか、という疑問。俳句と思いたい眼鏡は俳句という共同体の眼鏡でもあったように思う。(中略)絶望した。あの時から、わたしが俳句だと思いたいもlのは、俳句ではなくなってしまった。オルガンも円錐も退会し、東京に持ってきたダンボール箱数個分の俳句の本は全て大塚凱に渡した。大塚くんは莉々香が帰ってくるまで預かっておくよと言っていたが、そんな日は来るのかなと思った。(中略)

 今でも俳句なのか、俳句の集団なのか、絶望しながら俳句を続けている。けれどあの頃と違うのは、絶望しながら俳句を書いている、読んでいる、続けているという点かもしれない。大塚くんからは俳句の本が大量に返送されてきて、空き部屋の押し入れはぎゅうぎゅうになった。澤さんは亡くなってしまったけれどい、わたしの中には声が残っている気がする。

 日常に疲れた時に自然を見て心が洗われる瞬間を俳句にするのではなく、ありのままの生活を、ありのままに見た世界を書き残したい。だけど、意味としての俳句や日記としてでなく、書き言葉としてだ。声・パロールの世界を出来事の俳句としての言葉(喃語俳句)で書き残したいと思う。それらをわたしは俳句と思いたい。(中略)そうとしか言いようがない言葉で書き続け、読み続けていたいのだ。だからこそ、わたしの俳句は下手なのだ。


 とあった。ともあれ、以下に、本号より、いくつかの句を挙げておこう。


  手放してみれば旅立つ草の絮        宮本佳世乃

  船を出てあるいて無花果の家に        岩田 奎

  映画観て狐を雇う無の予防          田島健一

  たれかれへ票は投げられ鳥わたる       鴇田智哉

  遅々と飛ぶばったが枯れたふうに鳴る     福田若之

  秋のドラ猫になりたくなくなくない     宮﨑莉々香



           俳句・西原天気氏と川柳・飯島章友 ↑


★閑話休題・・遺句・樋口由紀子「ただ一本動かしたのは燐寸棒」(第3回「ブレンド句会」投稿句より)・・


 2月14日(土)、町田市民ホールに於て開催された第3回「ブレンド句会」。愚生は、もしかしたら、樋口由紀子と会えるのではないかと出掛けた。彼女の出席はなく、広瀬ちえみから、11日に死去したことを知らされた。冥福を祈るのみ、合掌!享年73。「豈」同人でもあったので、無念。現代川柳の活性化の始まりともなった『現代川柳の精鋭たち』(北宋社)は、企画を持ち掛けたのは愚生だったが、彼女の尽力なくしては成立しなかった。

 ブレンド句会の今回の目玉は、西原天気と飯島章友の対談だ。宿題句の選者は、「雑詠」は野沢省吾・浅賀丁那、「鳥」は宮本佳世乃・いなだ豆乃助、「まあまあ」は妹尾凛・鈴木牛後。

 愚生は、いまだ完全復調ではないので、投句もせず、ただの観客(それでも満足・・)。耳も遠くなっているので、全てを聞き取れていないながら、樋口由紀子の投句の確認できた遺稿を以下に挙げて、かつ愚生の悼句を献上したい。


  ももいろの目をした鳥が逃げました      樋口由紀子

  ショートケーキのイチゴ取られたような 今    〃

  まあまあと通天閣はよく似合う          〃

  まあまあの手前で足が攣りました         〃


     悼 樋口由紀子

  ゆうるりと逝かず急ぎし紀元節        大井恒行



    撮影・中西ひろ美「また会おうきっと会おうと涅槃西風」↑

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