原田もと子「部屋中が椿の射程距離の中」(『書きかけの葉書』)・・


  原田もと子第一句集『書きかけの葉書』(大風呂敷出版局)、栞文は、池田澄子「爽やかな印象」、山田耕司「慎ましさと強さと」。その山田耕司は、


  妹を泣かせて終はる水遊び

 あれほど楽しかったのに。いや、楽しかったかsらこそ。

 はしゃぎすぎて、妹を泣かせてしまった。 

 親しいからこそそばにいて、親しいからこそ傷つけてしまう。そんな関係のあり方や揺れうごく自らの心の一瞬を、そのまま言葉にするのではなく、ことの流れを記すだけで読者に感じさせていて、まさしく、俳句。


 と記している。また、著者「あとがき」には、


 本句集はニ〇一ニ年より二〇二四年までに同人誌「円錐」に掲載された句のなかより選びました。俳句を作ることに消極的になっていた頃にも励まし続け、常に応援して下さった亡き澤好摩氏に感謝いたします。


とあった。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句をあげておきたい。


  立葵泣く妹へ引き返す        もと子

  門川に沿ふ家々の魂迎

  白木造りの村営松茸直売所

  ちちははへ両手を預け落葉道

  蝌蚪二百五百一億日はひとつ

  コスモスへ吹くコスモスを好む風

  狼をフォークダンスの輪に探す

  子の上げる手を遠ざかるしやぼん玉

  亡き祖母が障子を貼りに来る天気

  梅雨冷の消したテレビに映る部屋

  浮く川の全長知らずあめんぼう

  全山に蟻の動いてゐるしじま

  年の瀬や平に運ぶ紙づつみ

    澤好摩さんを偲んで

  居るやうに亡きひとと語る暮の街

  裸木となりぬ言ひたきことのある

  落し物花かと思ふ深雪道 


 原田もと子(はらが・もとこ) 1958年、長野県生まれ。



 
撮影・芽夢野うのき「タンポポノヒカリハサッキマデクラヤミ」↑

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