樋口由紀子「鏡台はすっぱいことがわからない」(「What’s」Vol。9)・・

 

 「What’s」Vol,9(編集発行人 広瀬ちえみ)、招待作家に樋口由紀子。そのミニエッセイに、


 背中が痛かった。/そして病人になった。/跳んだり跳ねたりできなくなった。

 姫路城の天守閣はもう登らない。/なぜビールが美味しかったのか。

 ベリーダンスを目の前で観た。/妹が急に優しくなった。 

 世界は変わったが、これが私の人生。


 とあった。その他の記事に、柳本々々「柳本々々の詩 みっつ」、鈴木茂雄「『俳句を読む』ということ』について」、暮田真名「第2回ブレンド句会の思い出」、竹井紫乙「エッセイ 金魚のひれのように」、中内火星と広瀬ちえみの「火星のちょこっとした季語論につき合って」など。ともあれ、本誌本号より、いくつかの句を挙げておこう。


  108の影放たれて見えない帰路      兵頭全郎

  いいよね番号札を生きてたって       竹井紫乙

  浮子立ちてしづむ一瞬天高し        川村研治

  暁の隅に小さく突破口          佐藤真紀子

  上昇も落下も同じ星の上          水本石華

  こころって指先に出てしまうかも      浮 千種

  ひねもすはいつまでざっくばらんなの    妹尾 凛

  生まれたときから世も末だった       中内火星

  ボタン押すかすかに笑みを残す顔      松永千秋

  おにぎりを食べてもパン屋だとわかる    月波与生

  からっぽになってでてゆく原稿用紙     加藤久子

  ジェネリック季語を駆使して宙返り      叶 裕

  どこも痛くないから死んでいるのだな    鈴木節子

  日に焼けたことなんてない人魚姫    いなだ豆乃助

  トンネルの出口まるいかあかるいか    佐藤みさ子

  「路面湿潤走行注意」走る         髙橋かづき

  何をするナイフだったか神無月      広瀬ちえみ



            鈴木純一「麒麟出よ二条大麦九条葱」↑

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