大井恒行「雪遣い雪野の兎さまよえる」(「俳句」12月号)・・



  「俳句」12月号(発行角川文化振興財団/発売KADOKAWA)、特集は「遠景と近景」。執筆陣は能村研三「総論『景』の多角性/誠実な写生精神」、各論に西山睦「遠景を詠む醍醐味」、久保純夫「限定されない、できない景として」、髙田正子「遠景の次元」、今井肖子「近景からはじまる」、福永法弘「近景ー二人の作家に寄せて」、網野月を「視覚的近景は最も遠い」、今井聖「飯田龍太の『距離』」、四ッ谷龍「『遠景近景』から『レイヤー』へ」。連載に、青木亮人「小林秀雄の眼と俳句 第21回」、角谷昌子「俳句の水脈・血脈ーー平成・令和に逝った星々/第54回・斎藤夏風」、井上泰至「現代俳句時評 最終回/虚子生誕百五十年と昭和百年」、坂口昌弘「蛇笏賞の歴史ーその作品と受賞理由を読む・第36回 最終回/脱俗仙境に遊ぶ隠者―-相生垣瓜人」など。


 ともあれ、以下に、本誌よりいくつかの句を挙げておこう。

  身のどこか荒ぶカンナの緋なりけり        正木ゆう子
  花火の彩・炸裂いま我生きてをり          鈴木貞雄
  断層の炎が走る冬の山               対馬康子
  ラフランス「みだぐなす」とは醜女(ぶす)のこと  細谷喨々
  雪晴や挑まねば老い容赦なし           柴田左知子
  枯れ芒靡くではなくなびかせる           秋尾 敏 
  百才は蝶を百回見たさうな             柿本多映
  冬麗の野や止めどなき牛の尿            遠山陽子
  冬銀河一詩に一志ありぬべし            中里麦外
  冬木立かはたれは耳敏くなる            坂本宮尾
  どうしても舌でてしまふ七五三           千野千佳
  口切や心新たに備へ居る              小川晴子
  ブーゲンビリアの子になる神のしっぽかな      大井恒行
  母の日やウクライナに母ガザに母         笹本千賀子
  ポケットが手を恋しがる冬隣            森岡正作
  悠々も自適も無縁鰯雲               白濱一羊
  てにをはのてにてをとって冬に入る         中内亮玄
  星月夜玻璃の器のやうな宙(そら)         窪田英治 
  古時計不意に鳴りたり返り花            山本 潔


  撮影・芽夢野うのき「髪が黒かったねそんな時代の冬銀河」↑

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