山本ゆうこ「「日向ぼこ手足痩せたる父の黙」(『夏ショール』)・・


  山本ゆうこ句集『夏ショール』(俳句座☆シーズンズ叢書⑥ 本阿弥書店)、祝句は黛まどか、

 

  月光の肩をすべりし夏ショール     黛まどか


著者「あとがき」には、


 1999年11月14日。「月刊ヘップバーン」の大阪句会に私が初めて出席した日だ。黛まどか先生の『B面の夏』に出会い、同世代の女性の恋する喜びや切なさがわずか十七音で表現されていることに全身が震えるような感覚を覚え、俳句の心得など全くないにも関わらず、ただ恋を詠んでみたい一心で「月刊ヘップバーン」の門を叩いた。(中略)

 句集名『夏ショール』は、母が編んでくれたレースのショールから採った。母は昔から洋裁と編み物が得意で、幼少期の姉と私の洋服の多くは母のお手製だった。私の句集を誰よりも心待ちにしてくれているのは母である。

 ここには30代から現在に至るまでの等身大の私が存在する。


 とあった。集名に因む句は、


  高原の風のあとさき夏ショール      ゆうこ


 であろう。巻末には、「シーズンズ新季語」が1ページに収められている。ともあれ、本集より、愚生好みに偏するが、いくつかの句を挙げておこう。


  先付の酢の香立ちたる傘雨の忌

  湯浴みせる母の鼻歌あやめ草

  青葉木菟手より零るる鎮痛剤

  月の道小島つないでゐたりけり

  小春日や風なすままに恋の絵馬

  暫くは冬日とどめし木馬かな

  神籤筒振ればしぐるる東山

  十二月八日つねより長き文

  風が風呼びて明けゆく阪神忌

  真砂女忌の掛けて染みなき割烹着

  幾度も海は色変へ啄木忌

  投げ銭をはづんで春を惜しみけり


 山本ゆうこ(やまもと・ゆうこ)1965年、兵庫県西宮市生まれ。



     撮影・芽夢野うのき「あかるくほそくつめたき岸辺冬の蝶」↑

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