有澤榠■(ありさわかりん))「蛤になつちやふ雀(あたし)ばかだから」(『オクトパス・ガーデン』)・・


   有澤榠■(ありさわ・かりん:愚生注    小生のパソコン技術では「りん」の文字が出ず、失礼。ママで・・)第二句集『オクトパス・ガーデン』(邑書林)、カバー写真は叶裕。著者「あととがき」には、


 第一句集『平仲』につづく第二句集である。二〇一一年三月から二〇二五年七月までの作品を収めた。

 ビートルズのオクトパス・ガーデンという曲があるが、それに拠ったばかりでもない。直訳すれば蛸の庭。そこから連想するいろいろに近しさを感じて句集名とした。

 俳句は、私にとって過激な行為である。瀬踏みし手探りし、きやきやが已まないが、あともう少し蛸の庭で遊んでいたいと思うのである。


 とあった。ともあれ、愚生好みに偏するが、以下にいくつかの句を挙げておこう。


  天上の端より糠蚊夕告ぐる         

  大綿へいまのからだの間に合はぬ

  落葉踏む其処からやはらかき冥途

  浄身の金蝿雨の林より

  冬天や雀は神の意中の子

  ドミノ倒しの時間の中を蝶わたる

  山姥となれば立膝から螢

  みぎひだり断念の足袋穿かせやる

  綿虫にきかばやよみの空模様

  緑蔭を出づる何たる具象の街

  ざらにある存在理由茄子の花

  畳踏み非在の火鉢まで進む

  金魚綺語心(うち)に放てばひるがへる

  蛇穴に入ることごとくさみしき喩

  或る時空では飛びまはる鏡餅

  いつしんにとぶ野分雲孤悲ならず

  新緑や疾うからぬれて豆腐の身

  

 有澤榠■(ありさわ・かりん) 1951年、高知市生まれ。



    撮影・中西ひろ美「実になってまたねまたねと駆け足で」↑

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